143.海の魔王が爆誕したようです(タコさん:デビルクラーケ・ミニマ)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(143)
【アマレパークス編・首都アマレ】
143.海の魔王が爆誕したようです(タコさん:デビルクラーケ・ミニマ)
「それじゃあ、行ってきます。」
「ウィン、私も行くぞ。」
タコさんと一緒に海に突撃ってことで、後ろの3人にそう伝えると、ルルさんが同行を申し出た。
戦闘狂聖女としては当然の反応だと思うけど、今回は戦場が特殊だからね。
「ルルさん、今回は無理です。海の中に行くみたいなので。」
「ウィンが行くなら、私も行く。」
「いやいや、ルルさん、『水中呼吸』のスキル、ないでしょう?」
「気合いでなんとかなる!」
「なりません!」
ルルさんの説得に少し時間を要したけど、ジャコモさんとシルフィさんが間に入ってルルさんを止めてくれたので、無事に僕とタコさんだけが突撃することになった。
(主。)
出発しようとすると、ルルさんに抱っこされた状態のウサくんが念話で呼びかけてきた。
珍しく心配してくれるんだろうか。
「ウサくん、どうしたの?」
(薬草、ちょうだい。)
ご飯の催促だった。
まあ、ウサくんだし、通常運転だよね。
僕は『聖薬草』をクエストで1束出して、ウサくんに渡した。
ジャコモさんが物欲しそうに見つめていたけど、完全無視で。
「タコさん、突撃はいいけど、どうするの?」
(まっすぐ進むだけ、なの。)
「でも魔物がいっぱいいるみたいだよ。」
(大丈夫なの。邪魔者はポイポイするの。)
従魔たちとの会話って、分かるようでちょっとズレてるんだよね。
かなり慣れてきたとは思うけど、時々噛み合わないことがある。
まっすぐどこに向かうのか。
ポイポイってどういうことなのか。
まあ、案ずるより産むが易しってこともあるし、とにかく行ってみるか。
「タコさん、船とか必要?」
(必要ないの。直接ドボンなの。)
やっぱりそうだよね。
予想してたけど、一応訊いてみた。
ということで、タコさんを抱えたまま群衆の中を抜けて岸壁の際まで進んだ。
そしてそのまま海へドボンと飛び込んだ・・・というか落ちた。
周囲がびっくりして騒いでた気がするけど、それはまあどうでもいいかな。
海中に沈みながら沖の方向に視線をやると、大小様々な生物がたくさん見えた。
種類はよく知らないけど海の魔物たちだろう。
間違いなくこちらに気づいて集まって来てる気がする。
ちょっと距離があるけど、魔物鑑定してみよう。
○トルポル・フライ(羽雷魚) ☆
体型 : 小型
体色 : 青銀色
食性 : プランクトンや幼魚を食べる。
生息地: 深海(群れ)
特徴 : 体の左右に翼状のヒレが2枚ずつ4枚ある。
海の上を一定時間飛ぶことが可能。
弱い電撃を飛ばす。
可食。(唐揚げがおすすめ。)
特技 : 飛翔・電撃(弱)
○スピアレスク(一角魚) ☆
体型 : 小型
体色 : 黒銀色
食性 : 肉食(小魚)
生息地: 深海(単独)
特徴 : 上顎が鋭い角のように伸びている。
水中をハイスピードで移動できる。
自分より大きな敵にも突撃し上顎を突き刺す。
好戦的。
可食。(ソテーがおすすめ。)
特技 : 加速・突貫
○アサシン・ジョーズ(闇鮫) ☆
体型 : 中型
体色 : 不定
食性 : 肉食(大型生物を狙う)
生息地: 海全般(単独)
特徴 : 体色を変化させることができ、海の中で擬態する。
鋭い歯と強い顎を持っている。
どんな相手にでも噛み付く。
超好戦的。
可食。(ヒレが美味。)
特技 : 擬態・噛みつき
トルポル・フライ(羽雷魚)とは二度目の遭遇。
スピアレスク(一角魚)とアサシン・ジョーズは初見。
いずれも星1つの魔物で、他の種類もいるけど星2つ以上は見当たらない。
魔物鑑定しながら海の中での自分の状態をチェックしてみる。
呼吸は普通にできるし、水中での移動も思いのままだ。
『水中呼吸』と『遊泳』のスキル、かなり優秀だな。
あとはあの魔物たちをどうやって倒すかだけど・・・。
そんなことを考えていると、タコさんが予想外の行動に出た。
(主、足につかまるの。)
タコさんはそう念話で告げると、一本の足を僕の右腕に巻きつけた後、体を膨張させ始めた。
何これ?
タコさんがクラーケン化した?
もしかしてこれがデビルクラーケ・ミニマの本来の大きさ?
これで中型なの?
見た目はメンダコのままで、サイズだけ巨大化してるんですけど。
(主、突撃なの。)
タコさんは巨体のままで、前方の魔物たちに向かって進み出した。
それに応じてなぜか前方の水が渦を巻くように回転し始め、周囲の魔物たちを巻き取るように進行方向に集め始める。
(主、マジックバッグ貸してなの。)
タコさんは僕からマジックバッグを受け取ると、すれ違いざまに魔物たちを片っ端からその中に放り込んでいく。
触れた瞬間に『麻痺』か『石化』をかけてるようだ。
なるほど、これが「ポイポイ」なのか。
それにあの渦巻きはおそらく『水操作』だろうな。
為す術もなくクルクル回されてもがいている魔物たちを見ていると、
なんか哀れになってきた。
力の差があり過ぎる。
星4つ、半端ない。
そんなことを考えている間にも、タコさんはどんどん進んでいく。
もちろんずっと「ポイポイ」しながら。
海の魔物たちはすでに恐慌状態で逃げようと必死になってるけど、水の流れがそれを許してくれない。
タコさんの射程距離まで引き摺り込まれて、そのまま「ポイポイ」されている。
これって、『碧の海』の異変を解決しようとして、『海の魔王』を爆誕させちゃったんじゃないだろうか。
もう取り返しがつかないかもしれない。
でも港からは見えてないよね。
お願いだから見えないで欲しい。
そんな祈りを捧げているうちに、いつの間にかタコさんの動きが止まっていた。
どうやら目的地に辿り着いたようだ。
よく見てなかったけど、沖合のかなり深い所まで来た気がする。
周囲にはもう海の魔物たちの姿は見えず、目の前には崖のような地形があり、その途中に大きな穴が開いている。
(タコさん、ここに入るの?)
(そうなの。この中なの。)
(中に何があるのか分かる?)
(分かるの。引きこもりがいるの。)
(引きこもり?)
(そうなの。引きこもりがウンウン言ってるの。)
引きこもりがウンウン?
やっぱりよく分からない。
まあここまで来たし、中に入ってみるしかないか。
もし危険があったら転移で戻ればいいし。
あれっ、転移陣って水中でも発動するよね。
大丈夫だよね。
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