162.格闘士ギルドがあるそうです(人物鑑定:使用禁止ワード)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(162)
【アマレパークス編・首都アマレ】
162.格闘士ギルドがあるそうです(人物鑑定:使用禁止ワード)
…るる殿が登録可能なぎるどは・・・…
登録可能なギルドは?
…ずばり、『格闘士ぎるど』でござる…
『格闘士ギルド』?
何それ?
聞いたことないんですけど。
まあ、まだ知らないギルド、いっぱいあるんだろうけど。
…格闘士とは、格闘場の観客の前で戦闘試合を行う職業でござる。観客は格闘士の勝敗にお金を賭けることができるでござる…
ああ、そういうやつね。
民衆の娯楽というか、興行として試合を観せる格闘技系の仕事。
前の世界のプロレスとか相撲とか、そういうものにギャンブルが付随してる感じかな。
まさか、殺し合いじゃないよね?
…規則上、命のやり取りは禁止でござる…
そうだよな。
そうじゃないと『聖女』は登録できなさそうだし。
でも、その『格闘士ギルド』って、どこにあるの?
格闘場もまだ観たことないんだけど。
…この国、アマレパークスにはないでござる。統治者のエルフ族が好まぬ故。コロンバールには、コロンの郊外にあるでござる。ただ格闘の本場は、アンソロという国でござる…
アンソロ?
それはどこにあるの?
…ここから海岸沿いに北西に行ったところでござる。統治者は獣人族でござる…
獣人族の国、アンソロか。
行先候補に追加しておくけど、今すぐ行くわけにも行かないな。
まだアマレパークスの他の街にも行きたいしね。
格闘場がここにないのは分かったけど、格闘士ギルドもないの?
…残念ながらないでござる。格闘士ギルドは基本的に格闘場に併設されております故…
そうなのか。
だとすると、ルルさんが格闘士ギルドに登録するためには、アンソロに行くか、コロンバールに戻るかだな。
一度コロンの街に戻ろうかな。
ジャコモさんとの約束もあるし。
忘れないうちにコロンの商人ギルドに『小屋』を設置しに行かないとね。
僕は閉じていた目を開いて、腕組みを解いた。
目の前では、ルルさんとミエーレさんが僕の顔を覗き込んでいた。
「ウィン、ようやく自分の世界から帰ってきたか。今回は長かったので少し心配したぞ。」
「ウィンさん、大丈夫ですか?」
ルルさんは普通の表情で、ミエーレさんは心配そうな顔でそう言った。
「ミエーレさん、大丈夫ですよ。ルルさん、ルルさんが登録できそうなギルドが分かりました。」
「何! さすがウィンだ。心の友が教えてくれたのか?」
はい、その通りですが、他の人の前で「心の友」とか言うの、やめてもらえませんか。
ミエーレさんが変な目で僕を見てるじゃないですか。
「ルルさん、格闘士ギルドって知ってます。」
「もちろん知っているが・・・そうかその手があったか。真剣勝負以外に興味がなかったので眼中になかったが、それなら私でも登録できるな。」
ルルさん、「真剣勝負」のところが副音声で「殺し合い」と聞こえてきましたが、気のせいですよね。
訓練は大好きでも、競技としての試合とかは趣味の範囲外なんですね。
でも空間収納獲得のためなら、格闘士ギルドに登録しても構わないと。
確かに空間収納、便利ですもんね。
持ち物全部放り込むだけでいいし、取り出したいものは念じるだけで出せますからね。
整理整頓が苦手なルルさんにはぴったりですね。
「ウィン、また良からぬことを考えているな。」
「そんなことないです。空間収納はルルさんには必要不可欠だなと。マジックバッグを持たなくても、武器とか入れ放題ですからね。」
またルルさんに心の中を読まれたので、慎重に答えを返しておいた。
嘘は言ってません。
でもやっぱり言葉が棒読みになるのはなぜでしょう。
「ふん、まあそういうことにしておいてやろう。ところでミエーレ、この国には確か格闘士ギルドはなかったな?」
「はい、ルル様。アマレパークスには格闘場がありませんので、格闘士ギルドもありません。」
「となると、一度コロンに戻るか。」
ルルさんがそうつぶやいた。
コロンで格闘士ギルドに登録する、それがルルさんの判断のようだ。
「じゃあコロンに戻りますか?」
「ウィンは必要ない。ここで待っててくれればいい。」
「?」
「私がひとりで転移して登録して戻ればいいだけだ。じゃあ、行ってくる。」
そう言い残すと、一瞬でルルさんの姿が消えた。
そうだった。
ルルさん、自分で転移できるんだった。
それにしても、もう躊躇なく『転移陣』を使いこなしているあたり、やはり『聖女』と呼ばれるだけの人なんだよな。
普段は、そんな風に見えないけど。
「ウィンさん、ルル様、行っちゃいましたね。」
「そうですね。1人で転移できるようになったので、活動範囲が滅茶苦茶広くなりそうで・・・ちょっと面倒になりそうな予感が・・・」
そう言いながら渋い顔をしているとミエーレさんがクスクス笑いながら僕の顔を見た。
「面白いですか?」
「はい、というより羨ましいです。お二人がとても仲が良さそうで。それに私はアマレパークスの外に行ったことがないので、自由自在に世界を飛び回れるなんて憧れます。」
「シルワの森のエルフ族はあまり外に出ないんですか?」
「いえ、そういう訳でもないんですけど、私はまだ経験が足りないので国外へは行かせてもらえません。」
そういうことか。
ということは、ミエーレさん、エルフ族だけど見た目通りに若いのかもしれない。
いやもしかすると、エルフ族だと100歳くらいにならないと国外に出られないとか。
いや、そんなことはないな。
メルさん、30歳でポルトの冒険者ギルドの支部長してたし。
ポルトはコロンバールなので国外だ。
あっでも、メルさんが元々、コロンバールの生まれって可能性もあるのか。
「ミエーレさん、失礼ですが人物鑑定をかけても構いませんか?」
いろいろ考えていても答えが出ないので、僕は深く考えずにそう尋ねた。
するとミエーレさんはびっくりした表情をして、すぐに顔が真っ赤に染まった。
「ウィンさん、いきなりそれは・・・ちょっと・・・」
「あっ、すみません。やっぱり失礼でしたよね。ちょっとその辺の常識に疎いもので・・・すみません。」
僕がすぐに謝ると、ミエーレさんは再度驚いた顔をして、ひとつ溜息をついてから言葉を続けた。
「ウィンさん、若い女性に面と向かって、鑑定をかけていいですかと訊かない方がいいです。」
「やっぱりとても失礼なことでした?」
「違います。」
「違う?」
「それは・・・ある意味・・・告白になるので。」
え〜っ、そうなの?
そんなこと誰も教えてくれなかったんですけど。
でもそもそも人物鑑定できる人って少ないはずだよね。
そんなレアな告白方法とかあるの?
「実際に鑑定できるかどうかは関係ないんです。」
不思議そうな顔をしている僕に向かって、ミエーレさんが言った。
「それはどういう・・・」
「そのセリフは、『あなたのすべてを知りたい』という意味になるんです。」
な、な、なるほど。
そんな意味とは知らずにミエーレさんに言ってしまった自分も恥ずかしいけど・・・。
「君を鑑定してもいいかな(=君の全てを知りたい)」
うわぁ〜なにその言い回し。
誰が考えたの?
きっと14歳くらいの人だよね。
あっ、いけない。
この世界の言い回しをディスる権利は僕にはない。
とりあえず心のメモ帳に太字で書いておこう。
この台詞、使用禁止と。
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