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164.串焼き争奪戦(魚貝定食もあります)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(164)

【アマレパークス編・首都アマレ】  



164.串焼き争奪戦(魚貝定食もあります)



「ウィン、これ、焼いてくれ。」


そう言いながらルルさんは、串に刺しただけでまだ調理していない串焼きを大量に僕に渡してきた。

その言葉を聞いて、リベルさんとリーたんが僕の前にやって来て、犬のように並んでお座りをする。

舌を出して尻尾を振る犬の幻影が見える。

あっ、リーたん、人型なのに尻尾が出ちゃってるよ。

しかも激しく左右に振られてるし。


現在僕たちは『小屋』の中にいる。

僕たちというのは、僕、ルルさん、リベルさん、リーたん。


従魔たちは素材&食材集めに出かけたらしい。

ついでに『庭』に必要なものも集めてくるそうだ。

『庭』に必要なものって、いったい何だろう?


ジャコモさん、シルフィさん、ルカさんもここにいない。

彼らもそれぞれ仕事があるので、僕のことにばかり構ってはいられないのだろう。

ジャコモさんはちょっと怪しいけど。


あの後、ルルさんはほぼ全ての屋台を回って食べ物を買いまくった。

あんまり買い占めたら港で宴会してる人たちの分がなくなるんじゃないかと心配したけど、その辺は屋台の人たちもしたたかなもので、状況を見て食材の追加に走ったようだった。


僕はルルさんに付いて回りながらお酒の屋台を見つけると、樽買い可能なものだけ買って空間収納に入れた。

結果的に森エルフの花酒とコロンバールの白ワインと南の群島のラームと常温で飲むエールが手に入った。

エールは特に特産品ということでもなく、どの国でもある程度作られているらしい。


「料理。」


僕はダイニングテーブルの上に置かれた串焼きの元(調理前の串焼き)に向かって、『料理クエスト』を発動した。

次の瞬間、全ての串焼きの元が炎に包まれ、焼きたての串焼きがお皿に載って現れた。


「ウィン、なぜ串焼きが皿に載っている? 皿はなかったと思うが。」

「なぜでしょうね。まあ、そういう魔法ということで。」


ルルさんが目ざとくお皿に気づいた。

『水クエスト』でコップが一緒に出るのも不思議だが、『料理クエスト』でお皿が一緒に出るのも変だよね。

でも理由を聞かれても初めからそういうものだから仕方がない。


出来立ての串焼きからはいい香りが漂ってくる。

魚醤の匂いとはちょっと違う気がする。

これはもしかして・・・

僕はサンマーレの串焼きを1本手に取り、かじってみた。

あっ、やっぱり、これ醤油だ。


「ウィンさん、ずるい! 1人だけ先に食べた!」

「ウィン、これはいじめなの? 海竜に対するいじめなの?」


ちょっと味見しただけなのに、何なんでしょうねこの「串焼き同好会」の2人は。

根に持たれそうなのでさっさとあげてしまおう。


「はい、とりあえず3本ずつね。」


僕はそう言いながら、串焼きを3本ずつリベルさんとリーたんに渡した。

受け取った途端に笑顔になって齧り付く2人。

ほぼ動きがシンクロしてる。


「魚醤と少し違う味付けだけど大丈夫かな?」


僕がそう声をかけると床に座ったまま串焼きをもぐもぐしている二人は、大きく顔を上下させた。

大丈夫、もしくは美味しいという意味だろう。


「2人とも、椅子に座って食べれば。テーブルの上にまだいっぱいあるから、好きなだけ食べていいよ。」


そう促すと、2人は一瞬モグモグを止め、目を大きく見開いた。

どうしたんだろうと思って見ていると、2人の瞳からポロポロと涙が溢れ出した。

何?

突然どうしたの?


「うぐっ・・・ウィンさん・・・ボク、一生ウィンさんについて行きます。」

「ヒック・・・私も・・・ウィンとずっと一緒にいる。」


2人とも、串焼き渡したくらいで大袈裟過ぎ。

そんなことでそこまで言われても、あんまり嬉しくないです。


「ちょっと待て。」


そんな3人のやり取りにルルさんが割って入ってきた。


「その串焼きを買ってきたのは私だぞ。それにこの世界が終わるまでウィンと一緒にいるのは私だ。ダメ勇者でも、ダメ海竜でもない!」

「ルル、うるさい。ルルは料理できないから必要ない。」

「私、ダメ海竜じゃないもん。美味しいもの作れない人はいらないし。」


うわぁ、ものすごくどうでもいいことで3人が言い争いを始めた。

リベルさんとリーたんはルルさんに言い返しながらも、ちゃんと椅子に座って、お皿の上の串焼きに手を伸ばしてる。

2人とも、もう串焼き3本食べちゃったのか。

リーたん、よく噛んで食べないとダメだよ。

リベルさんはどうでもいいけど。


「お前たち、文句があるなら表へ出ろ。2人まとめて相手になってやる。」

「ルル、いつでも受けて立つよ。串焼き食べてからね。」

「ルル、いつでも受けて立つわ。海の中限定でね。」


もう3人とも決闘でも何でもしに行ってくれないかな。

殺し合いまではしないだろうし。

でも、気のせいかリーたんがちょっとリベルさん化してるような。

仲がいいのはいいけど、影響を受けすぎるのは良くない。

特にリベルさんからは。


「よし分かった。串焼きがなくなったら決闘だ。」


ルルさんはそう言うと、お皿の上から串焼きを3本取った。


「ルル、卑怯だぞ。串焼きは1本ずつがルールだ。」

「そうよルル。一度に3本は反則だわ。」


リベルさん、リーたん。

両手に2本ずつ串焼きを持ったままで、そんなこと言っても説得力は皆無だと思います。

でも3人とも美味しそうに串焼きを食べてるので僕も食べたくなってきた。


僕は空いている椅子に座り、空間収納から自作のお皿を出し、その上に屋台で買った串焼きを3本置いた。

ウナギーレとハマグリラとイカラだ。

さらに魚貝たっぷりスープを出してその横に設置。

最後に『おにぎりクエスト』でおにぎりを2つだし、『料理クエスト』でその2つを焼きおにぎりにした。

醤油焼きではなく味噌焼きのもの。

これで即席の魚貝定食の出来上がり。


「いただきます。」


僕は両手を合わせてそう言った後、自分用の食事を食べ始めた。

うん、美味しい。

やっぱり、焼き物に汁物にご飯は最高だね。

特にこの味噌焼きおにぎり、表面が香ばしくて中はふんわりで、焼き物にもスープにもピッタリと相性がいい。


そんなことを思いながら上機嫌で黙々と食べていると、周囲がとても静かになっていることに気づいた。

恐る恐る視線を上げると、ルルさんとリベルさんとリーたんが、串焼きを食べるのをやめて、僕の魚貝定食をガン見していた。


いや、あげないよ。

これ僕のだからね。

みんな自分の串焼き、食べればいいじゃん。

絶対、あげないからね。



読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は9月15日(金)です。

よろしくお願いします。

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