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168.シルワの森の前にいます(小屋:No.9)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(168)

【アマレパークス編・白の森シルワ】



168.シルワの森の前にいます(小屋No.9)



「これは・・・普通なら森の中へ入ろうとは思わないな。」



転移を終えて視線を上げると、目の前に果てしなく広がる森が見えた。

「シルワの森の前」と念じて転移したので当然の結果だけど。


首を左に振り、続いて右に振ってみる。

どちらを向いても森が途切れる場所が見えない。

どれだけの幅があるのだろう。

正面を見ると平地を突然遮る壁のように、濃い密度で木々が立ち並んでいる。

しかもその1本1本がすべて見上げるような巨木だ。


完全に人を拒んでいる雰囲気があるけど、森エルフたちはこの中に街を作ってるんだよな。


「シルワの森」は、僕の想像を遥かに超えて広く高く大きかった。

少し手前に転移したつもりだったけど、物凄く圧迫感がある。

遠景にでも『世界樹』が見えるといいななんて期待は、巨木の壁に跳ね返された感じだ。

空でも飛べれば、上空から『世界樹』が見えるんだろうか。


「世界樹は、どうやっても見えないぞ。」


少し遅れて僕の隣に転移してきたルルさんが正面を見たままで僕にそう告げた。

僕の『転移陣』で一緒に転移することも可能だったけど、熟練度を上げたいということでルルさんは自分で転移してきた。

でもルルさん、すでに僕より『転移陣』を使いこなしてると思うんだよね。


「どうしてですか?」


僕はルルさんの言葉に質問で返した。


「何らかの結界が張られているらしい。遠くから見ても、森の中心にあるはずの世界樹は視認できない。」

「森エルフが結界を張ってるんですか?」

「いや、世界樹の結界だと言われている。」

「世界樹って、結界を張れるんですか?」

「本当のところは私にも分からんが、世界中の自然と繋がる能力があるのなら、結界ぐらい張れるだろう。」


ルルさんはそう言うと、うっすらと微笑んだ。

うわぁ、この人、可能なら『世界樹』相手にでも戦いたいって顔してる。

いや間違いなくそう考えてるな。

戦闘狂って、怖い。


「そんなバカなことは考えてないぞ。」


えっ?


「世界樹と戦いたいなんて思ってないと言ってるんだ。」


なぜバレた?

もしかしてルルさん、知らないうちに『念話』か『読心』の能力を獲得したのか?


「言っておくが、心を読んだわけでも念話でもないからな。」

「じゃあどうして?」

「顔に出てるからだ。」

「そんなに?」

「ああ、ウィンは分かりやすい。非常時にはあれほど冷静でポーカーフェイスなのにな。」


そうなのか。

普段は気を抜き過ぎてるってことか。

他人の心の動きとかに鈍感なはずのルルさんに読まれるなんて、どれだけ僕はダメダメなんだ。


「また失礼なことを考えてるな。」


はい、考えてました。

そしてもう諦めました。

ルルさんは僕の心を読める。

今後はその前提で行動、いや思考しようと思います。


「ルルさん、そんなことより『小屋』を出そうと思うんですけど、どこがいいですか?」

「露骨な話題転換だな。まあいい。その辺に出せばいいんじゃないか。」

「こんな何もない草原に『小屋』を置いたら怪しくないですか?」

「今さら気にすることじゃないだろう。誰も勝手に入れないし、誰も壊せないのだから。」


まあその通りですけど。

じゃあお言葉に甘えて出しますね。

はい、小屋1つ。


僕がそう念じると、『小屋』がポンと出現した。

これで9個目だっけ?

