16.さらに燃やします(クエスト:ALCHEMY)
見つけて頂いてありがとうございます。
『第一章 はじまりの島』は序章(準備編)です。
全41話を毎日投稿します。
よろしくお願いします。
第一章 はじまりの島(16)
16. さらに燃やします(クエスト:ALCHEMY)
○クエスト : 氷で冷やしたい
報酬 : 氷(一貫)
達成目標 : 反復横跳び(30秒)
(30秒間って、反復横跳びにはちょっと長いんじゃないかな。)
5回連続で「氷」クエストに挑戦してみての正直な感想。
真っ直ぐ走るのとは違った疲れが足にくる。
体感では30秒は測りにくいので、目の前に氷が出現するまで反復横跳びを続け、それを5回繰り返した。
椅子に座ってしばらく休憩。
オープン・キッチンのシンクには、直方体の氷が5つ積まれている。
最初にクエストの表示を見た時、一貫という言葉にピンと来なかったけど、実物を見て思い出した。
氷屋さんがお店に配達する直方体のアレだ。
確か重さは1個3.75kgだったはず。
10個で37.5kg、100個で375kg。
100個出したら床が抜けそうだな。
休憩後、さらに5回のクエストに挑戦。
30秒間の反復横跳びを5回。
ダッシュの時と同じで、最初より段々体の動きが軽くなってくる。
身体能力の伸びを実感できるのというのは、とても気分がいい。
合計10回のクエストが終わり、視界の中の表示が変化したので確認してみた。
○クエスト : ICE
報酬 : 氷(1貫)
達成目標 : NO NEED
「水」や「炎」のクエストと同じで「氷」のクエストも10回達成で表示が変わるようだ。
達成目標が「NO NEED」になっている。
これでいつでも念じるだけで氷を出せる。
すぐに100回達成を目指しても良かったんだけど、375kgの氷をどうしたらいいのか思いつかなかったので、先送りすることにした。
(冷蔵庫を試してみよう。)
キッチンのシンクに積み上げられた氷を、冷蔵庫(のような箱)の下段の引き出しに入れていく。
この冷蔵庫(のような箱)、かなり大きいんだけど、さすがに10個の氷全部は入らなかった。
8個が限界だった。
下段の引き出しを閉じてしばらく待つ。
冷気が伝わるにしても多少の時間はかかるからね。
体感で5分くらい経ったところで上段の扉を開くと、すぐに中から冷気が溢れてきた。
(うん、これなら大丈夫そう。)
とりあえず冷蔵庫は機能しそうだ。
何を入れるかすぐには思いつかなかったので、グラス入りの水を4つ出して入れておくことにした。
うまくいけば冷たい水が飲める。
リビングの椅子に座ってしばらく休憩する。
反復横跳びの疲労は特に無いけど、精神的なリセットは必要だからね。
誰もいないリビングで一人、部屋の中を見回していると、取り止めもなく思いが浮かんできた。
(もう少し窓を大きくしたいなぁ。
そのほうが景色がよく見えるし、昼間は明るいしね。
床も何か別の素材にできないかな。
あっ、天井に大きな扇風機みたいなやつ欲しい。
ゆっくり空気が動いて気持ちいいんだよね。
大きなソファーも欲しいな。
ゆったりくつろげるくらいのやつね。
タコさんたちも来るから2つかな。
タコさんたちといえば、ダイニングテーブル用の椅子も欲しい。
普通のじゃ使い勝手が悪いから子供用のだね。
とりあえず3つね。)
もちろん、あっという間に「HOME系」クエストが8個表示された。
細かい改装にも対応してくれるのは素直に素晴らしいと思う。
結局午前中だけで、反復横跳び10セットにダッシュ130本。
足腰が飛躍的に鍛えられました。
* * * * *
そして昼下がりに至る。
タコさんは2本の足を合わせて、“お願い“ のポーズ。
(“ごちそうさま“ と見分けがつかないけど)
ウサくんはお腹を見せて、“服従” のポーズ。
スラちゃんはよく分からないけど、床にベチャっとつぶれている。
いずれにしても、お昼ごはんの催促だろう。
タコさんの前にはアゴー・フライとサーベル・ヘッドと色とりどりの魚たち。
君、どんだけ張り切って漁師してきたの?
ウサくんの前には朝も持ってきたキャベツ・ニンジン・ピーマンの他に、トマトとキュウリが積まれている。
君、どこかに畑持ってるよね?
