表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/333

162.格闘士ギルドがあるそうです(人物鑑定:使用禁止ワード)

見つけて頂いてありがとうございます。


第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)


主人公が世界樹のアマレパークスで様々な出来事に遭遇するお話です。

仲間として戦闘狂の聖女ルルに続いてエルフの元勇者リベルが加わります。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第三章 世界樹の国と元勇者(162)

【アマレパークス編・首都アマレ】   



162.格闘士ギルドがあるそうです(人物鑑定:使用禁止ワード)



…るる殿が登録可能なぎるどは・・・…


登録可能なギルドは?


…ずばり、『格闘士ぎるど』でござる…


『格闘士ギルド』?

何それ?

聞いたことないんですけど。

まあ、まだ知らないギルド、いっぱいあるんだろうけど。


…格闘士とは、格闘場の観客の前で戦闘試合を行う職業でござる。観客は格闘士の勝敗にお金を賭けることができるでござる…


ああ、そういうやつね。

民衆の娯楽というか、興行として試合を観せる格闘技系の仕事。

前の世界のプロレスとか相撲とか、そういうものにギャンブルが付随してる感じかな。

まさか、殺し合いじゃないよね?


…規則上、命のやり取りは禁止でござる…


そうだよな。

そうじゃないと『聖女』は登録できなさそうだし。

でも、その『格闘士ギルド』って、どこにあるの?

格闘場もまだ観たことないんだけど。


…この国、アマレパークスにはないでござる。統治者のエルフ族が好まぬ故。コロンバールには、コロンの郊外にあるでござる。ただ格闘の本場は、アンソロという国でござる…


アンソロ?

それはどこにあるの?


…ここから海岸沿いに北西に行ったところでござる。統治者は獣人族でござる…


獣人族の国、アンソロか。

行先候補に追加しておくけど、今すぐ行くわけにも行かないな。

まだアマレパークスの他の街にも行きたいしね。

格闘場がここにないのは分かったけど、格闘士ギルドもないの?


