165.ルルさんも住むつもりのようです(居候問題)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(165)
【アマレパークス編・首都アマレ】
165.ルルさんも住むつもりのようです(居候問題)
「ウィン、それは何だ?」
「ウィンさん、何してるんですか?」
「ウィン、私の分は?」
ルルさんとリベルさんとリーたんが同時に質問してきた。
僕は聖徳太○じゃないけど、3人分の短い言葉なら同時でも聞き分けられる。
「ルルさん、これは僕の食事です。リベルさん、僕は僕の食事を食べてます。リーたん、君の分は君の両手にあるよね。」
僕がそう答えるとテーブルの向かい側に座っていたルルさんが一瞬で消えた。
そして・・・
「あっ、痛い、痛い。」
転移で僕の真後ろに現れたルルさんが僕にぐりぐり攻撃をしてきた。
「ウィン、それは何だ?」
「ルルさん、痛い。これは魚貝定食・・・痛い。」
そう答えてもルルさんはぐりぐりをやめない。
「定食とは何だ?」
「痛い、おかずと汁物とご飯物のセットです・・ルルさん、痛い。」
まだやめてくれない。
「もちろん私の分もあるんだろうな。」
「あります! あります! ルルさん、ほんとに痛いから。」
そこでようやくルルさんはぐりぐりをやめた。
そして一瞬で元の椅子に戻った。
ルルさん、『転移陣』、使いこなし過ぎじゃないですかね。
発動速度が早過ぎます。
「初めから素直にそう言えばいいんだ。」
「ウィンさん ボクの分もありますよね。」
「ウィン、私の分もあるよね。」
リベルさんとリーたんがルルさんに乗っかってきた。
2人とも期待に満ちた目で僕のことを見ている。
いや、素直にお願いされれば出してあげますけどね。
ただ毎食「賄いの人」扱いされるのがイヤなんで。
特にそこの食べることしか考えてない2人に。
そんな気持ちになりながらも、僕は3人の前に「魚貝定食」をセットしてあげた。
串焼きだけは、お皿から好きなものを取ってもらうことにして。
「もぐもぐ、ウィンさん、もぐもぐ、この『焼きおにぎり』、もぐもぐ、めちゃくちゃ美味しいですね。」
「もぐもぐ、ウィン、この三角のやつ、もぐもぐ、初めて食べるけど、もぐもぐ、何なの?」
2人とも、食べながらしゃべらない。
ルルさんを見習って黙って食べなさい。
「ウィン、おかわり。」
ルルさん、黙って食べてると思ったら、もう食べちゃったんですか?
串焼きならまだお皿の上に・・・焼きおにぎりとスープが欲しい?
分かりました。
出しましょう。
そのマリアージュ、最高ですもんね。
僕はみんなの食事のお世話をしつつ、自分の「魚貝定食」を食べ終わってからルルさんに話しかけた。
「ルルさん、そろそろ次の街に行こうと思います。」
「そうか。どこに行きたい?」
「とりあえず次は、シルワに行こうかと。」
「ふむ、ミエーレに会いに行くのか?」
「いえ、そういうわけでは・・・」
「まあ私はどこでもいい。ウィンの行くところについて行くだけだ。」
ルルさんはそう言ってから、味噌味の焼きおにぎりを齧り、すぐに魚貝のスープを口に含んだ。
ルルさん、さすがですね。
教えなくても、ベストの食べ方を会得してます。
「ウィンさん、ボクも行きます。森エルフの街ですよね。美味しいものあるかな?」
「ウィン、私も行く。森は初めて。楽しみ。」
この2人、もうコンビなのかな。
ていうか、リーたん、海から離れたらダメなんじゃないの?
せっかく「碧の海」の異変を解決したのに、海からいなくなったらまた魔物たちが集まって来たりしない?
「ルルさん、リーたんは『碧の海』にいないとまずくないですか?」
「なぜだ?」
「リーたんがいるから『碧の海』は守られているんじゃないんですか?」
「まあ、ちょっとくらい居なくても大丈夫だろう。」
ルルさん、それ根拠なく言ってますよね。
ルルさんからしたら、どうでもいいんでしょうけど。
「ウィン、たぶん、大丈夫。私の魔力はすぐには消えない。時々洞窟に戻ればいいだけ。」
リーたんはそう言うけど本当に大丈夫だろうか?
