192.ルルさんの乙女ポイント(花柄? 小熊?)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(192)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
192.ルルさんの乙女ポイント(花柄? 小熊?)
「だから気をつけるように言ったじゃないですか。」
僕はルルさんにヒールをかけながら、そう注意した。
そんな僕に不満げな表情でルルさんが反論する。
「だってウィン、花柄のクマさんだぞ。誰でも抱き上げたくなるだろう。」
僕はなりません。
花柄でも、小熊でも、星2つの魔物ですから。
それに『切裂』スキル持ってますし。
さっき、ディーくんと戦ってるところ見てたでしょう?
「ウィン、そんな目で見るな。クマさんの弟子だって言うから大丈夫だと思ったんだ。」
僕が、「この人、ホントにどうしようもないな」って目で見ていることに気付いたのか、ルルさんは今度は言い訳してきた。
「ルルさん、ハナちゃんはディーくんの弟子だけど、従魔じゃないですよって念押ししましたよね。それに、誰だっていきなりよく知らない人に抱き上げられたら、びっくりして攻撃しちゃうと思いますよ。」
そうなのだ。
ルルさんは、戦闘が終わって座り込んでいるハナちゃんの所に行き、両脇に手を入れて高く持ち上げたのだ。
そして抱きしめようとしたところで、危機感を抱いたハナちゃんが『切裂』スキルを発動し、ルルさんにその長い爪で切りつけたのだ。
さすがのルルさんも距離が近過ぎて、ハナちゃんの爪を避け切ることができず、左腕を負傷して僕のヒールで治癒しているという次第だ。
ルルさんの自己責任なので、自分でヒールをかけさせても良かったんだけどね。
「ウィン、花柄クマさんはどうなるんだ?」
「どうって、たぶん『庭」でディーくんが鍛えるんじゃないですか。」
「そうなのか、私も闘ってもいいのか?」
「さあ、それはディーくんに訊いて下さい。」
「それから抱き上げてナデナデしてもいいのか?」
「それは、ハナちゃんに訊いて下さい。」
ハナちゃんが言葉を理解できるかどうかは知りませんけどね。
まったく、ルルさんの乙女ポイントってどこにあるのかな。
花柄なのか?
小さいクマなのか?
でも花コウモリには反応しなかったし、ディーくんに対してもそれ程じゃないし。
もしかして「花柄+小さいクマ」なのか?
まあどうでもいいや。
「聖女様、ウィンさん、どうもありがとうございました。」
ルルさんの左腕の治療が終わったところでフィオーレさんがお礼を言ってきた。
ディーくんと花小熊の戦闘が終わったと思ったら、ルルさんが花小熊を抱き上げて、花小熊がルルさんに攻撃して、僕がルルさんの治療をしてと、よく分からない展開が続いたので、フィオーレさんとしてもお礼を言うタイミングを測っていたのだろう。
「いえいえ、戦ったのはディーくんなので。」
「ディーくん? あのぬいぐるみのようなクマのことですか?」
「そうです。僕の従魔です。」
「ウィンさん、テイマーなんですね。」
「はい、テイマーでもあります。」
「テイマーでも?」
「あっ、他にもありますが、話が長くなるのでそれはまたの機会に。」
普通に「テイマーです」と肯定だけしておけば良かった。
いちいち全部説明するのは面倒なんだよね。
「それじゃあ、魔道具の修理が終わったら是非うちにお越し下さい。せめてものお礼に食事を用意させて下さい。」
「いえ、お気遣いなく。」
「それでは私の気がすみません。どうかお願いします。」
そう言ってフィオーレさんは深く頭を下げた。
どうしたもんかな。
お礼がしたいというフィオーレさんの気持ちも分からなくはないし。
「ウィン、お礼は素直に受け入れるべきだぞ。」
逡巡していると、ルルさんがそう助言してきた。
まあ、カネバッタ討伐から花コウモリ、花小熊とイベントが続いたので、お腹が空いてるのも確かだ。
朝、シルワの森に転移してから何も食べてないし、ここは、フィオーレさんの好意を受け入れようかな。
「分かりました。フィオーレさん、ご好意に甘えることにします。」
