166.運命の多数決(庭なら可:リベル)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(166)
【アマレパークス編・首都アマレ】
166.運命の多数決(庭なら可:リベル)
僕が従魔全員を『小屋』の中に召喚すると、従魔たちはいつもの登場のポーズではなく、様々な格好でリビングに現れた。
あっ、みんなそれぞれ何か持ってる。
たぶん素材収集の最中に呼び出しちゃったからだろうな。
タコさんは、身体中に何匹かウナギーレみたいな生き物を巻き付けている。
電気がバチバチと光ってるし、それ、普通のウナギーレじゃなくて魔物系だよね。
それ食材なの?
えっ、『庭』の湖に放す?
これで「蒲焼き」食べ放題?
確かにタコさん『養殖担当』だけど・・・
ちょっと後でお話ししようか。
ラクちゃんは銀色のメタルボディの上と4対の足にそれぞれ大きな繭のようなものを確保している。
ラクちゃん、それ、繭だよね。
いろんな色があるけど。
白は普通だけど、青とか赤とか黄色とか黒とか、いったい何の繭なの?
さらに金色とか銀色とか虹色まであるね。
えっ、糸や布の消費量が増えてきたので集めてきた?
そう言えばラクちゃん、『裁縫担当』だったね。
でもその繭の中、魔物の幼虫とかいるんじゃないの?
えっ、大丈夫?
中の幼虫は生きたまま『庭』の森に放す?
これで繭、取り放題?
ラクちゃんも、後でお話ししようね。
ハニちゃんは自分の体の何倍もある大きな蜂のような生き物を後ろから羽交い締めにしている。
ハニちゃん、それって、明らかに同族だよね。
しかも巨大だし。
えっ、クイーンを捕まえた?
これで大量にハチミツを確保できる?
ロイヤルゼリーも?
ハニちゃん、「果樹栽培担当」だよね。
ハチミツも担当?
そうだったっけ。
『庭』の草原に養蜂箱を設置するから大丈夫?
大丈夫かどうか、後でじっくり話し合わないとね。
コンちゃんは何種類もの植物のようなものを蔓で縛り上げて担いでいる。
植物にしては形状が奇妙なものが多い。
しかも全部ウネウネ動いてるし。
えっ、この辺で生息する食虫植物型の魔物を集めてきた?
どうして?
薬の材料にする?
あっ、そうか。
コンちゃん「昆虫担当」だけじゃなく「調薬」もできるんだったね。
でもその魔物たちが何の薬になるの?
それは内緒って・・・コンちゃんも面談確定で。
ウサくんは香箱座りでただもぐもぐしてる。
特に何も持ってる様子はない。
えっ、『庭』の畑に植える野菜の味見をしてきた?
野菜は?
もう畑に植えてきた?
さすがウサくん、行動が早いね。
『栽培担当』だし、『陰潜り』も使えるから当然か。
何でも栽培していいかって?
ウサくんの好きなもの植えていいよ。
でもできれば動かない野菜がいいかな。
そこのところ、本当に、お願いするね。
スラちゃんは球状になって床の上をコロコロ転がってる。
いつもより少しだけ体積が大きい気がする。
スラちゃんは外で何をしてたの?
えっ、鉱石を集めまくってた?
その鉱石はもう素材庫に入れたのかな?
えっ、体の中に入れてる?
あっ、スラちゃん、出して見せなくていいから。
あ〜、リビングに鉱石が山積みに・・・。
でもその小さい体のどこにそれだけの鉱石を入れられるんだろう?
スラちゃんの体の中って、ブラックホールか何か?
もしかして無限収納?
とりあえず邪魔になるんで、その鉱石の山、もう一度体にしまってくれるかな。
最後にディーくん。
マジックバッグを肩に斜め掛けして、直立不動でなぜか敬礼してる。
もちろん他には何も持っていない。
収集したものはすべてマジックバッグに入れたの?
ディーくんは『木材担当』だったはずなので、きっと木材がいっぱい入ってるんだろうね。
えっ、ここに出していいかって?
絶対ダメだよ。
素材庫か『庭』に出すように。
でも禿山ができるくらいの勢いで木を切り倒したりしてないだろうね。
えっ、間伐程度?
ディーくん、どこでそんな言葉覚えたの?
それに木材ってそんなにたくさん必要なのかな?
うん?
『庭』に城を建てるから?
