190.まだ何か何かいるようです(「なんだ、あれ?」:2回使用)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(190)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
190.まだ何かがいるようです(「なんだ、あれ?」:2回使用)
「なんだ、あれ?」
僕は、花コウモリを燃やした後に現れた白い皿をすぐに空間収納に入れた。
何かが載ってたけど、確認する暇はなかった。
位置的にもちょっと遠かったし。
でもおかしいな。
炎の中からお皿が出るのは『料理』だよな。
念じたのは『炎』だけど、勝手に『料理』に変換された感じ?
もしかして対象物が料理できるものだと、自動的にそうなるのか。
でもフルーツスライムの時は普通に燃え尽きたと思うけど。
『炎クエスト』や『料理クエスト』も知らないうちに進化してるのかもしれない。
「ウィン、余裕だな。討伐ついでに料理とは。」
ルルさん、けしてそんな意図はないんですけど、なぜか勝手にそうなっちゃってます。
確かに相手を倒すことを『料理する』とは言いますが、文字通り『料理』してしまうのはどうなんだと、我ながら思います。
でもできちゃうので、やっちゃいますけど。
「全部、料理!」
僕がそう叫ぶと、『風籠(球型)』の中が一瞬で炎に埋め尽くされ、すべての花コウモリが白い皿に載った何かになった。
「全部、収納!」
間髪いれずにそう叫んで、白い皿が落下する前にその全てを空間収納に収納する。
とりあえずこれで花コウモリの討伐は終了。
いつも通り、方針が決まるとあっという間だ。
空中に白い皿が大量に出現する光景は、グロくはなかったけどとてもシュールだった。
「ウィン、花コウモリ、食べるのか?」
最後に『風籠(球型)』を消したタイミングで、ルルさんがそう尋ねてきた。
「普通は食べるんですか?」
「聞いたことはないな。」
「でも鑑定だと可食となってました。」
「ウィン、食べることが可能かどうかと、あえて食べるかどうかは別の問題だと思うぞ。」
うん、ルルさん、たまに鋭い。
前の世界にも国や地域によっては食べてるけど、自分で食べたくないものはたくさんあった。
僕の場合は、発酵系で極端に匂いの強いものとか、昆虫系とか。
この世界における花コウモリもその系統なのかもしれない。
「ルルさん、どんな料理になったか見てみます?」
「私は食べないが、話のネタに見ておくか。」
「分かりました。」
僕も一応確認しておきたかったので、空間収納から花コウモリ料理を一皿取り出してみた。
お皿の上の物体を2人で見つめる。
う〜ん、これはどう見ても・・・
「串焼きだな。」
「串焼きですね(というか焼き鳥?)。」
「見た目には普通だし、元が何かは分からないな。」
「分からないですね。」
そう言った後、ルルさんと僕は視線を合わせて同時に頷いた。
「リベル行きだな。」
「リベルさん行きですね。」
ということで、花コウモリの串焼きは、串焼き大好きリベルさんに与えることで2人は合意した。
まあ、大丈夫だろう。
リベルさんだし。
串焼き大好きリーたんが欲しがった場合は・・・・・その時考えよう。
…うぃん殿、くえすとを達成しましたので表示するでござる…
○討伐クエスト
フロース・バット(花コウモリ)
クエスト : フロース・バットを倒せ
報酬 : 食用花(1株)
達成目標 : フロース・バット(1体)
カウント : 315体
花コウモリの串焼きの処分について思いを巡らせていると、「中の侍」さんから討伐クエスト達成のお知らせが表示された。
報酬は『食用花』らしい。
(1株)と表示されてるってことは、食材としてだけではなく栽培用にも使えるんだろうか。
でもその場合、担当従魔は誰になるんだろう?
