187.走馬灯再び(クエスト:隠蔽)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
あ第三章 世界樹の国と元勇者(187)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
187.走馬灯再び (クエスト:隠蔽)
「ウィン様には、ストーカーがいます。」
フェイスさんが真剣な表情でそう断言した。
まあ確かに、ストーカー、いますよね。
けっこういっぱい。
まず伝説の大商人、ジャコモさん。
なぜか行く先々に現れていろいろ世話を焼いてくれます。
『ウィンギルド』というストーカー友の会みたいなものを立ち上げて、会員を募集してますし、僕に関する情報も常に集めてます。
今、本人は近くにいませんけど、間違いなく何らかの方法で僕の行動を把握してるはずです。
次に孤高の聖女、ルルさん。
「来世までついて行く」発言は、どう考えても正真正銘、純度100%のストーカー宣言ですよね。
たとえ目的が純粋に「戦闘行為」だとしても、つきまといはつきまといです。
最近はさらに『転移』も覚えたので、いつでも僕の隣に転移することができます。
最強のストーカーと言えるのではないでしょうか。
あと、元勇者のリベルさん。
僕自身が串焼きで餌付けしてしまったので自己責任だけど、執着の度合いが高いように思えます。
まあ対象は僕というより、食べ物と寝床ですけどね。
より良い食事とより快適な寝床が見つかれば他にうつる可能性もありますが、現時点ではその兆候は皆無です。
従魔ブートキャンプから逃げ出さない限り、うちにいると思います。
そして最後に、諜報ギルドのエース、フェイスさん。
そう、あなた自身です。
えっ、観察者であってストーカーではない?
ええっと、ストーカーの定義について少し話し合ってもいいですか?
時間の無駄だからしない?
そうですか。
別にいいですけど。
「ウィン様、言い直します。ウィン様には、未知のストーカーがいます。」
僕がストーカーと思われる人たちの名前を挙げて順番に説明していると、フェイスさんが言葉を付け足して言い直した。
本当に未知のストーカーがいるとすれば、合計5名のストーカーがいることになる。
「未知のストーカー?」
「はい。」
「その未知のストーカーが異変を引き起こしていると?」
「その通りです。」
「なぜそんなことを?」
「楽しんでいるのだと思います。」
「楽しんでる?」
「ええ、異変を起こしてウィン様の能力や対応の仕方を見て楽しんでいるはずです。」
「なぜ、そう断言できるんですか?」
「もちろん、私ならそうするからです。」
その理由、個人的にはちょっとどうかと思いますが、フェイスさん自身は、なぜかとても悔しそうなら顔をしている。
いったいどうしたんだろう。
「フェイスさん、どうかしました?」
「いえ、そんな楽しみ方があるなんて・・・。気付かなかった自分を叱りたい気分です。」
うん、フェイスさんの性格もよく分からないな。
僕のことを心配してくれてるのかと思ったら、未知のストーカーの手腕に嫉妬してる感じ?
でもフェイスさん、今後新しい異変をセットアップするとか、やめてくださいね。
フェイスさんの場合、めちゃくちゃ手の込んだ試練を考案しそうで、とても嫌なんですけど。
そんなことを考えていると「中の侍」さんからのメッセージが視界の中を流れた。
…うぃん殿、新しいくえすとが達成されましたので、表示するでござる…
ここで新しいクエスト達成?
クエスト発生ではなくて、達成?
○ストーカークエスト
クエスト : ストーカーされろ
報酬 : 隠蔽(初級)
達成目標 : ストーカーされる(5名)
カウント : 5/5
達成済み
久しぶりに変化球が来たね。
それにしても『ストーカークエスト』って、唐突過ぎない?
今思いついたから慌てて表示した感、満載なんですけど。
しかも内容が「中の女性」の趣味に流されているような。
「中の侍」さん、「中の女性」に強制されたんじゃないの?
