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180.戦闘狂の目に涙(ヒール:世界樹クエスト)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(180)

【アマレパークス編・白の森シルワ】  



180.戦闘狂の目に涙(ヒール:世界樹クエスト)



森の外のカネバッタを処理して森の中に戻ると、ルルさんとラクちゃんが仲良く並んで座っていた。

ルルさんはラクちゃんのツルツルボディを撫でている。

ラクちゃんは自分の糸で何かを編んでいる。

どうやら二人で僕の帰りを待っていたようだ。


「ルルさん、森の外のカネバッタの処理、終わりました。」

「ウィン、こっちも終わったぞ。といってもほとんどクモさんのおかげだがな。」


そうだよね。

今回、ラクちゃん大活躍だったね。

なんかご褒美あげないとな。

ラクちゃん、何がいい?

えっ、カネバッタいっぱい採れたから別にいらない?

そういう訳にも・・・・・

そうだ、ラクちゃん最近『おにぎり』食べるようになったんだよね。

はい、これ食べて。


ご褒美になるかどうかは微妙だけど、僕は『おにぎり』をクエストで出してラクちゃんに渡した。

ラクちゃんは鎌状になってる前足で器用に『おにぎり』を挟んでもぐもぐし始めた。


ラクちゃん、本来は肉食なんだけど、なぜか『おにぎり』だけは別枠みたいなんだよな。

まぁうちの従魔たち、ほぼみんな雑食化してるけどね。


「おっ、世界樹の魔力が元に戻ったな。」

「あっ、本当ですね。魔力から刺々しさがなくなりましたね。」

「ああ、色が防御系から癒し系に変化した。もう大丈夫だろう。」


世界樹の魔力が防御系に切り替わった時、僕の体は強い悪寒を感じ取った。

あれはおそらく世界樹の怒りだったんだと思う。

でも今は、優しい魔力が森全体を包んでいるのが分かる。


「ルルさん、森の木々が修復されて行ってますよ。」

「本当だな。これも世界樹の力だな。」


カネバッタの群れが暴れたせいで、周辺の木々は、葉を食い尽くされたり、枝が折れたり、幹が傷だらけだったりと、かなり被害を受けていた。

それが今、ゆっくりと再生していっている。


折れた部分から新しい枝が伸び、その先に葉が茂り、幹の抉れた部分が埋められていく。

心なしか、僕自身の体力も少しずつ回復しているような気がする。



…うぃん殿、くえすとを達成しましたので表示するでござる…



世界樹の心地よい魔力を全身で感じていると、このタイミングで「中の侍」さんからクエスト達成のメッセージが流れた。


何のクエストだろう?

カネバッタの討伐クエストだろうか?

それともギルドの常時依頼関係だろうか?



○討伐クエスト

 メタルム・ホッパー(カネバッタ)

 クエスト : メタルム・ホッパーを倒せ

 報酬   : 銅のカケラ・銀のカケラ・金のカケラ

 達成目標 : メタルム・ホッパー(1体)

 カウント : ノーマル(723体)

        レア(12体)

        Sレア(3体)



表示されたのは、カネバッタの討伐クエストだった。

報酬はそれぞれ金属のカケラのようだ。

討伐クエストの表示を見ているとさらにメッセージが追加された。



…うぃん殿、報酬は直接空間収納に送るでござる。さらにもうひとつ達成されたくえすとを表示するでござる…



おお、報酬を空間収納に直接入れられるんだね。

それはとても便利。

討伐クエストの次はギルドの常時依頼の達成かな。

そんなふうに思っていると予想外のクエストが表示された。



○世界樹クエスト

 クエスト : 世界樹を守れ

 報酬   : ヒール(初級)(回復率25%)

 達成目標 : 世界樹を守る(1回)

 カウント : 1/1

 達成済み



『世界樹クエスト』!

しかも報酬が『ヒール(初級)』!

今までヒールはウサくん頼みだったけど、これで自分でもヒールが使える。

かなり嬉しい。

まあ、まだ初級で回復率は25%だけど。



「ウィン、どうした? また心の友と会話してるのか?」

「ルルさん、新しいクエスト達成でヒールが使えるようになりました。」


ルルさんの問いかけに何気なく僕が答えると、ルルさんは大きく目を見開いた。


「な・・・ん・・・だ・・・と・・・」


ルルさん、どうしたんですか?