そんな疑問を心に浮かべると、すぐに「中の侍」さんが反応した。



…うぃん殿、『小屋』の設置場所を表示させて頂くでござる…


○設置場所

 ①はじまりの島 浜辺

 ②はじまりの島 中央の台地

 ③コロンバール マッテオさんの農園

 ④コロンバール コロン 教会の裏庭(ルルさんの小屋の隣)

 ⑤コロンバール ポルト 『七色ワームの洞窟』内部

 ⑥コロンバール ポルト 商人ギルド・ポルト支部の裏庭

 ⑦アマレパークス アマレ 商人ギルド・アマレ本部の裏庭

 ⑧アマレパークス 碧の海 リバイアタンの洞窟

 ⑨アマレパークス シルワ シルワの森の前



「中の侍」さん、ありがとうございます。

なんか反応が良くなってきましたね。

かなり業務に慣れてきたのかな。


…お褒めに与り、恐悦至極にござる。これからもお役に立てるよう、研鑽を積む所存にござる…


「中の侍」さん、いちいち受け答えが大袈裟だよね。

もうちょっと肩の力を抜いてもらって構わないんだけど。


…滅相もござらぬ。主人につかえる者として、譲れぬ一線がございます故…


そうなんですね。

分かりました。

まあ、人それぞれ性分があると思うので、仕方ないですね。

やり易いようにして下さい。


…うぃん殿、誠にかたじけないでござる…



「中の侍」さんとの会話を終えて、僕は彼のセリフの中に気になる単語があることに気が付いた。

それは、『主人』という言葉だ。


中の人たちにとって、僕は『主人』なのだろうか。

僕は彼らのことを、単に『クエスト・メイカー』という能力のガイド役と認識してたんだけど、違うんだろうか。

彼らは僕に『つかえる者』なのだろうか。


でもそれにしては、「中の人」は僕に対して辛辣で時々ツンデレだし、「中の女性」は基本は丁寧だけど所々でコジらせてるし・・・。

「中の侍」さんが一番従者っぽいけど、それでも誰かの下で働くことに慣れてるようには思えないんだよね。

まあ考えても答えは出ないし、これは放置でいいか。



僕は草原に出現した『小屋』に近づき、扉を開いた。

『小屋』の中からは、待っていたかのように従魔たちが飛び出して来た。

1、2、3、4、5、6。

従魔たちの数を数えてみると誰か1人足りない。

タコさんが見当たらない。


「タコさんはリベル君の訓練中だよ〜」


僕が首をひねっているとディーくんがそう教えてくれた。

なるほど。

もうブートキャンプが始まってるんだね。

リベルさん、『庭』の湖で雷鰻トルポル・イールに追いかけ回されてるんだろうか。

ご愁傷様です。


他に誰かいないかと、念の為に『小屋』の中を除くと、りーたんがポツンとひとりリビングに立っていた。

人化してるので、青髪に青い瞳の少女姿だ。


「リーたんもシルワに森に行く?」

「行きたい。」

「出てくれば?」

「跳ね返されたの。」


話を聞いてみると、扉が開いたので従魔たちと一緒に飛び出そうとしたら、リーたんだけ扉のところで跳ね返されたそうだ。


そうだった。

リーたんは僕の許可がないと、海の洞窟に繋がる扉以外は使えないんだった。


「リーたん、ごめんね。リーたんに許可っと。はい、これで通れるはずだよ。」


リーたんはコクリと頷いて、トコトコと扉の方に歩いて来た。

そしてなぜか僕と手を繋ぎ、一緒に扉を潜り抜ける。

今回はリーたんもすんなり外に出ることができた。


扉を出てシルワの森の方を見ると、ルルさんと従魔たちが横一列に並んで森を見ていた。

それはまるで、これから未開の森に挑む冒険者たちの勇姿のように見えた。


僕とリーたんはルルさんの隣まで歩き、その列に加わる。

さあいよいよ新しい冒険に出発だ。


「ルルさん、このまま森に入りますか?」

「そうだな。それもいいが、入口から行く方が楽だな。」

「入口?」

「そうだ。」

「入口があるんですか?」

「当たり前だろう。森の中に街があるんだ。入口もあれば街道もある。」


えっそうなの?

なんかてっきり鬱蒼とした大森林の中、道なき道をかき分けて進んで行くんだと思ってたんですけど。

周囲の気配に気を配り、襲ってきた魔物を倒しながら、秘境の隠れ里を探す、みたいな。


この高まってしまったワクワク感はどうすればいいの?

大冒険を期待していたのに。

まあ、最初に確認しなかった僕が悪いんだけど。




読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は9月25日(月)です。

よろしくお願いします。

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