183.ルルさんとレベリングします②(ヒール&魔法耐性)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(183)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
183.ルルさんとレベリングします②(ヒール&魔法耐性)
吹っ飛ばされた後、砂浜をゴロゴロ転がり、砂まみれになって仰向けに倒れた。
大の字になって寝転がった状態だ。
思うように体が動かない。
意識が少し朦朧としている。
うん、空が青いな。
海風が頬を撫でて流れていく。
波の音も繰り返し響いている。
なんか、この島で初めて目覚めた時のことを思い出すな。
その後、従魔たちと出会って、転移陣で葡萄園に転移して、冒険者ギルドに行って、商人ギルドに行って・・・・・
あれっ、これって僕、死にかけてない?
そんなことを考えていると、何か温かいものが全身を包んだ。
誰かが砂を蹴って走ってくる音が聞こえる。
意識がはっきりし、体も動くようになったので、僕は砂浜の上で上体を起こした。
「ウィン、大丈夫か?」
走ってきたのはルルさんだった。
さすがのルルさんもちょっと慌てているように見える。
「大丈夫・・・みたいです。ヒールのおかげで。」
そう言いながら僕は立ち上がり、全身を確認する。
痛いところはないし、手足も千切れてないし、頭の中もスッキリしている。
砂だらけだった防具も新品みたいにキレイになっている。
ヒールの効果って、中級でも凄いな。
「なぜまともに受ける? 少しは回避すると思ったのに。」
「いや、どれくらいのダメージがあるか分からなかったので、とりあえずそのまま受け止めてみました。」
「ウィン、バカなのか。威力を確認するのに、最大から試すやつがどこにいる。」
そうだよねぇ。
普通は最小から試すよね。
でもなぜか大丈夫な気がしたんだよな。
全然大丈夫じゃなかったけど。
この世界の自分、クエストのおかげで能力は高いけど、思考回路がイマイチなのかもしれない。
そんなことを考えていると、視界の中にメッセージが流れた。
…バカ確定だな…
あれ、口調が・・・
そうだ、ここ、はじまりの島だった。
「中のヒト」、こんにちは。
…無茶しすぎだ。まだ元の状態に戻ってない・・・…
ご心配をおかけしてすみません。
ん?
元の状態に戻ってない?
元の状態ってどういう意味だろう?
…新しいクエストだ。…
○魔法耐性クエスト
クエスト : 魔法攻撃を受けろ①
報酬 : 魔法耐性(小)(軽減率25%)
達成目標 : 魔法攻撃を受ける(10回)
カウント : 1/10
適性受注者: ルル
今、「中のヒト」、明らかに失言したよね。
何か言っちゃいけないことを言っちゃった感じ?
他の中の人たち(中の女性・中の侍)、殴らなくていいの?
…うるさい。(あ、ずる〜い)(拙者のことは殴るでござるのに)…
なんか副音声が追記されてますけど。
そんなこともできるんですね。
「元の状態」がどんな状態なのかよく分からないけど、とりあえず今は新しいクエストだな。
『魔法耐性クエスト』か。
予想はできたけど、今までは出てこなかったよね。
何度か魔法攻撃を受けたことがある気がするけど。
まあ受けたと言っても、かすった程度だったから、ある程度ダメージを受けないと成立しないのかもしれないな。
あれっ、最後のところに初めて見る項目がある。
『適性受注者』って何?
…受注者枠設定者の中で適性のある者を表示する項目だ。今後、新しいクエスト発生時に表示される…
なるほど。
これでいちいち試さなくても受注できるかどうかが分かるってことだね。
便利でいいね。
まあ今のところ受注者はルルさんしかいないけど。
ということで、早速ルルさんにも設定しよう。
○魔法耐性クエスト
クエスト : 魔法攻撃を受けろ①
報酬 : 魔法攻撃耐性(小)(軽減率25%)
達成目標 : 魔法攻撃を受ける(10回)
カウント : 1/10
受注者 : ルル
「ウィン、本当に大丈夫か? 頭でも打ったのか?」
僕が黙り込んだままだったので、ルルさんが心配そうに顔をのぞき込んできた。
すみません。
「中のヒト」と会話してました。
「大丈夫です。それより、新しいクエストが発生しました。ルルさんにもセットできました。」
「本当か。どんなクエストだ?」
「魔法耐性です。」
「達成目標は?」
「魔法攻撃を受けることです。」
「よしすぐやろう。ウィン、魔法を撃ち合うぞ。」
ええっと、ルルさん?