「それにね、海の大魔王が出た海域に魔物はもう来ないと思う。」
えっ、それどういうこと?
海の大魔王?
タコさん!?
「碧の海」が「大魔王の海」に認定されちゃったってこと?
「ウィン、海竜のリーたんがそう言ってるんだから大丈夫だ。それにまた異変が起こったら筋肉執事からすぐに連絡が来るだろう。」
そうか。
アマレの商人ギルドの裏庭に『小屋』を設置したからね。
問題が起これば、ギルド長のルカさんがすぐ郵便受けにメッセージを入れるだろうな。
それなら、多少リーたんが海を離れても問題ないか。
いざとなったら、大魔王タコさんを投入すればいいし。
「それならリーたんはまあ問題ないですね。あとはリベルさんをどうするかだけですね。」
僕がそう言うとすかさずルルさんが応じた。
「リベルは、アマレに放置だな。」
「ルル、ひどい。ウィンさん、ボクも行きます。」
「リベル、どうやって一緒に来るんだ? 私は転移でシルワに行く。ウィンはリーたんと一緒に転移する。お前は歩いてくるのか?」
「ええっ、ボクも転移で連れて行ってください。」
「私は自分1人しか転移できない。ウィンは1人しか連れて行けない。つまり、リベルの枠はない。」
ルルさんがリベルさんをいじめて遊んでる。
本当は方法はいくつかある。
僕がシルワに転移してそこに『小屋』を設置し、使用許可を出せば誰でもシルワに行けるし、僕が1人ずつ転移で運ぶこともできる。
ルルさんも分かっていてリベルさんを揶揄ってるんだろう。
「そんなぁ〜。ボク1人だけシルワまで歩くなんて。お腹が空いて倒れてしまう〜。」
リベルさんが頭を抱えてしまった。
でもリベルさん、一応元勇者ですよね。
それくらいのことでメゲる勇者って大丈夫なのかな。
まあ、その前に僕の能力についての情報は十分知ってるはずなのに、解決策を思いつかないとか。
それで勇者って務まるんですか?
「あっ、ウィンさん、問題解決です。ボク、この小屋に住むって決めたんで、向こうに着いたら小屋を作って下さい。これでボクもシルワに行けます。」
さすがにリベルさんも解決策に気づいたようだ。
ただそこにはまだ問題点がある。
ひとつは、この小屋に住むことをまだ許可していないということ。
もうひとつは、シルワに設置する小屋の扉の使用許可をまだ出していないということ。
「リベル、何を寝ぼけたことを言っている。この小屋に住むのは私とウィンだけだ。」
ルルさんがリベルさんの居候案を却下した。
あれっ、でも妙な別情報がくっついている気がする。
ルルさん、ここに住むつもり?
それもまだ許可してないですけど。
「ルルさん、ここに住むんですか?」
「ウィン、当然だ。ずっと一緒にいるためには、一緒に住むのが合理的だ。それに転移でどこにでも行けるし、空間収納で荷物の心配もない。他の場所に住む意味がない。」
ルルさんが明快に小屋に住む理由を提示した。
確かに論理的に間違ってはいない。
ただ前提となる「ずっと一緒にいるため」の部分に合意した覚えはないんだけど。
ルルさんとリベルさんの居候要請を却下することは簡単だ。
僕が禁止すれば2人とも『小屋』の中に入れないのだから。
でも同じ話を何度も繰り返すより、ここで決めてしまった方がいいだろう。
2人が反論しにくい方法で。
「分かりました。ルルさんとリベルさんがこの小屋に住んでもいいか投票で決めたいと思います。」
「ウィンさん、投票ってどうするんですか?」
「ウィン、この4人で決めるのか?」
僕がルルさんとリベルさんに対する居住許可を多数決で決めることを宣言すると、2人からその方法について質問が来た。
現在、『小屋』の中にはリーたんを含め4人しかいない。
でも投票するのはこの4人じゃない。
「投票するのはもちろん、従魔たちです。みんな来て!」
僕が召喚の言葉を叫ぶと、光の粒子と共に7人の従魔たちが『小屋』の中に顕現した。
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