141.全部聞こえてますよ(フレンドリー爆弾:by ルル)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(141)
【アマレパークス編・首都アマレ】
141.全部聞こえてますよ(フレンドリーファイヤー:byルル)
「400本?!」
担当の女性がそう呟いたままフリーズした。
薬草400本ってそんなに驚くことなのかな。
森の中とかに普通に生えてるんじゃないのか。
この世界の普通が分からない僕には正確な判断ができない。
担当の女性がなかなか再起動しないので、時間を節約するために薬草の束をカウンターの上に積んでおくことにした。
一応バッグから取り出すふりをしてるけど、見た目が小さなバッグなので、周りから見ると明らかに不自然だと思う。
「では買取、お願いします。」
40束(400本)の薬草をカウンターに積み上げたところで担当の女性に声をかけると彼女は急に目が覚めたように反応した。
「は、はい、かしこまりました。」
彼女は慌ててカウンターの上の薬草の束を数え始める。
その様子を眺めていると背後からジャコモさんとシルフィさんの声が聞こえてきた。
「あれをやられた時はわしも肝が冷えたもんじゃ。」
「ジャコモ様でさえ、でしょうか?」
「わしの時は普通の薬草じゃなくて聖薬草じゃったからのう。」
「聖薬草・・・ウィン様はいったい・・・」
「シルフィ殿、何も考えてはいかん。ひたすら慣れることじゃ。ウィン殿と付き合うには全てを受け入れて、慣れるしかないんじゃ。」
あの〜、全部聞こえてますけど。
人のことを珍獣か変人みたいに言うの、やめてもらっていいですか。
「青姫さん、これがウィンの当たり前だ。ウィンに普通は通用しない。はっきり言えば異常だ。ちんまりに見えても異常だ。だから私は来世までもついて行く。」
ルルさん・・・。
いろんな種類の弾丸詰め込んで背中から撃つのやめて下さい。
フレンドリーファイヤーというより、フレンドリー爆弾を喰らった気分です。
それから「これがウィンの当たり前」って、その言い回し、まだ覚えてたんですね。
さらに「異常」を2回、「ちんまり」を1回使いましたね。
最後に「来世まで」って何ですか。
それじゃあまるで、魂に取り憑いた疫病神じゃないですか。
「ルル様・・・そこまでウィン様を・・・」
あっ、また勘違いする人が増えた。
シルフィさん、違いますからね。
完全に誤解ですから。
そこに愛だの、恋だのは存在しません。
ルルさんの言葉の使い方こそ異常なんです。
後ろを振り返ると、ジャコモさんが意味ありげな視線を僕に投げた。
なぜかジャコモさんだけは、戦闘狂聖女の言葉の意味を正確に理解してる気がする。
でも、それはそれで、なんか癪に障る。
「ウィン様、薬草40束、確かに受け取りました。こちら代金と、冒険者カードをお返しします。」
買取担当の女性から代金と冒険者カードを受け取りバッグに仕舞うと、待ち構えていたかのようにすぐに「中の侍」さんからメッセージが流れた。
僕は慌てて腕を組んで、考え込むふりをする。
…くえすとが達成されましたので表示するでござる…
○鑑定クエスト(植物鑑定)
クエスト : 薬草を売れ③
報酬 : 植物鑑定(上級)
達成目標 : 薬草を売る(100回)
カウント : 100/100
○選択クエスト(水中②)
クエスト : 冒険者ギルドの依頼を達成しろ
報酬 : 遊泳
達成目標 : 依頼達成(50回)
カウント : 51/50
○薬草クエスト
クエスト : HERBS④
報酬 : 神薬草(1束)
達成目標 : 薬草クエスト(1000回)+α
カウント : 355/1000
おお、一気に3つも表示された。
達成目標が被ってると、こういうこともあるのか。
でも『薬草クエスト』は達成じゃなくて途中経過の表示だな。
『植物鑑定』は3段階目を達成して上級になった。
でもこの能力、まだ使ったことがないんだよね。
今度、適当な植物で試してみようかな。
でもこの『植物鑑定』、鑑定項目とかが表示されてないけど、レベルが上がると何が変わるんだろう?
…うぃん殿、説明させて頂くでござる。『植物鑑定』の場合、れべるが上がると鑑定できる植物の範囲が広くなるのでござる。詳しくは次の通りでござる…
植物鑑定(初級) 全植物の20%
植物鑑定(中級) 全植物の40%
植物鑑定(上級) 全植物の60%
植物鑑定(極級) 全植物の80%
植物鑑定(神級) 全植物の100%
「中の侍」さん、丁寧な説明ありがとうございます。
現在は上級なので6割の植物を鑑定できるということですね。
20%ずつ何を基準に区切ってるのか不明だけど、特に不便はないからまあいいか。
次が、今回狙っていた『選択クエスト(水中②)』。
狙い通り『遊泳』のスキルを獲得することができた。
『水中①』の『水中呼吸』と合わせれば、水中戦闘もこなせるだろう。
ちなみに『水中③』はあるのかな?
「中の侍」さん、表示できたりする?
…かしこまりました。『選択クエスト(水中③)』を表示するでござる…
○選択クエスト(水中③)
クエスト : 冒険者ギルドの依頼を達成しろ
報酬 : 水流操作
達成目標 : 依頼達成(100回)
カウント : 51/100
3段階目は『水流操作』か。
確かタコさんが初期に持ってたスキルだよね。
進化して『水操作』に変化してたけど、『水流操作』の上位互換が『水操作』ってことだろうな。
違いは・・・後でタコさんに訊いてみよう。
最後に『薬草クエスト』だけど、これは途中経過の表示。
『神薬草』を作れるようになるためには、あと645回の薬草クエストをこなさないといけない。
道のりはまだまだ遠いな。
まあ、片っ端から薬草を作れば達成できなくもないけど、なんかそれも味気ない気がする。
どうしても必要になったらまたその時に考えよう。
それまでは成り行き任せで。
一通りクエストの状況を確認して、僕は腕組みを解いた。
これで海に向かう前の下準備は終わりだ。
「ウィン様、冒険者ギルドでの御用は、他にございますでしょうか?」
僕の様子を見て、シルフィさんが尋ねてきたので、少し考えてから逆に質問する。
「シルフィさん、海の魔物の討伐依頼って常時依頼ですか?」
「はい、その通りですわ。」
「依頼の単位はどうなってます? 魔物10体で1依頼とかですか?」
「いえ、基本的に1体で1依頼扱いですわ。通常、偶然に遭遇した海の魔物を倒した場合を想定しておりますので。」
そういうことか。
『碧の海』や航路にたまに迷い込んだ魔物がいた場合に、安全確保のために討伐するって感じなんだろうな。
でも、これ、僕的にはとても美味しい気がする。
「じゃあ、海の魔物の討伐依頼を受けておきたいんですけど。」
「ウィン様、その必要はございませんわ。他の常時依頼と同じく、事後報告となっております。討伐した魔物の一部を持ち帰る必要はありますが。」
「そうなんですね。了解しました。それじゃあ、港に向かいましょうか。」
僕たちは冒険者ギルドを出て、港へと続く大通りを歩き始めた。
さて、何が待ち構えているやら。
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