そしてスラちゃんの前にはたくさんの鉱石類、明らかに種類はバラバラ。
君は、そのうち採掘の特技が生えるんじゃないかな?
(仕方ないか。それほど手間でもないしね。)
全ての食材(ベルちゃんの鉱石含む)をキッチンに運ぶ。
「COOK」には炎を使うので、念のためシンクの中でやろう。
まず、色とりどりの魚たちをシンクに入れる。
○コーラル・ジュエル ☆☆
体型 : 小型
体色 : 赤・青・黄・オレンジ・紫等。
食性 : 雑食(珊瑚・クラゲ・ナマコ・ウミウシ・貝類等)
生息地: 浅い海の岩礁、珊瑚礁にいる。
特徴 : 周辺が暗いと光る。
ヒレの先に毒がある。
可食。(少しピリッとするかも。)
特技 : 発光・弱毒
弱毒なのに可食?
暗いと発光?
普通の魚に見えるけど、やっぱり魔物のようだ。
1体ずつ別々に処理しようかと思ったけど、面倒なのでまとめてやってしまおう。
ついでにアゴーとサーベルも一緒にしちゃおう。
魚系の魔物を全てシンクの中に入れて「COOK」を発動する。
炎が燃え上がり、3秒ほどで消える。
そしてそのあとには、お刺身の盛り合わせが置かれていた。
炎の意味は?
ツッコミを入れても答えは返って来ないので、そのまま「COOK」を続けることにする。
ウサくんの野菜たちは野菜サラダに、スラちゃんの鉱石たちは複数のインゴットになった。
疑問はあるけど深くは考えない。
食材を「COOK」すると料理ができる。
そこだけ理解しておこう。
料理ができたのでリビングの方を見ると、タコさんとウサくんとスラちゃんは、大きなソファの上でくつろいでいた。
ちょっとムカつく。
テーブルにお皿を並べると、それぞれソファから降りて、午前中に用意した子供用の椅子に飛び乗る。
椅子の上からこちらをじっと見つめてくるので、
「食べていいよ。」
と声に出して伝えると、テーブルの上に移動してそれぞれのランチを食べ始める。
念のためにおにぎりと水も出しておく。
テーブルに乗るのは行儀悪いけど、サイズ的にしょうがないよね。
誰にともなく言い訳してみる。
* * * * *
食後は外に出て遊ぶことにする。
昼ごはんは、少しずつ分けてもらった(インゴットは除く)。
タコさんとスラちゃんは、「水バシャン」の後にダッシュというのを繰り返している。
“一緒にやろうよ“ 的な身振りをしてるけど、午前中に充分走ったので参加しない。
ウサくんは、足元で口をむにゃむにゃしてる。
よく見ると寝てるかも。
しばらくするとダッシュに飽きたのだろう、タコさんとスラちゃんは浜辺で砂遊びを始めた。
濡れた砂をこねこねしている。
(そういえば、彼らはもう成体なんだろうか? 行動だけ見てると子供みたいなんだけど。)
鑑定表示には「幼体」とは出てなかったので、これで「成体」なのだろう。
見た目は小さいけど、「体型」が「小型」となってるので小さいのが標準かもしれないし。
そんなことを考えていると、“こっちへ来て“ とタコさんが足招きしてきた。
タコさんとスラちゃんのところまで歩いていくと、そこには拳の大きさの砂団子が4つ置かれていた。
「どうしたの?」
そう訊いてみると、タコさんは足を曲げてその砂団子をビシッと指した。
これは「おにぎり焼いて」の時と同じ仕草。
(まさか、これを焼くとおにぎりになるとか?)
タコさんとスラちゃんのほうを見ると、二人とも何やらうなずいている。
まさかそれはないよねと思いながらも、半信半疑で砂団子を指差して「炎」とつぶやく。
砂団子4つが燃え上がり、炎に包まれて見えなくなる。
明らかにいつもの「COOK」の時よりも長く燃え続けている。
体感で10秒くらい経った頃、目の前の炎が小さくなって消えた。
そしてその後には丸くて透明なものが4つ出現していた。
○クエスト : FIRE++ (ALCHEMY)
報酬 : 錬金
達成目標 : 火を入れろ
視界の中には、「COOK」ではなく「錬金(ARCHEMY)」と表示されていた。
読んで頂いてありがとうございます。
次回投稿は明日です。
よろしくお願いします。