言葉が切れ切れになってますけど。

今までで一番動揺してません?

僕、なんか変なこと言いました?


「ウィン・・・今・・・ヒールと・・・言ったのか?」

「はい、ヒールです。初級レベルですけど。」

「なぜだ。聖女の私に使えないヒールを、なぜウィンが・・・」


なぜと言われてもクエストですから、僕には理由なんて分かりません。

でもどうしてそこにこだわるんだろう?

もしかしてルルさん、聖女なのにヒールが使えないことがトラウマだったんですか?

昔、誰かにバカにされたりしたんですか?

それでバカにする奴を殴り倒してるうちに、拳闘主体の戦闘系聖女になっちゃったんですか?


そんなくだらないことを考えていると、「中の侍」さんから助言が表示された。



…うぃん殿、受注者枠を試されることを推奨するでござる…



なるほど。

「中の侍」さん、ナイスアシスト。

ルルさん、一応聖女だから『世界樹』や『ヒール』とは相性がいいはず。

受注者枠で設定できるかもしれない。

とにかくやってみよう。


(世界樹クエスト、受注者枠にルルさん設定。)


心の声でそう呟くと、すぐにクエストが表示された。



○世界樹クエスト

 クエスト : 世界樹を守れ

 報酬   : ヒール(初級)(回復率25%)

 達成目標 : 世界樹を守る(1回)

 カウント : 1/1

 受注者  : ルル

 達成済み



うまくいった。

ルルさんも状態異常のカネバッタたちと戦ったので、クエストがすでに達成扱いになっている。

これでルルさんもヒールが使えるはずだ。


「ルルさん、ルルさんもクエスト達成扱いになりました。ヒール、使えると思いますよ。」


僕がそう伝えると、「なぜだ・・・なぜだ・・・なぜだ・・・」と呟いていたルルさんが急に黙って真顔になる。

そして僕に向かって右手を振って、「ヒール」と発声した。


ルルさんの右手から僕に向かって光の筋が流れ、僕の体が柔らかい光に包まれる。

そしてその光が消えると、わずかに残っていた疲労感が僕の中からスッと消えた。

うん、成功だね。


「ルルさん、ヒール、発動しましたね。」


僕がニッコリ笑いながらルルさんにそう声をかけると、ルルさんは目を見開き、その大きな瞳で僕を見た。

そして、その瞳から大粒の涙がボロボロと溢れ出した。


えっ、ルルさん、それってもしかして、泣いてます?

目にゴミが入ったとかではなくて?

あのルルさんが・・・泣いてる?

戦闘狂の目にも涙?

そこまでなの?

そこまで『ヒール』が欲しかったの?


「ウィン!」


初めて見るルルさんの涙に激しく動揺していると、ルルさんが僕の名前を叫んで、いきなり飛びかかってきた。

いや正確には・・・抱きついてきた。


ルルさんの突然の行動に僕はまったく反応できず、ルルさんの体を受け止めた体勢のままで後ろ向きにひっくり返ってしまった。


ルルさん、今の突撃で結構ダメージ入りましたけど。

後頭部も地面で強打した気がします。

せっかくヒールをかけてもらったのにHP結構減りました。

まあ自分でヒールをかければいいから問題ないですけど。


僕は仰向けのままでそんなことを考えていた。

思考回路がかなり混乱してるのかもしれない。

僕の胸の上ではルルさんが顔を埋めてまだ泣いてる気がする。

確認する勇気は僕にはない。

親しい人に予想外の行動を取られると、対応の仕方が分からなくなるよね。


仰向けのままでふと横を見ると、ラクちゃんと目が合った。

ラクちゃんは両手の鎌を器用に使いながら編み物を続けていた。

僕の目をしばらく見つめた後で、ラクちゃんはフッと視線を逸らせた。


ラクちゃん、それは・・・・・

見て見ないフリですか、そうですか。

でもそういう対応の仕方って、どこで学ぶの?

今度従魔たち一人一人に小一時間ほど問い質してみたいと思う。




読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は10月23日(月)です。

よろしくお願いします。

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