…いや・・・けしてそのようなことは・・・ないでござりゅ…
「中の侍」さん、動揺を隠しきれてないですよ。
最後なんて舌噛んでるし。
でも『隠蔽(初級)』のスキルはありがたく頂きます。
あと、継続クエストがあるなら表示してもらっていいですか。
…了解でござる…
○隠蔽クエスト(ストーカークエストから継続)
クエスト : 隠蔽をかけろ①
報酬 : 隠蔽(中級)
達成目標 : 隠蔽で人・魔物を欺く(10回)
カウント : 0/10
これ、『隠蔽』でストーカーを欺けって感じのこじ付けかな。
まあクエストの理由なんてどうでもいいんだけど。
でも、戦闘には便利そうだね。
認識阻害系のクエストって、初めてかもしれない。
「ところでフェイスさん、未知のストーカーって、誰だか心当たりあります?」
僕は悔しそうな表情のまま考え込んでいるフェイスさんにそう尋ねた。
「1人、います。確証はありませんが。」
ダメ元で訊いてみたら意外な答えが返ってきた。
心当たり、あるんだ。
「それって、僕の知ってる人?」
「おそらく。」
「誰?」
「申し訳ありませんが、確認が取れていない情報をお伝えする訳には参りません。諜報ギルドのエースとして。」
ええっ、そこにこだわるの?
別に教えてくれてもいいのに。
間違ってたからって文句言わないのに。
そんなことを思っていると、突然頭に激痛が走った。
「痛い、痛い。」
「ウィン、なぜ逃げた?」
痛みの正体はルルさんのグリグリ攻撃だった。
僕の真後ろに転移してきたようだ。
こめかみがルルさんの両手のグーでがっちりホールドされている。
「ルルさん、痛いです。」
「逃げた罰だ。」
ルルさん、けっこう怒ってる感じ。
でもグリグリって、何攻撃になるんだろう。
打撃無効があるのに痛いってことは、別の攻撃に分類されてるんだろうか。
「痛い、ごめんなさい、痛い、ちょっと疲れたので休憩しようと思って、痛い。」
ルルさん、グリグリがちょっと長いです。
「中の侍」さん、グリグリ耐性クエストとか、ないんですか。
「ふん、ウィン、私を置き去りにするなど、100万年早い。」
そう言いながら、ルルさんはようやくグリグリを解除してくれた。
頭が割れるかと思った。
「中の侍」さんは沈黙を守っている。
どうやらグリグリ耐性はないみたいだ。
「ルルさん、どうしてすぐ追いかけて来なかったんですか?」
「島で魔物を探していた。魔物相手に打撃&ヒールを試そうと思ってな。」
「あっ、それ試したんですか。どうでした。」
「魔物が見つからなかった。」
そうでしょうね。
魔物たちも気配を読んで隠れてたんでしょうね。
そんな拷問、誰も受けたくないですからね。
「ところでウィン、こんなところで1人で何をしている?」
「えっ、1人? あれ? フェイスさん?」
フェイスさんはいつの間にかいなくなっていた。
ルルさんの怒りの気配を察知して逃げたのか、未知のストーカーの確認に行ったのか、あるいはその両方か。
理由は分からないけど、さすがに見事な逃げ足ですね。
「あっそうだ、ルルさん、新しいスキルが手に入ったので試してみてもいいですか?」
「いいぞ、さあ、どこからでもかかって来い。」
ルルさんはそう言うと、両方の拳を胸の前に構えて戦闘態勢をとった。
いや、そういうスキルじゃないんだけど。
まあ、説明するのも面倒なのでこのままでいいか。
「行きますよ。隠蔽!」
ドゴッ。
僕が叫ぶと同時にルルさんの拳が僕のお腹に入り、僕は吹っ飛ばされて世界樹の幹に叩きつけられた。
あっ、またこれまでの出来事が走馬灯のように・・・・・
そこで僕は気を失った。
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