176.求婚ってそれでいいんですか(魅了クエスト:極級)
見つけて頂いてありがとうございます。
第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(176)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
176.求婚ってそれでいいんですか(魅了クエスト:極級)
僕は視界に表示されたクエスト達成表示を二度見した。
○魅了クエスト
クエスト : 求婚されろ①
報酬 : 魅了(弱)
達成目標 : 求婚される(1回)
※性別・種族は問わない。
カウント : 1/1
(補足)
魅了(弱): 意志が弱い者を従わせることができる。
「中の侍」さん、新しいクエストを達成できたことは嬉しいけど、これって「中の女性」の趣味が入ってない?
それにこのクエストの達成目標って「求婚される」ことだよね。
今回のは母親からの「婿入り要請」じゃないのかな。
メルさんからプロポーズされたわけじゃないし。
対象外じゃないの?
…うぃん殿、これは正規のくえすとでござる。他の者の趣味は入っておりませぬ。達成目標に関しましては、審議の結果、求婚と同等との判断にござる…
そうなんですね。
別に異議を申し立ててる訳ではないので、ありがたく『魅了(弱)』スキルを頂きますが。
いったい誰が審議して、誰が判断してるのやら。
「中の人審議会」とか、あるんですかね?
…名前はありませぬが、そのようなものでござる…
ということは、「中のヒト」と「中の女性」と「中の侍」の3人か。
いや他にもまだ登場していない「中の人」がいるかも知れない。
でも求婚なんてそうそうあることじゃないし、次の段階に進むのは難しいんじゃないの?
そう思っていると、
「メルママ、ちょっと待ってもらおうか。ウィンをメルに渡す訳にはいかない。ウィンは私のものだ。」
「あらあらルルちゃん、でもルルちゃんとウィン君、結婚してるわけじゃないんでしょう?」
「それはそうだが・・・結納の品はもらっている。」
ルルさん、結納の品なんてあげてませんから。
あのミスリルのガントレットのことを言ってるんだと思いますが。
それに僕は物ではないので、渡すとか渡さないとか、僕抜きで話を進めるのは止めて下さい。
「ルルちゃん、甘いわね。恋愛も結婚も自由競争よ。人生は早い者勝ちなのよ。」
「ならば私もその競争に参加しよう。」
「それ面白そう。私も参加する〜。」
「ウィン様を間近で観察する権利を得られるのであれば、不肖ながら私も参加させて頂きたいと思います。」
リーたん?
フェイスさん?
あなたたちは何を言ってるのかな。
ルルさんはいつも通りなので仕方ないけど。
リーたん、あなた、意味を全然分かってないでしょう。
フェイスさん、ストーカーするために求婚するって、何か根本が間違ってませんか。
悪ふざけとしか思えない二人の発言に憤慨していると、メーセージが表示された。
…くえすとが連続で達成されたのでまとめて表示するでござる…
○魅了クエスト
クエスト : 求婚されろ②③④
報酬 : 魅了(中・強・極)
達成目標 : 求婚される(2回・3回・4回)
※性別は問わない。種族は問わない。
カウント : 2/2 3/3 4/4
(補足)
魅了(中): 意志が普通の者を従わせることができる。
魅了(強): 意志が強い者も従わせることができる。
魅了(極): 意志が極めて強い者も従わせることができる。
あっという間に、魅了クエストが3段階も進んでしまった。
このクエスト、求婚1回につき1段階レベルが上がるようだ。
まあ、求婚される状況なんて普通は滅多にないので、達成目標が求婚10回とか50回とかだと、事実上無理クエストになっちゃうからね。
でもその前に「中の侍」さん、さっきのあれ『求婚』に認定してもいいの?
リーたんとフェイスさんなんて、単なるノリで面白がってるだけじゃないのかな。
当事者のはずの僕自身が、結婚を申し込まれた感ゼロなんですけど。
…うぃん殿、『中の人審議会』にて、有効と判定されたでござる…
あっ、その名称そのまま使っちゃうんだ。
まあスキルレベルが上がるのは大歓迎なので、もうどうでもいいですけど。
でも『魅了』って使い所あるのかな。
試すにしても、誰にどんなふうに試せばいいんだろう?
そんなことを考えていると、
「ママ! 訳の分かんない話を勝手に進めるのはやめて! どうして私がそこの馬の骨と結婚しなきゃいけないの。馬の骨なんて、世界樹の養分になっちゃえばいいんだわ。そうすればルル様も正気に戻ってくれるわ。ねぇそこの馬の骨、もしかしてうちのママにも魅了かけた? きっとそうね。そじゃなきゃ婿にするなんて言い出すはずがないもの。すぐ解きなさい。ルル様とママにかけた魅了を今すぐ解除しなさい。さもないと世界樹に吊るすわよ。」
ついに、メルさんがキレた。
ルルさんから僕のことをディスるのを禁止されていたのに、完全に忘れて「馬の骨」呼ばわりしてるし。
ルルさんにも、メルママにも魅了なんてかけてないのに、濡れ衣を被せてくるし。
そう言えば「世界樹の養分にする」って言い回し、メルママも使ってたな。
この国では有名な言い回しなんだろうか?
でも最後の「世界樹に吊るす」はまずくない?
神聖な世界樹に対して敬意を欠いてると思うけど。
「あらあらメルったら照れちゃって。メル、優良物件は迷ったら負けなの。どんなものでもいいものから売れていくのよ。結婚相手なんてその典型よ。」
「ママ、だからってそこの馬の骨を押し付けないでよ。私にも選ぶ権利があるわ。それに急がなくったって、残り物には福があるって言うでしょ。」
「メル、それは商人が自分の商品を全部売り切るために作った言葉よ。世の中、そんなに甘くないのよ。」
メルとメルママが親子の会話をしている。
傍目に見ると二人ともそっくりなので、親子というより双子の姉妹喧嘩のようだ。
それにしてもメルママ、思慮深いのか世知辛いのか、判断に苦しむ発言だな。
言いたい事は分からないでもないけど。
「メル、ウィンをディスるなと言っただろう。それに、ウィンは魅了スキルは持ってない。」
続いてルルさんがメルさんを諌めつつ、僕には魅了スキルがないことを力強く断言した。
その言葉は、ほんの少し前まではその通りだったんですけどね。
今はちょっと状況が変わってしまいました。
でもだからと言って、このタイミングで「魅了スキルあります」と宣言すると、著しく不都合な誤解を招く可能性があるよね。
どうしようかな。
よし、こんな時こそ、以心伝心だ。
最近のルルさんは、僕の考えてることを正確に読み取るからね。
(ルルさん、少し、前に、魅了スキル、ゲットしました。)
僕はルルさんを見つめながら、心の中で一語一語、はっきりと念じてみた。
ルルさんは僕の真剣な表情に気付き、僕の目をじっと見つめ返してくる。
それはまるで、僕の思考をじっくりと読んでいるように見えた。
ルルさん、やっぱり念話スキルあるんじゃないのかな。
これなら通じるかもしれない。
そんな期待を抱いていると、
「ウィン、そんなに見つめられると、さすがの私も照れるぞ。」
まったく伝わっていませんでした。
まあ、そうだよね。
いつものあれは、特定のジャンルに対する直感みたいなものだからな。
それなら次はタコさんみたいに身振り手振りで伝えようか、なんて馬鹿なことを考えていると・・・。
事件は青天の霹靂のように突然やってきた。
何か違和感を感じて周囲を見回してみると、いつの間にかリーたんの姿が消えていた。
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