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175.婿になってちょうだい(メルママ:メルのママ?)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(175)

【アマレパークス編・白の森シルワ】  



175.婿になってちょうだい(メルママ:メルのママ?)



その女性は腰に手を当てて仁王立ちしていた。

体型も声も態度もどう考えてもメルさんそのもの。

でも着ている服が、直前に会ったメルさんとは違っている。


「あなた! 聞こえないの! すぐにその子から離れなさい。ここは神聖な世界樹の目の前なのよ。こんな場所で幼女を連れ去ろうとするなんて。たとえお天道様が見逃したとしてもこの私が許さないわ。言うことを聞かないなら、怒りの鉄拳をあなたにぶち込むわよ。」


うん、喋り方も同じだよな。

でも服装が違うし・・・双子かな。

メルさん、ここが故郷だって言ってたしな。


「メルさん・・・じゃないですよね?」


僕がそう尋ねるとその女性の瞳が大きく見開かれた。


「あなた、どうしてメルのことを知ってるの? メルにいったい何をしたの? まさか、メルも誘拐したの? さあ、今すぐ白状しなさい。5秒あげるわ。さっさとその子を解放して、メルの居場所も喋りなさい。さもないと、1センチ四方に切り刻んで、世界樹の養分になってもらうわよ。」


やっぱり似てる。

服装以外はそのままメルさんだ。

でもこれでメルさんの関係者であることは判明した。

あとはこちらの状況説明をして誤解を解きたいんだけど、メルさんに似てるだけあって、きっと人の話は聞かないタイプだよね。


「メルさん、たぶんもうすぐここに来ると思いますが・・・」


僕はとりあえずそう言ってみた。

ルルさんが転移して来ないということは、メルさんと一緒にいる可能性が高い。

僕は思わず逃げちゃったけど、考えてみればルルさんにはメルさんから逃げる理由はないしね。

これだけ時間が掛かってるということは、2人とも、いやフェイスさんも含めて3人でこちらに向かってる気がする。


「メルがここに? つまり他に仲間がいるということね。あなたの仲間がメルを誘拐してここで合流し、一緒に逃亡するつもりね。そこまで計画的だなんて。あなた、人身売買組織の人間? しかも幼女専門の?」


うん、やっぱり思い込みが激しいし、話がどんどん飛躍するし、とても面倒くさい。

幼女(リーたん:100歳)を連れてるだけで、いつの間にか幼女専門の人身売買組織に認定されてしまった。

ていうか、メルさんも見た目は幼女だけど幼女じゃないよね。

僕より年上だったはずだし。


早くルルさんだけでも来てくれないかな。

転移で逃げてもいいんだけど、メルさんの関係者だけに、なんか余計に面倒なことになりそうだし。


「メルさんは知り合いですよ。誘拐なんかしません。それにこの子、リーたんも友人です。リーたんは幼女に見えますが100歳超えてますし。」


僕はとりあえず精一杯の説明を試みた。

説得できる自信はまったくなかったけど。


「まあ、なんて出鱈目な釈明なの。言い訳するならもっとマシなことを言いなさい。その可愛らしい幼女が100歳だなんて。馬鹿馬鹿しくてへそが茶を沸かすわよ。さあ、その子をこちらに渡しなさい。」


「ふわぁ〜。ウィン、なんかうるさいけど、どうしたの?」


ようやくリーたんが目を覚ました。

メルさんそっくりの女性とのやり取りの間、リーたんはずっと僕の隣で気持ちよさそうに眠っていた。

そのせいで僕も立ち上がれず、座ったままで対応していた。


「お嬢ちゃん、早くその変態から離れなさい。さあ、こっちへ来るのよ。」


女性がそう言いながらリーたんに手を差し伸べた。


ついに、人身売買組織の人間から単なる変態に落とされてしまった。

それにしても最近の僕に対する代名詞、酷すぎないかな。

「ちんまり」とか、「異常」とか、「変態」とか。

前の世界ならいろんな意味で問題になってるよね。

そんな風に落ち込んでいると、ようやく助け舟がやって来た。


「メルママじゃないか。ウィンと知り合いなのか?」


予想通り、ルルさんとメルさんとフェイスさんが一緒に現れた。

どうやらルルさんとこの女性は知り合いらしい。


ルルさん、来てくれて本当にありがとうございます。

今日初めてルルさんが『聖女』に見えました。

どうか一刻も早く、この苦行から解放してくれませんか。


「あら、ルルちゃん。久しぶりね。どうしてここに? でもちょうど良かったわ。この変態をぶちのめしてくれないかしら。」


「メルママ」と呼ばれた女性は、僕の方を指さしてそう言った。

ルルさんはチラリと僕の方を見ると、すぐにその女性に言葉を返した。


「メルママ、ぶちのめすのは構わないが、何があった?」

「この変態が幼女を誘拐しようとしてたのよ。」

「ウィンが海竜幼女を誘拐? ウィン、どういうことだ。」

「どういうことって・・・リーたんと二人でここに転移してみんなを待ってたら、リーたんが寝ちゃって。そこにこの女性が突然現れただけなんですけど・・・。」


ルルさんは「なるほど」と呟くとメルママに向かって説明を始めた。


「メルママ、おそらく誤解があったのだろう。ウィンは私のパートナーだ。そしてそこの幼女はウィンが保護した海竜だ。誘拐ではない。」

「この変態がルルちゃんのパートナーなの?」

「そうだ。ウィンは、ある意味変態と言えなくもないが、れっきとした私のパートナーだ。そしてそこの海竜幼女とそこのフェイスは、まあ仲間だな。」

「そうなのね。私、勘違いしちゃったみたい。ルルちゃん、ごめんね。でもすごく怪しかったから。こんな怪しい人がルルちゃんのパートナーって、ちょっと信じられないけど・・・ルルちゃんが言うなら本当なのね。私ったら、ちょっと正義感に燃えちゃって。恥ずかしいわ。ホントにごめんなさいね、ルルちゃん。」

「メルママ、まあよくある事だ。気にするな。」


ええっと、何となく丸く収まってますけど、謝るのはこっちにじゃないのかな。

散々変態扱いしておいてそのまま放置とか、どういうこと?