申し出を承諾すると、フィオーレさんはなぜかホッとした表情になり、続いてニッコリ笑顔になった。
さて、これでこの後の行動は決まったけど、問題はハナちゃんをどうするかだよな。
従魔じゃないので人前に出すわけにもいかないし、ディーくんに相談しようか。
「ディーくん、ハナちゃんはどうすればいい?」
「あるじ〜、小屋出してくれる〜。ハナちゃん、『庭』に連れて行くから〜。」
了解。
それが一番手っ取り早いよね。
僕はディーくんの提案を受け入れて花畑の隅の空いた場所に『小屋』を出すことにした。
「小屋。」
僕がそう呟くとすぐに『小屋』が現れ、ディーくんがハナちゃんと手を繋いでその中に入って行った。
星3つと星2つの魔物が手を繋いでいる様子は本来なら恐怖の対象だろうけど、ディーくんとハナちゃんだと、なんかほのぼのして見える。
僕は2人が『小屋』の中に入ったのを確認して、すぐに『小屋』を消した。
「ウィンさん・・・・・今のはいったい・・・・・」
あっ、フィオーレさんがいるの忘れてた。
まあ、転移も見せちゃってるから今更だけど。
「フィオーレさん、今のは転移系の魔法の一種です。僕、魔術師でもあるので。あまりお気になさらずに。」
「そう言われても・・・いきなり小屋が現れて、いきなり消えたような気がするんですが・・・」
「はい、そういう魔法です。」
「・・・・・」
フィオーレさん、言葉を失ってるね。
まあ、初めて見たら驚くよね。
でも魔法ならなんでもありってことで、無理矢理納得してもらおう。
「ウィン、何度言っても分からないようだな。説明が先だと、なぜ理解しない。」
「ルルさん、理解はしてますが、忘れるんです。」
「毎回忘れるなら、理解してないのと同じだ。」
ルルさん、痛いところを突いてきますね。
まったくその通りです。
そんなジト目で見ないで下さい。
もう別に、誰に対してもフルオープンでいいじゃないですか。
能力を隠すつもりはゼロなんですから。
そんなやりとりをしていると、魔道具士の男性が戻って来た。
どうやら結界の魔道具の修理が終わったようだ。
念のため、他の3つの魔道具もチェックしてくれたようで、現在は問題なく結界が発動しているとのこと。
ただ、なぜ結界の魔道具が1つだけ壊れたのか、原因は分からないらしい。
魔物が壊したような痕跡も見当たらなかったと、不思議がっていた。
「自然に壊れたりするのか?」
ルルさんが疑問を口にすると、フィオーレさんは少し困った顔をしながらルルさんに答えた。
「常に気をつけているので、今までそんなことはなかったんですが・・・誰かが触ったのかもしれません。」
「わざと壊したということか?」
「そこはなんとも・・・・・」
フィオーレさんにも状況がよく分からないようだ。
推測するための手がかりが何もないので当然だろうけど。
それにしても、イタズラにしては事が重大過ぎるよな。
魔物が花畑に入り込むということは、世話をしに来た人が被害を受ける可能性が高いからね。
でももし悪意を持った者の仕業であれば、事態はさらに深刻だ。
今回はたまたまルルさんと僕がいて難を逃れたけど、また同じようなことが繰り返されるかもしれないし。
「この花畑の花は、何に使うんですか?」
「花酒用の花です。」
「薬用とか、錬金術用とか、希少な種類とか、何か特別な要素は?」
「特にありません。森の中でも咲いているものばかりです。安全で楽に採取できるようにここで栽培しているだけです。」
僕の問いかけにフィオーレさんは困惑した表情のままで答える。
そこで僕は自分の言い方が少しまずかったことに気づいた。
「あっ、すみません。花酒用の花が重要じゃないって意味じゃないんです。」
「ウィンさん、そこは気にしてません。私自身、魔道具を壊してまで花畑を荒らす理由がまったく思いつきません。」
さて、この後どうすればいいのかな。
そんなことを思っていると、左腕で静かにしていたスラちゃんが急に鳴いた。
「リン(主人)、リン(小屋出して)。」
えっ、『小屋』を出すの?
スラちゃん、どういうことかな?
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