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15.快適さを追求します(クエスト:ICE)

見つけて頂いてありがとうございます。

『第一章 はじまりの島』は序章(準備編)です。

全41話を毎日投稿します。

よろしくお願いします。

第一章 はじまりの島(15)



15. 快適さを追求します(クエスト:ICE)



「君たちの専属の料理人じゃないんだけど。」


タコさんとウサくんとスラちゃんは、それぞれが集めてきた食材を自分の前に置いて、きちんと並んで座っている。


かなり広くなったリビングの綺麗な御影石の床の上。

3人の真剣な目がこちらを見つめてくる。


大きく切り取られたガラス製の窓の向こうには、少し白波が立ち始めた海が見える。

そんな昼下がり。



   *   *   *   *   *



話を朝に戻そう。


タコさん、ウサくん、スラちゃんは、それぞれに朝食を食べ終えると、急ぎの仕事を思い出したかのように、そそくさと小屋から立ち去った。


タコさんは、たくさんの足を使って炒飯をかきこみ、2本の足を合わせて「ごちそうさま」をした後、全速力で海へ走っていった。


ウサくんは、野菜炒めをひたすらモグモグし、食べ尽くすと同時に影潜りで消えた。


スラちゃんは、初めのうちは金属のインゴットにペタペタ触れていたけど、タコさんとウサくんがいなくなると慌ててインゴットを体に取り込み、そのまま岩場の方へ去っていった。


朝から慌ただしくやって来た訪問者たちは、食べるだけ食べていなくなった。

食材自体は本人たちの持ち込みだったので、そこまで責める気は無いけどね。


まだまだ検証することはあるし、しなきゃいけないってことは分かっているけど「燃やす」こと、「焼く」ことに、ちょっと飽きてしまった。

気分を変えて別のことに取り組もうと思う。


目の前には、小さな小屋。

外見は初めからまったく変わらない。

内部にいると窓があるのに、外から見ると扉以外何もない。

中の広さは2倍になったのに、外から見た大きさは元のまま。


不思議な建物だけど、改変できることは判明した。

快適な住環境を整えることはとても大切。

体力が許す限り、ダッシュしてみたいと思います。

身体能力向上も兼ねてね。


ということで、「HOME系」クエストに挑戦。

まずは、部屋数を増やそう。


寝室が欲しい。

走る。

キッチンが欲しい。

走る。

倉庫が欲しい。

走る。

浴室が欲しい。

走る。

トイレが欲しい。

走る。


クエストは順調に進んでいった。

達成目標はすべて「5秒間ダッシュ×10」。

合計で「HOME系」クエストを10回達成したけど、「NO NEED」の表示は出なかった。


報酬の内容が多岐に渡るので単純に10回ではダメなのか。

もしくは快適な住環境のためには走り続けなければいけないのか。

「中のヒト」の性格を考えると、後者のような気がする。


最初は少し苦労したダッシュも、50本程度ならかなり楽にこなせるようになってきた。

むしろまだまだいけそうな感じ。

体力は間違いなく向上している、というか向上速度が早過ぎる。


もう少し部屋を増やそうかと思ったけど、休憩を兼ねて一度小屋に戻ることにした。  


小屋の中を確認すると、右側の壁にオープンキッチンが追加され、正面と左側の壁に扉が2つずつ増えていた。


キッチンを軽く覗いてから他の部屋をチェックする。

正面右側の扉が倉庫、正面左側の扉が寝室、左の壁の奥の扉が浴室、手前の扉がトイレになっていた。


どの部屋もかなりの広さがあり、スペース的な整合性はまったくとれていない。

扉から先は、それぞれ別の空間って感じ。

でもそこはもう気にしない。

気にしてもしょうがないし。

ただ機能については若干戸惑った。


例えば浴室の場合。

中に入ると大きめの浴槽と洗面台が初めから設置されていた。

部屋をクエストで出すと基本設備はセットになってるのかもしれない。

ただ水を出すための蛇口はどこにも見当たらなかった。

まあこの島に水道はなさそうだし当たり前か。


そこでふと考える。


(これどうやって使えばいいの?)


でも疑問を抱いたのは一瞬だけだった。


(クエストを使えばいいのか。)


「水」と「炎」のクエストを利用すればいい。

水が必要な時はクエストで水を出せばいいし、お湯が必要な時は「炎」のクエストで水を温めればいい。

要は自分でやれってことだよね。


それからトイレの場合。

手洗い台と水洗トイレ(のようなもの)が設置されてる。

水はクエストで出せばいいけど、下水の処理はどうなってるんだろう?

あっ、浴室の排水も同じか。

排水口や排水管はちゃんとあるけど、その行き先は?

島の土の中だろうか?

それとも謎の空間に繋がってる?

深く考えるのはやめておこう。


次に倉庫部屋を覗いてみる。

中にはたくさんの木製棚が並び、所々に作業台のようなものも置かれていた。

かなりの広さがあるけど、ここが埋まることなんてあるんだろうか?

まあ何があるかわからないし、狭いよりは広い方がいいかな。


倉庫を出て寝室に入ると特大のベッドが目についた。

余裕でキングサイズはあると思う。

残念ながら掛け布団はなかったけど、この島の気温ならなくても大丈夫だろう。

ベッドの脇には小さなテーブルと椅子が2脚、壁際には木製の棚。

特に扱いに悩む設備はない。


各部屋の確認の後、基本の部屋(リビングに認定)に戻り、オープンキッチンに入る。

シンクと調理台が2つずつあって、材質は石っぽい何か。

料理のためのコンロ的なものは見当たらないのは、クエストを使えってことだよね。


キッチンの後ろの壁側には簡易な棚と大きな木製の箱がある。

木製の箱を調べてみると、上部が片開きで中に棚があり、下部は引き出し収納になっている。

言ってみれば冷蔵庫のような造りだ。


(氷でもあれば、冷やせるんだけどね。)


心の中でそう思ってからある予感がした。

そう、クエストの予感。



○クエスト : 氷で冷やしたい

 報酬   : 氷(一貫)

 達成目標 : 反復横跳び(30秒)



「中のヒト」は、こういうタイミングが好きらしい。

ちょっと傾向が読めてきたかもしれない。


視界の中に新しいクエストが表示されている。

氷に関するクエスト。

ええっと、「一貫」ってどれくらいの大きさだったっけ?


読んで頂いてありがとうございます。

次回投稿は明日です。

よろしくお願いします。

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