それに、ルルさん「ある意味変態と言えなくもない」ってどういう意味ですか?

その前に「ぶちのめすのは構わないが」って言ったのもきっちり覚えてますよ。

あと、なぜ勝手にルルさんが謝罪を受け入れてるんですか?


「ということでウィン、紹介しよう。メルママだ。」


あ、ルルさん、ざっくりとまとめてきた。

まあ、蒸し返してもややこしくなるだけだろうし別に構いませんけどね。


「ウィンです。メルママさん、よろしくお願いします。ちなみに幼女専門でも変態でもありません。」

「リーたんです。海竜です。100歳超えてます。よろしくお願いします。」

「フェイスと言います。年齢不詳です。以後お見知り置きを。」


僕とリーたんとフェイスさんがメルママに対して自己紹介を終えたところで、僕はあることに気付いた。

あのメルさんが登場以来一言も喋らない。

いったい何が起こっているんだろう?

そう思って彼女の方を見ると、物凄く怖い目で僕のことを睨んでいた。


「ああメルにはよく言って聞かせた。一言でも喋ったら私たちはすぐに消えると。」


僕の視線に気付いて、ルルさんが理由を教えてくれた。

でもルルさん、本当に大丈夫なの?

メルさんが今にも大爆発しそうに見えるんだけど。


「メル、ルルちゃんがシルワに来てるなら教えてくれないとダメじゃない。ママ、びっくりしちゃったわ。あなたが家に帰って来るなんて、何かあると思ってたけど、ルルちゃんを追いかけてきたのね。」


メルママさんがメルさんにそう言葉をかけた。


ちょっと待って下さいね。

今、聞き捨てならない単語があったような。

もしかしてルルさんが呼んでる「メルママ」って、彼女の名前じゃなくてメルさんのママってこと?


「メル、メルママとは話してもいい。ただしウィンをディスるのは禁止だ。」


ルルさんがメルさんを睨みながらそう言った。

メルさんは一つ大きく深呼吸して、気持ちを抑えるように胸に手を当てながら口を開いた。


「ママ、ルル様がそこの馬の骨・・・男性とパーティーを組んだって言うから・・・むかついて・・・疑問があってルル様を追いかけて来たの。」

「あらあらそうなのね。メルはルルちゃんの大ファンだものね。でも改めて見ると、ウィン君、なかなかいい男じゃない。ルルちゃんがパートナーに選ぶってことは強いんだろうし。」

「ママ! そんなこと・・・ないことも・・・ない。私、負けた。」

「あらあら、メルはウィン君に負けちゃったのね。まだまだ修行が必要ね。メルも相当強いはずだけど、ウィン君、見かけによらず凄いのね。」


メルママ(メルのママ?)は、そう言いながら僕にウィンクしてきた。

この人、興奮してる時はメルさんそっくりだけど、冷静になると割とお茶目さんなのかもしれない。

でもメルさんのママだとすると年齢は・・・・


「ウィン君、レディの前で余計なことは考えちゃダメよ。」


うわっ、笑顔のままのメルママからもの凄い殺気が飛んできた。

メルママ、たぶんメルさんよりはるかに強いよね。

殺気の圧力が半端なかったんですけど。


「メルママ、ウィンには私だって勝てない。」

「まあ、そこまでなの? ルルちゃんが勝てないって、勇者レベルじゃないの?」

「勇者でも無理だろう。リベルなら瞬殺される。」


ルルさん、勇者の人が聞いたら激怒しますよ。

でも確かにリベルさんを見てると、勇者にも勝てるような気がしないでもないですけど。

他の勇者の人たちがどれくらい強いのか、会ったことがないので分かりませんが。


そんなことを考えていると、メルママがいきなり爆弾発言を投下した。


「まあまあまあ、ウィン君、本当に凄いのね。そうだわ。いい事思いついちゃった。ウィン君、メルのお婿さんになってちょうだい。うん、我ながらナイスアイデア。正直メルのことは頭が痛かったのよね。自分より弱い男なんて願い下げだなんて言うもんだから、普通の男性は近づいて来ないし。口を開けばルルちゃんのことばっかりだし。メルよりも強いウィン君がお婿さんに来てくれれば、我が一族も安泰だわ。」


メルママさん、ちょっと待って下さいね。

一人で盛り上がってるところ大変申し訳ないのですが、いったい何の話をされてるんでしょうか。

一度冷静になって・・・



…くえすとが達成されたので表示するでござる…



ええっ、ここでクエスト達成ってどういうこと?

ちょっと理解不能なんですけど。




読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は10月11日(水)です。

よろしくお願いします。

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