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181.非常識だけど名案です(ヒールクエスト)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(181)

【アマレパークス編・白の森シルワ】   



181.非常識だけど名案です(ヒールクエスト)



「醜態を見せた。すまぬ。」


ルルさんは落ち着きを取り戻し、素直に謝ってきた。


まあ悪気があって何かをしたわけじゃないので、謝る必要もないんだけどね。

念願のスキル(魔法)が手に入って感極まっただけだしね。

タックルを受けてひっくり返った僕のお腹と後頭部が、ちょっと痛むけど、そんなことはたいしたことじゃないし。


「ウィン、大丈夫か? 私がヒールをかけてやるぞ。」


後頭部を手でさすっていると、ルルさんがすかさずそう言ってきた。

ちょっと前までボロボロ涙を流して泣いてたのに、今はかなりテンション高めだ。

覚えたての『ヒール』を使いたくて仕方がないらしい。


これってあれだよね。

「今泣いたカラスがもう笑う」ってやつだよね。


「別にいいです。自分でヒール、使えますから。」

「そんなこと言わずに私にヒールをかけさせろ。自分で自分にヒールをかけるのはもったいないだろう。」


これはもう、ヒールの押し売り状態じゃないかな。

それに「自分で自分にヒールをかけたらもったいない」って、意味が分からないんですけど。


「ルルさんこそ、あんまりヒールを使うと魔力が枯渇しますよ。」

「私は大丈夫だ。魔力量が多いのは知ってるだろう?」


どうやら『ヒール』はけっこう多くの魔力を消費するらしい。

回復と治癒と浄化の効果を兼ね備えているのだから、当然と言えば当然のことだが。


それからルルさんはクエストで得た能力でも、それを使う時には普通に自分の魔力を消費するようだ。

僕の場合は魔力消費0で全てのスキルを使えるけどね。

まあ元々、魔力量0なんで。


「ウィン、とにかく私にやらせろ。」

「ルルさん、人前でそういう言い方しないでくださいね。」

「なぜだ? それよりウィンが素直にやらせてくれればいい話だろう。」

「だから目的語を省略しないで下さい。」

「今は誰もいないからいいだろう。早くやらせろ。」


この会話、他の人に聞かれたら通報ものだよね。

まあ誰もいないからいいけど。

いや、第三者、いた。

そこに・・・ラクちゃんが。


ラクちゃんは編み物を続けながら二人の会話に耳を澄ませている(ように見える)。


ラクちゃんが聞く。

ラクちゃんが従魔たちに伝える。

ディーくんかタコさんかウサくんが誰かに伝える。

噂が広まる。


詰んだな。

また誤解が拡散される。

そしてマッテオ農園の女性たちが大騒ぎする。

主にアリーチェさんが。

まあ、宴会の話のネタにして楽しんでるだけだし、別に構わないけどね。


「ヒール。」


僕はルルさんの「やらせろ」攻撃が面倒くさくなって、自分で自分にヒールをかけた。


「あっ、ウィン、ひどい! やっぱりウィンはひどいやつだ!」


ルルさんが何か叫んでるけど無視。

ヒールを使う場面なんて、これからいくらでもあるんだから、何を騒いでいるのやら。

ルルさん、泣いてる時は可愛かったのに、素に戻るとやっぱり、なんというかウザ・・・



…うぃん殿、世界樹くえすとからの継続くえすとが発生しましたので表示するでござる。るる殿も継続扱いでござる…



危うく心の中でルルさんをディスりそうになったところで、再び「中の侍」さんからメッセージが表示された。

新しいクエストが発生したらしい。



○ヒールクエスト(世界樹クエストから継続)

 クエスト : ヒールをかけろ①

 報酬   : ヒール(中級)(回復率50%)

 達成目標 : ヒールをかける(50回)

 カウント : 1/50


 クエスト : ヒールをかけろ①

 報酬   : ヒール(中級)(回復率50%)

 達成目標 : ヒールをかける(50回)

 カウント : 1/50

 受注者  : ルル



世界樹クエストからの継続クエスト?

世界樹クエストで『ヒール(初級)』を獲得して、そのレベル上げが『ヒールクエスト』ってことだね。

継続扱いなので、ルルさんにもそのままクエストが発生したってことかな。


…その通りでござる。継続の場合は改めて受注者枠の設定は不要でござる…


了解したけど、このヒールクエスト、自分に50回続けてヒールをかけたらすぐ達成できるんじゃない?


…うぃん殿、ひーるはある程度だめーじがある状態でないとかうんとされないでござる…


なるほどね。

必要がないのにヒールをかけてもカウントされないと。

納得です。


「ウィン、聞いてるのか。ウィンは本当にひどいやつだ。私にやらせてくれたって減るものじゃないだろう。」


ルルさん、まだ喋り続けてたんですね。

いい加減、その誤解を受ける省略の仕方はやめてくれませんかね。

中年オ○ジのベタな口説きみたいになってますよ。


「ルルさん、ちょっと落ち着いてください。新しいクエストが発生したので説明します。」

「新しいクエスト? ウィン、それは私にも関係があるのか?」

「はい、ルルさんにも発生してます。」

「内容は?」

「ヒールを50回使用すると、レベルが初級から中級に上がります。」


ルルさんは僕の説明を聞いて、一瞬黙った後にまたすぐ喋り出した。


「50回で中級か。よしウィン、すぐに50回ヒールをかけるぞ。」

「ダメです。」

「どうしてだ。いつからウィンはそんなに意地悪になった?」

「意地悪じゃありません。ある程度ダメージがある状態じゃないと、ヒールをかけてもカウントされないみたいです。」


ここまで言えば、ルルさんも納得するだろうと思ったが、ルルさんの常識は僕の常識を遥かに超えていた。


「分かった。つまり、私がウィンを殴ってからヒールをかければいいんだな。それを50回繰り返せば中級になれるんだな。」


ルルさん・・・・・・・・さすがです。

非常識だけどその通りです。

僕はその方法に、思い至りませんでした。

いや待てよ。

それならいっそのこと・・・・・。


「ルルさん、殴るのはちょっと待ってください。」


僕はすでに殴る態勢で構えているルルさんに待ったをかけた。

ルルさん、今止めなかったら、僕が承諾する前に殴ってましたよね。

理不尽に殴ろうとしてたのはルルさんの方なのに、どうしてそんな不服そうな顔してるんですか。


「ルルさん、場所を変えましょう。ここだと人が通るかもしれませんから。」

「それもそうだな。で、どこでやる?」

「久しぶりに島に行きましょう。あそこなら邪魔は入りませんし。」

「分かった。じゃあ行くぞ。」


ルルさんはそう言うと、いきなり姿を消した。

ひとりで先に転移したようだ。

僕は左腕のスラちゃんとひたすら編み物をしているラクちゃんを召喚解除で小屋に戻してから、ルルさんを追って転移した。


転移する直前に、また何か忘れてる気がしたけど・・・

まあいいか、あとで考えよう。



読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は10月25日(水)です。

よろしくお願いします。

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