171.久しぶりにもの中で戦います(カポッと:アイスドーム)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(171)
【アマレパークス編・白の森シルワ】
171.久しぶりに森の中で戦います(カポッと:アイスドーム)
「どうするも何も、このまま進むぞ。」
フェイスさんからの暗殺者ギルド待ち伏せの情報に対して、ルルさんはそれがどうしたという態度でそう答えた。
「ルルさん、このまま進むと襲われるんじゃ・・・」
「そうだな。」
「避けなくていいんですか?」
「なぜだ?」
「いや、だから襲って来ますよ。」
「倒せばいいだろう。」
そうだよな。
ルルさん的思考なら、当然そういう結論になるよな。
でも仮にも「暗殺者ギルド」っていうくらいだから、それなりに強い暗殺者が揃ってるんじゃないだろうか。
「フェイスさん、暗殺者ギルドのメンバーって、どれくらいの強さなんですか?」
「そうですね。人を殺すことに限定すれば、この世界のトップクラスの人材が集まっています。」
「それって危険じゃないですか?」
「普通はそうですね。狙われたらほとんど逃げられないですね。」
フェイスさん、淡々と答えてくれるけど、その内容だとかなりまずい状況なんじゃないかな。
暗殺に関して世界トップクラスの集団と戦うのって、大丈夫なの?
「フェイスさん、それなら逃げた方が良くないですか?」
「どうしてですか?」
「暗殺者ギルドが待ち伏せしてるんでしょう?」
「はい、暗殺者ギルドのエース級のチームが2チーム潜んでますね。」
さすが諜報ギルドのエース。
待ち伏せしている暗殺者部隊の詳細も把握している。
いや今はそんなことより・・・
「それじゃあ負けちゃうかもしれないじゃないですか。」
「それはあり得ません。」
「でも、世界トップクラスの人たちだって・・・」
「はい、でもこちらは聖女様とウィン様なので。」
「どういう意味ですか?」
「聖女様とウィン様は人の範疇には入れてませんので。」
なるほど・・・そういう判定基準ですか。
人外に分類されたのは心外ですが、暗殺者ギルドの人たちはあくまでも普通の人たちの中でのトップクラスであって、特別枠はさらにその上にあるということですね。
「ウィン、心配し過ぎだ。ウィンの従魔たちより強い暗殺者など、いるわけがないだろう。従魔たちよりはるかに弱い暗殺者が怖いのか?」
「そう言われると・・・まったく怖くないような・・・」
ルルさんの言葉を聞いて落ち着いて考えてみると、その通りだった。
森の中の戦いで言えば、コンちゃんやハニちゃんやラクちゃんより強い人間なんてちょっと想像できない。
だとすれば、問題なく対処できる気がする。
話し合いが終わり、僕たちは森の中の道を進み始めた。
フェイスさんは、姿を消すものと思っていたらそのまま一緒について来た。
本人曰く、せっかく隠れる必要がなくなったのだから堂々と観察したいとのこと。
まあ、好きにして下さい。
しばらく歩いていると、前方の左右と上方に魔力の塊を感知した。
『魔力感知』スキルのおかげだ。
左右と上方それぞれに10人ずつ、合計30人の反応がある。
そう言えば『魔力感知クエスト』、第一段階で放置したままだったな。
後で第二段階を達成して『魔力視』にレベルアップしないとね。
「魔法で先制攻撃するつもりだな。丸見えでは意味がないがな。」
ルルさんが歩きながらそう言った。
ルルさんには元々『魔力視』のスキルがある。
魔力に色が着いて見えるそうだ。
その色によって魔法の属性まで判別できるらしい。
隠れて魔法発動の準備をしたとしても、魔力は隠しきれないため、『魔力感知』や『魔力視』持ちに魔法で不意打ちすることはほぼ不可能に近い。
ターゲットの1人にルルさんがいるのだから、それくらいの情報は暗殺者ギルドも掴んでると思ってたけど、この状況を見ると意外と『聖女ルル』の正確な能力は知られていないのかもしれない。
むしろ魔物を殴り倒して回る『戦闘狂』の面ばかりが強調されているのか。
「ウィン、風と土が半々だ。おそらく『風矢』と『土槍』でくる。」
「了解。リーたんはどうする?」
「私は見学かな。向かってきたら倒すけど。」
打ち合わせとは呼べないような簡単な打ち合わせが終わり、僕たちは戦闘体勢に入る。