花だからハニちゃんなのか、食用なので野菜扱いでウサくんなのか。
まあ、そんなことは従魔たちに任せればいいか。
…うぃん殿、審議の結果、さらにくえすと達成でござる…
○波動感知クエスト
クエスト : 波動を見極めろ①
報酬 : 波動感知
達成目標 : 波動系攻撃を避ける(100回)
カウント : 512/100
クエスト : 波動を見極めろ②
報酬 : 波動視
達成目標 : 波動攻撃を避ける(500回)
カウント : 512/500
おお、『波動感知』と『波動視』を一挙に獲得。
審議の結果ということは、『風籠』の中で花コウモリが撃ちまくってた波動が「波動攻撃の回避」に判定されたってことかな。
かなりラッキーだね。
これで、波動系の魔物も怖くない。
「ウィンさ〜ん。」
花コウモリの討伐が終わって、静かになった花畑でしばらく待っていると、僕の名前を呼ぶ女性の声が聞こえた。
振り返ってみると、魔道具士らしき男性と共に急ぎ足でこちらに向かってくるフィオーレさんが見えた。
「ウィンさん、花コウモリは?」
「討伐、終了しましたよ。」
「本当ですか? あんなにいっぱいいたのに、もう終わったんですか?」
「はい。」
僕がそう答えると、フィオーレさんは僕の隣にいるルルさんを見て頭を下げた。
「ありがとうございます、聖女ルル様。」
ああそうでしたね。
僕は冒険者にカウントされてませんでしたね。
ちゃんと「冒険者の」って名乗ったんですけどね。
そして『聖女ルル様』のことはやっぱりご存知だったんですね。
戦闘職としても有名なルルさんがいれば、倒したのは当然ルルさんだと思いますよね。
それはそれで仕方ありません。
「私も手伝ったが、倒したのはウィンだ。」
ルルさんがそう言うと、フィオーレさんは驚いた顔をした後、すぐに僕に向き直って頭を下げた。
「すみません。てっきりルル様が討伐してくださったものだと思い込んでしまって。ウィンさんも冒険者でしたよね。」
「はい、一応冒険者です。」
「花畑エルフ、こう見えてもウィンは強いんだ。」
ルルさん、フォローしてくれる気持ちは嬉しいですけど、「こう見えても」は余計です。
それから「花畑エルフ」って・・・。
まあルルさんの場合、他意はないんだろうけど。
でも聞く人によっては、頭が「○花畑」って揶揄してるみたいに聞こえますよ。
そうだ、そんなことより早く結界の魔道具を修理しないと。
「フィオーレさん、結界の魔導具はどこにあるんですか?」
「畑の四方にあるんですけど、壊れたのは向こう側の魔道具です。」
僕が尋ねると、フィオーレさんが花畑の反対側を指差しながらそう答えた。
「じゃあ一緒に行きましょう。討ち漏らした花コウモリがいるかもしれませんし。」
「ありがとうございます。急がないといけませんよね。このままだと魔物が入り放題ですものね。」
そんな会話の後、早速結界の魔道具の修理に向かうことにした。
花畑の中には、世話をする人の移動用と思われる小道が何本かあり、中央を通り反対側に抜ける道を選んで進んで行く。
先頭はルルさん、2番目が魔道具士の男性、3番目にフィオーレさん、殿が僕という並びだ。
一応魔物に対する警戒は解いていない。
しばらく進むと先頭のルルさんが足を止めた。
「ウィン、中央あたりに魔力の塊が見える。」
「リン(真ん中)。リン(いる)。」
ルルさんの『魔力視』とスラちゃんの『生命力感知』が同時に何かを捉えたようだ。
僕も『魔力感知』を使ってみると、確かに反応がある。
花コウモリが花に擬態して隠れているのかもしれない。
「フィオーレさん、ここで待っていて下さい。」
僕はそう告げると、フィオーレさんと魔道具士の男性を後方に残し、ルルさんと2人で警戒しながら花畑の中央に近づいて行った。
そして近接攻撃が可能な距離まで進んで行くと、それまで動かなかった魔力の塊がむくりと起き上がった。
「なんだ、あれ?」
僕は思わず、その日2度目の「なんだ、あれ?」を叫んでいた。
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