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195.予定調和的な展開(転移陣拡張クエスト:3人用)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(195)

【アマレパークス編・白の森シルワ】    



195.予定調和的な展開(転移陣拡張クエスト:3人用)



「ウィン、君なしではいられない。」

「僕もです。」

「ウィン、君なしではいられない。」

「僕もです。」

「ウィン、君なしではいられない。」

「僕もです。」



花畑からフィオーレさんの家に向かう道中、ルルさんは転移陣(拡張)クエストを続行した。

毎回返事を催促してきたので、最初は無視してたんだけど、あんまりしつこいので途中から付き合うことにした。

返事をするしないで押し問答する方が面倒だったので。


そしてフィオーレさんの家に到着する直前でクエストが達成された。



○転移陣クエスト(拡張)

 クエスト : 君と共に

 報酬   : 転移陣(2人用)

 達成目標 : 「君なしではいられない」と告げる(100回)

 カウント : 100/100 

 受注者  : ルル

 注意点  : 対象は異性/相手に聞こえないと無効



クエスト表示は僕以外には見えないので、ルルさんに達成したことを伝える。


「ルルさん、クエスト達成しましたよ。これでルルさんの転移陣も2人用になりました。」

「本当か、ウィン。これで私も誰かと一緒に転移できるんだな。」

「はい、試してみます?」

「転移。」


ルルさんは、いきなり僕の腕をつかんで何の説明もせずに転移した。

僕の左腕にいたスラちゃんは、ルルさんの行動を読んでいたのか、転移の直前に僕から離れた。

ルルさん、僕には行動する前に説明しろとか言うくせに、自分は思いついたら即行動なんだよね。

まあ慣れてるけど。


どこに転移するのかなと思っていると、視界がシルワの街から見慣れた室内に変化した。


あれっ?

これって『小屋』の中だよな。

『小屋』の中に直接転移できるんだ。

異空間だから転移できないと思い込んでた。

新しい発見。


でも君たち・・・ちょっとだらけ過ぎじゃないかな。


リビングの中を見渡すと、スラちゃん以外の従魔たちがお昼寝していた。

ご主人様が帰って来たのに、誰1人反応しない。

床の上とか、ソファの上とか、テーブルの上とかにコロコロ転がってる。

まあ、特に緊急事態とかじゃないし、休息も必要だから構わないんだけどね。


「よし、戻るぞ。」


僕が少し呆れた視線で従魔たちを眺めていると、ルルさんが再び僕の腕をつかんでそう言った。

すぐに視界が変化し、シルワの街の中に転移する。

転移陣が2人用になっても、ルルさんの発動速度は相変わらず速い。


「ウィンさん、ルルだけずるいです。」


フィオーレさんたちの元に戻ると、いきなりリベルさんが不満を表明してきた。


「ずるいって、何が?」


リベルさんに対する僕の口調がタメ語っぽくなってるけど、まあ、いいかな。

リベルさん、格下げ対象だし。


「どうしてルルだけウィンさんの魔法を使えるんですか?」


ああ、そういうことね。


「ルルさんは、パーティーメンバーだからね。」

「じゃあボクもパーティーに入れて下さい。」

「従魔ブートキャンプとフェイスさんの教育的指導が終わったら考えようかな。」

「ええっ、そんなぁ〜。」


リベルさんが崩れ落ちて、両手両膝を地面につける。

その姿勢、もうリベルさんのデフォルトになってる気がする。

ていうか、ブートキャンプも教育的指導も乗り越える気ゼロなんだね。

もう少しやる気を見せないと、どんどん格下げされちゃうよ。

そんなことを思っていると、


「リベル、甘ったれるな。そんなに簡単にウィンのパーティーに入れる訳がないだろう。」


ルルさんがうなだれているリベルさんに追い打ちをかけた。

でもルルさん、胸を張って偉そうに宣ってますが、強引に、勝手に、僕の許可もなくパーティー登録したのはあなたですよね。

メンバーになるためのハードルの高さを主張する資格はないと思いますが。


「ウィン、ほら、私は特別だ。ウィンにとって運命の人だからな。」


僕がジト目を向けていると、ルルさんはそう言い訳してきた。

自分で自分のことを「運命の人」呼ばわりする人、初めて見ました。

ルルさん、自分で言ってて恥ずかしくならないんですか。


「ウィン、そんなに見つめるな。照れるだろう。」


見つめてるんじゃなくて、呆れてるんです。

ほら、他の人たち(フェイスさん、フィオーレさん、魔道具士)も同じような目で見てますよ。

もう少し『聖女』らしく振る舞った方がいいんじゃないですか。

イメージ戦略、大事ですからね。


まあ本音ベースで言うと、ルルさんのことは感謝もしてるし信頼もしてる。

リベルさんも、仲間認定してもいいと思ってる。

受注者枠もまだ3つ空いてるしね。

あとはタイミングの問題かな。


そこまで考えて、ひとつ気になっていたことを思い出した。

忘れないうちに確認しておかないと。

僕は、まだ何か言い合ってるルルさんとリベルさんを意識の外に置いて、腕を組んで目を閉じた。

例のあのスタイルだ。


(「中の侍」さん、質問があります。転移陣3人用のクエストってないんですか?)


僕が心の中で問いかけると、しばらく間があって、視界にメッセージが表示された。



…うぃん殿、ご要望にお応えして、新しいくえすとを表示するでござる…


○転移陣クエスト(拡張)

 クエスト : 僕には選べない

 報酬   : 転移陣(3人用)

 達成目標 : 「どちらかなんて選べない」と告げる(100回)

 カウント : 0/100

 注意点  : 対象は2名同時・相手に聞こえないと無効



僕は、表示されたクエストをしっかりと見た後、大きく溜息をついた。

これ、完全に「中の女性」の趣味だよね。

「中の侍」さん、さっきの間は、間違いなく「中の女性」と相談してたでしょ。



…うぃん殿、けしてそのようなことは・・・(キャハ)…



「中の侍」さん、最後の(キャハ)は、あなたじゃないですよね。

「中の女性」に何か弱みでも握られてるんですか。

まあ、中の人たちの事情はどうでもいいけど、この達成目標、面倒過ぎるんですけど。

攻略方法、考えないとな。


目を閉じたままそんなことを考えていると、意識の外から女性の声が響いた。


「ウィンさん、どうしてママと一緒なの?」


目を開くと、たくさんの花で飾られたちょっとファンシーな家の前にアマレの港で会った女性が立っていた。


やっぱりそうか。

ある意味、予想通りだな。

僕は驚くこともなく、その予定調和的な展開を受け入れた。




読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は11月27日(月)です。

よろしくお願いします。

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