ちょっと前まで僕の体のこと心配してませんでしたっけ?
吹っ飛んだ僕を見て、けっこう狼狽えてましたよね。
えっ、今はそんなことより目先の『魔法耐性』?
そうですか。
ルルさんだし、そうですよね。
まあ、ヒールのおかげで体調は万全なので構いませんけど。
それからルルさんと僕は、お互いに『風球』を撃ち合い、ヒールをかけ合った。
「殴ってヒール」が「魔法を撃ってヒール」に進化した形だ。
もちろん一撃目の失敗を反省して、微妙に当たり方を工夫している。ダメージコントロール、大事です。
その後、100回近く「魔法を撃ってヒール」を繰り返した結果、ルルさんと僕は『ヒール(上級)』と『魔法攻撃無効』を獲得した。
○クエスト : ヒールをかけろ②
報酬 : ヒール(上級)(回復率75%)
達成目標 : ヒールをかける(100回)
カウント : 174/100
達成済み
クエスト : ヒールをかけろ③
報酬 : ヒール(極)(回復率100%)
達成目標 : ヒールをかける(500回)
カウント : 174/500
○クエスト : 魔法攻撃を受けろ④
報酬 : 魔法攻撃無効(軽減率100%)
達成目標 : 魔法攻撃を受ける(100回)
カウント : 100/100
達成済み
「ルルさん、そろそろ、やめませんか?」
「ウィン、何を言っている。もう少しでヒール(極)になるじゃないか。」
「もう少しって・・・ルルさん、状況分かってます?」
「分かっている。あとたった326回で極だ。」
「326回は『たった』じゃないでしょう。ていうか、もう魔法攻撃無効になったので、魔法だとダメージが入らないんですけど。」
「なんだそんなことか。ウィン、大丈夫だ。まだ私には剣がある。斬撃は打撃とは別だろう?」
まあルルさんならそう言うだろうなとは思ってましたけど・・・。
もちろん斬撃耐性に興味はありますが、ルルさんの斬撃をこの身で受け続けるなんて怖くてできません。
どうせまた手加減できないんでしょうし。
腕とか足とか首とかが飛んでいく未来が見えます。
「あとは実戦で積み重ねましょう。じゃあ、先に行きますね。」
僕は早々にルルさんを説得することを諦めて転移で逃げることにした。
ルルさんの場合、『ヒール(極)』までと言っていても、その次があればさらに続けると言うに決まっている。
回復率100%の先にまだ何かあるなら見てみたい気はするが、もう上級(回復率75%)なんだし、そんなに慌てる必要もない。
それに自分たち同士で危険を冒してレベリングする以外にも方法はあるはず。
診療所をまわって患者にヒールをかけて回るとか、訓練中の兵士たちにヒールをかけるとか、魔物に攻撃とヒールを繰り返すとか。
あっ、最後のは拷問みたいになっちゃうか。
魔物相手とはいえ、道義的にNGだな。
そんなことを考えながら転移を終えると、目の前に世界樹の大きな幹が見えた。
僕は転移先に世界樹を選んだ。
どこに逃げても、ルルさんが本気ならすぐに転移で追いかけてくるので、できるだけ暴れにくい場所にしてみた。
いくらルルさんでも、神聖な世界樹の目の前で暴挙には出ないだろう。
たぶん。
出ないよね?
しかし予想に反して、ルルさんは追いかけて来なかった。
諦めたのか、他の方法を思いついたのか。
もしかすると小屋に戻って、膝を抱えて拗ねてるかもしれないな。
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