「小屋の庭に城を建てる」って、字面的に完全におかしいと思うけど・・・。
まあ、気にしたら負けかな。
「ということで、多数決を採りたいと思います。」
従魔たちとの長いやりとりが終わって、ようやく召喚した本来の目的に戻ることにした。
ルルさんとリベルさんの「居候問題」に対する運命の多数決。
従魔たちからの衝撃的な話が多過ぎて、危うく本題を忘れてしまうところだった。
思い出した自分を褒めてあげたい。
誰も褒めてくれないので。
「従魔たち、ルルさんとリベルさんがこの小屋に住みたいと言ってるんだけど、賛否をみんなに決めてもらおうと思う。2人それぞれに住みたい理由を言ってもらうから、賛成の人は手を挙げてね。分かった?」
僕がそう説明すると従魔たちはコクコクと頷いて了承を示した。
なんかボブルヘッド人形が並んでるみたいで面白い。
ところでタコさん、その電気ウナギもどき、バチバチ光って目障りなんだけど。
タコさんの『麻痺』で大人しくできないの?
僕が念話でそう訊くと、タコさんは目を真ん丸くして、「その手があったか」みたいな反応。
本当に忘れてたのか冗談なのか判断に苦しむけど、タコさんが触手でチョンチョンすると、電気ウナギもどきは大人しくなった。
「それじゃあ、まずルルさん、お願いします。」
僕がトップバッターとしてとルルさんを指名すると、彼女は一歩前に出て従魔たちを見渡した。
「タコさん、スライムさん、ウサギさん、ハチさん、クモさん、モロコシさん、クマさん、私はみんなと一緒にここに住みたい。そして毎日みんなと戦いたい。以上。」
ルルさんは自信満々の表情でそれだけ言うと、一歩下がった。
ルルさん、従魔ひとりひとりに声をかけたのはポイント高いですけど、やっぱり名前は覚えてないんですね。
むしろ毎日訓練受けてるディーくんの名前も今だに「クマさん」呼びというのはどうなんでしょう?
それに「モロコシさん」はないんじゃないかな。
コンちゃん、確かにトウモロコシっぽいけど。
あっ、だから「コーン」で「コンちゃん」にしたんだっけ?
うん、人のことは言えない。
反省。
あと、住みたい理由は、まあ、予想通りなので何も言いませんけど。
「では従魔たち、ルルさんがこの小屋に住むことに賛成の人は手を挙げて。」
僕が従魔たちにそう告げると、即座に従魔全員の手(前足・触手・蔓)が挙がった。
全会一致で可決。
ルルさんがガッツポーズをして、「どうだ」って感じで胸を張る。
まあ、順当な結論だろうな。
ルルさんには2階の部屋を専用室として使ってもらうことにしよう。
「では次に、リベルさん、お願いします。」
ルルさんに続いてリベルさんを指名すると、リベルさんはルルさんと同じように一歩前に出て、従魔たちに話し始めた。
「タコさん、スラちゃん、ウサくん、ハニちゃん、ラクちゃん、コンちゃん、ディーくん、ボクはみんなと一緒にここに住みたい。ここに居れば食べ物に困らないし、ゆっくり寝られるし、いっぱい遊べるし。ボクの居場所はここ以外にあり得ない。」
リベルさん・・・
従魔全員の名前を覚えているのはポイント高いと思うけど、住みたい理由はそれでいいのか?
まあ、欲望に忠実というか、裏表がないというか、正直でいいのかもしれないけど。
まあアピールは終わったみたいだから採決に進みますか。
「では従魔たち、リベルさんがこの小屋に住むことに賛成の人は手を挙げて。」
僕がそう言うと、しばらく間があいてからゆっくりと手(触手)が挙がった。
タコさん1人だけ。
他の従魔たちは沈黙したまま動かない。
つまり1対6で否決。
ちょっと予想外の結果だ。
リベルさん、従魔たちに嫌われてるんだろうか。
仲はいいと思ってたんだけどな。
「どうして・・・・・」
リベルさんはこの結果に、言葉に詰まって崩れ落ち、両膝と両手を床についてしまった。
涙が床を濡らしている気がする。
ちょっと可哀想かな。
なんかみんなでリベルさんをいじめてるみたいな絵になってるし。
そんなことを思っていると、
「リン(庭)!」
「庭ならいいかな〜」
「主、庭なら可。」
(((庭で)))
タコさん以外の従魔たちから、まさかの「庭ならOK」の意思表示。
これってどういうことだろう?
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