…残念ながらないでござる。格闘士ギルドは基本的に格闘場に併設されております故…


そうなのか。

だとすると、ルルさんが格闘士ギルドに登録するためには、アンソロに行くか、コロンバールに戻るかだな。

一度コロンの街に戻ろうかな。

ジャコモさんとの約束もあるし。

忘れないうちにコロンの商人ギルドに『小屋』を設置しに行かないとね。



僕は閉じていた目を開いて、腕組みを解いた。

目の前では、ルルさんとミエーレさんが僕の顔を覗き込んでいた。


「ウィン、ようやく自分の世界から帰ってきたか。今回は長かったので少し心配したぞ。」

「ウィンさん、大丈夫ですか?」


ルルさんは普通の表情で、ミエーレさんは心配そうな顔でそう言った。


「ミエーレさん、大丈夫ですよ。ルルさん、ルルさんが登録できそうなギルドが分かりました。」

「何! さすがウィンだ。心の友が教えてくれたのか?」


はい、その通りですが、他の人の前で「心の友」とか言うの、やめてもらえませんか。

ミエーレさんが変な目で僕を見てるじゃないですか。


「ルルさん、格闘士ギルドって知ってます。」

「もちろん知っているが・・・そうかその手があったか。真剣勝負以外に興味がなかったので眼中になかったが、それなら私でも登録できるな。」


ルルさん、「真剣勝負」のところが副音声で「殺し合い」と聞こえてきましたが、気のせいですよね。

訓練は大好きでも、競技としての試合とかは趣味の範囲外なんですね。

でも空間収納獲得のためなら、格闘士ギルドに登録しても構わないと。

確かに空間収納、便利ですもんね。

持ち物全部放り込むだけでいいし、取り出したいものは念じるだけで出せますからね。

整理整頓が苦手なルルさんにはぴったりですね。


「ウィン、また良からぬことを考えているな。」

「そんなことないです。空間収納はルルさんには必要不可欠だなと。マジックバッグを持たなくても、武器とか入れ放題ですからね。」


またルルさんに心の中を読まれたので、慎重に答えを返しておいた。

嘘は言ってません。

でもやっぱり言葉が棒読みになるのはなぜでしょう。


「ふん、まあそういうことにしておいてやろう。ところでミエーレ、この国には確か格闘士ギルドはなかったな?」

「はい、ルル様。アマレパークスには格闘場がありませんので、格闘士ギルドもありません。」

「となると、一度コロンに戻るか。」


ルルさんがそうつぶやいた。

コロンで格闘士ギルドに登録する、それがルルさんの判断のようだ。


「じゃあコロンに戻りますか?」

「ウィンは必要ない。ここで待っててくれればいい。」

「?」

「私がひとりで転移して登録して戻ればいいだけだ。じゃあ、行ってくる。」


そう言い残すと、一瞬でルルさんの姿が消えた。

そうだった。

ルルさん、自分で転移できるんだった。

それにしても、もう躊躇なく『転移陣』を使いこなしているあたり、やはり『聖女』と呼ばれるだけの人なんだよな。

普段は、そんな風に見えないけど。


「ウィンさん、ルル様、行っちゃいましたね。」

「そうですね。1人で転移できるようになったので、活動範囲が滅茶苦茶広くなりそうで・・・ちょっと面倒になりそうな予感が・・・」


そう言いながら渋い顔をしているとミエーレさんがクスクス笑いながら僕の顔を見た。


「面白いですか?」

「はい、というより羨ましいです。お二人がとても仲が良さそうで。それに私はアマレパークスの外に行ったことがないので、自由自在に世界を飛び回れるなんて憧れます。」

「シルワの森のエルフ族はあまり外に出ないんですか?」

「いえ、そういう訳でもないんですけど、私はまだ経験が足りないので国外へは行かせてもらえません。」


そういうことか。

ということは、ミエーレさん、エルフ族だけど見た目通りに若いのかもしれない。

いやもしかすると、エルフ族だと100歳くらいにならないと国外に出られないとか。

いや、そんなことはないな。

メルさん、30歳でポルトの冒険者ギルドの支部長してたし。

ポルトはコロンバールなので国外だ。

あっでも、メルさんが元々、コロンバールの生まれって可能性もあるのか。


「ミエーレさん、失礼ですが人物鑑定をかけても構いませんか?」


いろいろ考えていても答えが出ないので、僕は深く考えずにそう尋ねた。

するとミエーレさんはびっくりした表情をして、すぐに顔が真っ赤に染まった。


「ウィンさん、いきなりそれは・・・ちょっと・・・」

「あっ、すみません。やっぱり失礼でしたよね。ちょっとその辺の常識に疎いもので・・・すみません。」


僕がすぐに謝ると、ミエーレさんは再度驚いた顔をして、ひとつ溜息をついてから言葉を続けた。


「ウィンさん、若い女性に面と向かって、鑑定をかけていいですかと訊かない方がいいです。」

「やっぱりとても失礼なことでした?」

「違います。」

「違う?」

「それは・・・ある意味・・・告白になるので。」


え〜っ、そうなの?

そんなこと誰も教えてくれなかったんですけど。

でもそもそも人物鑑定できる人って少ないはずだよね。

そんなレアな告白方法とかあるの?


「実際に鑑定できるかどうかは関係ないんです。」


不思議そうな顔をしている僕に向かって、ミエーレさんが言った。


「それはどういう・・・」

「そのセリフは、『あなたのすべてを知りたい』という意味になるんです。」


な、な、なるほど。

そんな意味とは知らずにミエーレさんに言ってしまった自分も恥ずかしいけど・・・。


「君を鑑定してもいいかな(=君の全てを知りたい)」


うわぁ〜なにその言い回し。

誰が考えたの?

きっと14歳くらいの人だよね。

あっ、いけない。

この世界の言い回しをディスる権利は僕にはない。

とりあえず心のメモ帳に太字で書いておこう。

この台詞、使用禁止と。



読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は9月11日(月)です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