140.それがありましたね(選択クエスト:水中②『遊泳』)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(140)
【アマレパークス編・首都アマレ】
140.それがありましたね(選択クエスト:水中②『遊泳』)
いつの間にか、『碧の海』の異変を解決する役割を僕が担うことになってしまった。
別に断ってしまっても何の問題もないんだけど、「やれるもんならやってみろ」というルカさんの挑発と「できて当然」というルルさんの態度、「また楽しめますのう」というジャコモさんの期待と「次は何を見れるのでしょうか」というシルフィさんの視線を前にして、僕は「まあいいか」って感じで承諾してしまった。
これもまた冒険のひとつだし、別に避ける必要もない。
「ところで、原因は分かってるんですか?」
「まったく分からん。」
「原因が分からないんじゃ、解決のしようがないじゃないですか。」
「何でもいいから、『碧の海』を元に戻してくれりゃいい。」
筋肉執事、もとい、ルカさんは原因究明から問題解決まで僕に丸投げする気のようだ。
僕の味方のはずの3人も僕を擁護する気はさらさらないように見える。
ちなみに3人の発言は次の通り。
「ウィン、面倒だが軽くやってやれ。」
「ウィン殿、また面白いものが見れますかのう。」
「ウィン様、よろしくお願いします。」
あなたたち、ちょっと無責任すぎませんかね。
さすがの僕も今後の付き合い方、考えちゃいますよ。
まあ、シルフィさんにとってみれば自分の街の問題なので、何だかよく分からない能力を持つ僕にお願いしてくる気持ちは理解できなくもないけど。
でもそもそも、この問題って商人ギルドが対応する問題なのだろうか。
本来こういうものは、冒険者ギルドの管轄なのでは?
「ルカさん、この街の冒険者ギルドはどうしてるんですか?」
僕は疑問点をそのままルカさんに尋ねてみた。
「もちろん対処に動いてはいる。ただ『碧の海』には元々魔物が寄り付かなかったせいで海の魔物に対応できる冒険者があまりいない。そもそも水中戦ができる者は限られるしな。」
なるほどね。
水中戦か。
船の護衛なら近寄って来る魔物たちを追い払うだけでいいけど、海の異変の原因を突き止めるには海の中に入らないといけないだろうし、その海の中には魔物がいっぱいいると。
襲われた時に船上から対応するのと、水中にいる魔物と直接戦うのとは勝手が違うよな。
あれっ、なんか忘れてるような。
「ウィン様、海エルフのテイマーたちも戦闘には向きません。たいていの従魔はドルフィン系で、水中探知や水先誘導が主な能力ですので。」
僕が少し考え込んでいると、シルフィさんがテイマーギルドの情報を付け加えてくれた。
航路沿いはほとんと魔物が出ないと言ってたから、テイマーたちの役割は船が航路を逸れないようにとか、万が一魔物が近づいて来た時に警戒を呼びかけるとか、そんな感じなんだろう。
さてどうしたもんかな。
とりあえず海に行ってから考えるか。
そんな、無策で突撃みたいなことを考えていると、「中の侍」さんからのメッセージが流れた。
僕は腕を組んでさらに考え込むふりをして「中の侍」さんとの対話に備えた。
…うぃん殿、水中での戦に挑まれるのでござるか?…
(そうなるみたいだね。)
…でござれば、進行中のくえすとを再表示させて頂くでござる…
○選択クエスト(水中②)
クエスト : 冒険者ギルドの依頼を達成しろ
報酬 : 遊泳
達成目標 : 依頼達成(50回)
カウント : 11/50
(おお、それがあったね。中の侍さん、素晴らしい。ナイスです。)
…お褒めに与り、恐悦至極にござる(涙)…
あれ、「中の侍」さん、泣いてる?
褒められたのがそんなに嬉しかったのかな。
なんか内部で殴られたり指導されたりしてたしね。
これからはもっと褒めるようにしよう。
褒めて伸ばす、これ大事だよね。
僕は腕組みを解き、ルカさんを見た。
ルカさんは考え込んでいる(ふりをしていた)僕をじっと見つめていたのだろう。
視線がしっかりと合った。
「ルカさん、冒険者ギルドは近いですか?」
「ああ近いぞ。隣だ。」
その答えを聞いて僕はシルフィさんに視線を移しお願いした。
「シルフィさん、冒険者ギルドまで案内をお願いします。」
「かしこまりました、ウィン様。」
商人ギルドとしての対処に忙しいルカさんをその場に残して、僕たちは隣にある冒険者ギルドに向かった。
「ウィン様、あいにく冒険者ギルドのギルド長は不在のようです。昨日より北方の鉱山都市ララピスに出張しており、『碧の海』の異変の報を受けて、急いでこちらに向かっているとのことですが、どういたしましょうか?」
冒険者ギルド・アマレ本部の1階フロアは、商人ギルドに比べると騒然としていた。
それでも可能な限りの冒険者たちは港に向かい、船に乗って『碧の海』に出ているらしい。
少しでも海の魔物を討伐したり、原因究明につながる情報探しをしているのだろう。
「シルフィさん、ギルド長と会う必要はありませんのでご心配なく。」
ここまで僕たちを案内し、すぐに受付嬢のところに話をしに行ってくれたシルフィさんの報告に、僕は問題ない旨の返事を返す。
「でもウィン様、今回の件に関してギルド長と話すためにこちらに来たのではないのですか?」
「違います。冒険者ギルドの依頼を受けるために来ただけです。」
「依頼と申しますと、海の魔物の討伐依頼でしょうか?」
シルフィさんにとっては当然の疑問だろう。
でも僕のクエストについて詳しく説明していると時間がかかるので、とりあえずやるべきことをすることにする。
「シルフィさん、常時依頼に薬草採取はありますか?」
「薬草採取・・・でございますか?」
「はい。」
「もちろん・・・ありますが・・・」
「単位は、1依頼につき薬草10本ですか。」
「はい・・・その通りです。」
「じゃあシルフィさん、買取カウンターまで連れて行って下さい。」
シルフィさんは僕の謎の行動に疑問を感じているに違いない。
それでも彼女は表情を変えることなく僕を買取カウンターまで案内してくれた。
「すみません。薬草の買取をお願いします。」
「はい?」
買取カウンターで声をかけると、担当者らしき女性がびっくりしたような声を上げた。
この騒動の最中に買取を申し出る冒険者がいるとは思ってなかったのだろう。
「海で怪我人が出るかもしれないし、薬草、必要ですよね。」
「はい、おっしゃる通りです。ありがとうございます。買取数は何本でしょうか?」
担当者は気を取り直した様子で丁寧に対応してくれた。
さてどうしようかな。
怪我人のことを考えると『聖薬草』がいいだろうけど、それだとまた騒ぎになるし、今回は普通の薬草にしておこうか。
クエスト達成に必要な薬草の数も多いしね。
端数は面倒だし、キリのいい数にしておこう。
僕はそう考えて担当の女性に数字を告げた。
「じゃあ、薬草400本、お願いします。」
「はいっ? 400本?!」
あっ、せっかく気を取り直したのに、また取り乱してる。
声が裏返ってるし。
すみません驚かせてしまって。
でも必要なんで、よろしくお願いします。
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次回投稿は7月21日(金)です。
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