179.ラクちゃん無双(ポイポイ:ラクちゃんバージョン)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(179)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
179.ラクちゃん無双(ポイポイ:ラクちゃんバージョン)
ルルさんを追いかけて森の中に転移すると、ルルさんは『風壁』で防戦に徹していた。
「ウィン、遅い。」
「すみません。状況は?」
「これは、私には相性が悪い。小さ過ぎるし多過ぎる。殴っても殴ってもキリがないし、『風』で寄せ集めてもすぐにバラける。」
「でも、『炎』はマズイですよね。」
「森を燃やしたら、世界樹に敵認定されるぞ。」
そうだよなぁ。
どうしようかなぁ。
森に被害を与えずに大量の小さい魔物だけを倒す方法って、何があるんだろう。
僕は自分の手札をひとつずつ確認する。
『炎』は木が燃えるからダメ。
『風』は相手が小さいので、木や葉が邪魔をして思うように集められない。
『水』は上手い使い方が思い浮かばない。
『氷』は数が多過ぎて狙い撃ちが難しい。
『石』は木々を傷付けそうそうで怖い。
混合系も・・・・・。
イマイチ適当なものが思い浮かばない。
うん、ちょっとお手上げかも。
これが森の中じゃなければ戦いようがあるんだけどな。
仕方がないのでとりあえず、魔物鑑定の『質疑機能』を試しておくことにした。
まず鑑定をしてと・・・。
表示された鑑定結果を見ると、やっぱり森の中のカネバッタたちも状態の項目に異常と表示されていた。
続いて異常について質問してみる。
(異常の詳細を教えて下さい。)
異常 → 『魅了』による危機感付与、攻撃性強化
おお、質問に対する答えが表示された。
カネバッタたちの異常は、『魅了』によるもの?
ていうか『魅了』ってこんなことできるんだ。
危機感を煽って攻撃的にしてるってことだよね。
「ルルさん、カネバッタ、魅了されてます。」
「魅了?」
「はい。それで危機感が付与されて攻撃性が強化されてるみたいです。」
「それならこの状況も理解できる。しかし解決策がない。世界樹の結界のおかげでカネバッタたちもこれ以上奥には進めないようだが。」
「魅了の上から、別の魅了ってかけられます?」
「それは無理だ。解除できるのは魅了をかけた本人だけだ。それにそもそもこちらには魅了使いがいない。」
あっ、ルルさんにまだ『魅了』を獲得したこと言ってなかった。
今言うべきかな?
いや後にしよう。
どうせこの状況には対応できないんだし。
そんなことを考えていると、僕の左腕から鈴の音が鳴り響いた。
「リン(主人)、リン(大丈夫)。」
静かだったのですっかり忘れてたけど、スラちゃん、ずっと僕の左腕にいたんだよね。
でもどうして「大丈夫」なの?
「リン(お供2番手)、リン(ラクちゃん)。」
ラクちゃん?
ラクちゃんが2番目のお供ってこと?
でもお供してなかったよね。
「リン(隠れて)、リン(いました)。」
隠れてた?
こっそりついて来てたってこと?
でもそれってお供なのか。
まあ隠密系の護衛もお供って言えなくもないか。
いったいどこにいるんだろうと思って周囲を見回すと、森の中を素早く飛び回るラクちゃんの銀色ボディが確認できた。
ラクちゃんが通り過ぎた後には、白くふわりとしたものが広がっている。
そうか、ラクちゃんならその手があるんだね。
見ていると、ラクちゃんは森の木々の間に、次々に蜘蛛の巣を張り巡らせていった。
その巣にカネバッタがどんどんくっついていく。
『粘糸』のスキルで粘着力が強化された糸からは、カネバッタの力では逃れられないようだ。
「ルルさん、『風』でカネバッタたちをかき混ぜてください。ラクちゃんの蜘蛛の巣に当てる感じで。」
「おお、クモさんが助っ人に来てくれたのか。了解した。」
そこからは、何と言えばいいのか、戦いとか討伐とは言えないような作業が続いた。
あえて言うなら「昆虫採集」?
ルルさんと僕は、ひたすら風魔法で森の中の空気をかき混ぜる。
小さくて軽いカネバッタたちは風に煽られて飛ばされ、そのうちにラクちゃんの蜘蛛の巣のどれかに引っかかる。
一つの巣がカネバッタでいっぱいになると、ラクちゃんが巣ごと回収し、そこに新しい蜘蛛の巣を設置していく。
この作業の繰り返し。
よく見ると、ラクちゃんは僕のマジック・バッグを携帯していて、カネバッタでいっぱいになった巣を器用にクルクル丸めて、その中に放り込んでいた。
これって、ラクちゃん版の「ポイポイ」と言えるかもしれない。
しばらく「昆虫採集」を続けていると、カネバッタの気配がほとんどなくなった。
かろうじて蜘蛛の巣から逃れた個体も、ラクちゃんが粘糸の狙い撃ちで次々に捕獲している。
もうここは大丈夫そうだ。
「ルルさん、ここは任せていいですか?」
「もうほぼ終わりだし構わないが、ウィンはどうするんだ?」
「森の外にいたカネバッタの処理をしてきます。」
「了解した。」
僕はルルさんに森の中の残務処理を任せて、すぐに森の外に転移した。
森の外には、相変わらずたくさんのカネバッタがウゾウゾしていた。
その光景を見た瞬間に鳥肌が立ったが、歯を食いしばって我慢した。
できるだけ速やかに処理してしまおう。
さてどうするのが一番効率がいいかな。
森の外なのでやりようはいろいろある。
『炎』で燃やし尽くすのが手っ取り早いけど、万が一草原から森に延焼したら嫌なので、その方法は除外しよう。
僕は少し考えてから『風』と『氷』でいくことにした。
「大風!」
僕がそう叫ぶと、強い風が吹き荒れ、カネバッタたちを1ヶ所に寄せ集め始めた。
ここなら障害物がないので、簡単に風を操ることができる。
やがてカネバッタたちがひとつの大きなボールのようになったところで、僕は次の魔法を発動した。
「氷塊!」
一瞬でカネバッタでできた大きなボールが、大きな氷の塊になった。
僕的にはとてもおぞましい氷の塊だ。
無数の小さな昆虫(の魔物)が中に入った氷塊なんて、見るに耐えないよね。
ということで、速攻で空間収納の中に仕舞うことにした。
後でラクちゃんに全部あげよう。
素材倉庫行きなのか、食材倉庫行きなのか、とても気になるところだけど。
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