と言っても普通に歩いてるだけだけど。
リーたんだけ少し後ろに下がり、その隣にフェイスさん。
フェイスさんはまあ、自分で適当に対応するだろう。
ペースを変えずに歩いていると、魔法の射程圏内に入ったのだろう、ルルさんと僕の足元に魔力が発生し、地面から『土槍』が飛び出してきた。
もちろん2人は軽くステップでも踏むように魔法が発動する前にその場所から離れている。
魔力を感じてから魔法が発動するまでの間隔が長いな。
これなら簡単に避けることができる。
ルルさんなら、魔力の発生と魔法発動はほぼ同時だ。
やっぱり技量が違いすぎるんだろうな。
ルルさんと僕が『土槍』を躱わすと、次に『風矢』が飛来した。
しかもそのすべてが僕を狙って飛んで来る。
暗殺対象を先に始末しようということかな。
見え見えだから当たらないけどね。
僕はわざとギリギリで『風矢』を避けた。
15本の『風矢』を軽快な足捌きで躱していく。
するとさらに多くの『風矢』が時間差で僕に向かって飛んで来た。
僕の避け方を見て、もう少し厳しく攻めれば倒せる可能性ありと判断したのかもしれない。
僕の逃げる場所を推測したかのように連携した攻撃が続く。
これって、いい練習になるし、『魔力感知クエスト』のカウントも稼げてラッキーかも。
僕は『風矢』を見切りながらそんなことを考えていた。
ハニちゃんの『毒針』やコンちゃんの『蔓と根のコンボ』攻撃の方がよっぽど回避するのが大変だった。
しばらくすると『風矢』の合間に実物の吹き矢のようなものが混じり始めた。
森の中で視認しにくいように、緑色に塗られたものだ。
たぶん劇毒か麻痺毒が塗られているのだろう。
しかしこれも風魔法で速度を付加しているため、『魔力感知』で簡単に識別できてしまう。
いい加減『魔力感知』や『魔法視』の可能性に気づかないのかな?
もしかしてかなり珍しいスキルなのか?
暗殺者たちは、当たりそうで当たらないことにイライラし始めたのか、段々と連携が乱れてくる。
それでも魔法を連発できるところを見ると、魔力量がかなり多いのか、魔力回復ポーションでも使っているのだろう。
「ウィン、そろそろ遊びはいいだろう。私が暇過ぎる。」
自分の出番がなかなかないので、ルルさんが焦れてしまったようだ。
暗殺者たちの攻撃はほとんど僕に集中してるし、ルルさんがいる状態では接近戦は分が悪いと判断したのか、遠距離攻撃しかしてこない。
僕としてはもう少し『魔力感知クエスト』のカウントを稼ぎたいところだけど、ルルさんが不機嫌になるのも、それはそれで面倒だ。
ということで、
「じゃあ、ルルさん、『大風』で真ん中に集めてもらっていいですか?」
「フルーツバードの時のようにか?」
「はい、お願いします。」
僕がそう言うと、ルルさんは瞬時に『大風』を発動した。
周囲の木々が激しく揺れ動き、その中から1人、また1人と弾き飛ばされたように暗殺者たちが道の真ん中に落ちてくる。
落ちてきた暗殺者たちはすぐにその場から逃げようと試みるが、周囲から吹き寄せる風の圧力で身動きがとれないようだ。
最終的に30人の暗殺者の団子みたいな塊が前方の道の真ん中に出来上がった。
その塊に向かって僕が叫ぶ。
「アイスドーム!」
空中に半球状のお椀のような大きな氷が出現し、パカッと蓋をするように30人の暗殺者たちをその中に閉じ込めた。
ポルトの冒険者ギルドでメルさんを閉じ込めた魔法の巨大版だ。
これで捕獲終了。
ルルさんの出番、『大風』だけだったけど、今回は許してもらおう。
「ウィン、これだと私が殴れないじゃないか。」
「人数が多かったので、効率を考えた結果です。」
「それなら足だけ氷で固めるとかしてくれれば、全員殴り倒したのに。」
「ルルさん、足を固められた相手を殴り倒して、面白いですか?」
「まあ・・・面白くは・・・ないな。」
案の定、ルルさんが文句を言ってきたけど、何とか誤魔化せた。
あとは、この暗殺者たちの後始末だけど・・・。
「ウィン様、私から提案があります。」
皆殺しにする訳にもいかないしなとか考えていると、フェイスさんが解決策を提案したいと言ってきた。
さて、どんな内容なんだろう?
興味があるのでとりあえず聞かせてもらおうかな。
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