136.ようやく表情を崩せました(困惑→驚愕→不思議:シルフィ)
見つけて頂いてありがとうございます。
第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(136)
【アマレパークス編・首都アマレ】
136.ようやく表情を崩せました。(困惑→驚愕→不思議:シルフィ)
宴会に戻るために『小屋』を出ると、外は真っ暗だった。
もう深夜に近い感じかな。
そう言えばあの『庭』の時間はどうなってるんだろう?
さっき見た時は完全に昼間だったけど。
時間の概念がないのか、別の時間軸があるのか。
『はじまりの島』も微妙に時間がずれてたし、異空間とこちらの現実世界とでは時の流れが異なるみたいだ。
『小屋』の扉から外に出て左側を見ると、改造機能取得のために出した3つの小屋がそのままそこに並んでいた。
とりあえず改造ミッションは終わったことだし、このままでは邪魔になるので、消してしまおう。
(小屋3つ、消去!)
心の中でそう念じると一瞬で3つの小屋が消えた。
今僕が出てきたばかりの『小屋』だけが残されている。
内部は大規模に改造したけど、その外見は以前と何も変わらない。
まあ、そういうものだと思うしかない。
それにしても「中の女性」、裏ワザ伝授、ありがとうございました。
また「出血大サービス」な情報があったらよろしくお願いします。
年齢のことは二度と口にしませんから。
アリーチェさんのレストランに戻ると、宴会はかなり落ち着いていた。
スタートが遅かったので、さすがに皆さんお疲れの様子。
従魔たちはみんな、満腹でうつらうつらしてるし、他の人たちは座って静かに話をしている。
リベルさんだけは、まだ食べてるけどね。
「マッテオさん、アリーチェさん、もう遅いのでそろそろ帰ろうと思います。」
「ウィン君、もう帰るのか? ワインはまだまだあるぞ。」
マッテオさん、ワイナリーなんですから、そりゃワインはいくらでもあるでしょうけど、それじゃあエンドレスになっちゃいますよ。
「ありがたいですけど、今夜は他のお客さんも一緒なので、夜通し飲むのはまたの機会で。アリーチェさん、お会計をお願いします。」
「ウィン君ったら、気を遣わなくてもいいのよ。」
「そういう訳にはいきません。ちゃんと代金を払わないと、次から他の人を連れて来れませんから。」
「まあっ、あの何も知らなかったウィン君がそんなことを言うようになるなんて。男の子ってすぐに成長しちゃうのね。お姉さん、ちょっと寂しいわ。」
「・・・・・」
アリーチェさん、ツッコミどころ満載のセリフ、ありがとうございます。
主に「男の子」とか「お姉さん」とかの部分ですが。
でもあえて気付かないフリをさせて頂きます。
僕に高度な話術は無理なので。
このままだとお金を受け取ってもらえそうにないので、僕は12人分の会計を推測して強引にアリーチェさんに渡した。
「ウィン君、これはいくらなんでも多過ぎるわ。」
「アリーチェさん、美味しい料理とお酒を頂いたら、対価を払うのは当然です。多過ぎたら、次回何かおまけして下さい。ご馳走様でした。」
僕はそう言いながら、リベルさんの腕を引っ張って外へ出た。
リベルさんは両手に何か食べ物を持ったままだ。
この『はらぺこエルフ』、どこまで食い意地が張ってるのかな。
ルルさんとジャコモさんとシルフィさんは、すでに外に出て待っていた。
従魔たちも横一列に並んで、見送りに出てきたマッテオさんとアリーチェさんに向かって手を振っている。
「さあ、帰りましょう。」
マッテオさんとアリーチェさんに改めて大宴会のお礼を言ってから、みんなで『小屋』に向かって歩き出した。
歩きながらジャコモさんが話しかけてくる。
「ウィン殿、支払いはわしに持たせてくれんかのう?」
「いえ、もう払っちゃいましたし、今回は僕が誘ったので。」
「申し訳ないのう。」
「いえいえ、その代わりマッテオさんのワインをよろしくお願いします。」
「フォッフォッフォッ、それは頼まれるまでもないのう。良きものを見つければ良き取引を行う。商人の基本じゃからのう。」
ジャコモさんは豪快に笑いながらそう言ってくれた。
これで少しでもマッテオさんに恩返しできるなら、僕にとっては嬉しい限りだ。
まあ、マッテオさんにとっては大きなお世話かもしれないけどね。
ジャコモさんとの会話が終わると、続いてシルフィさんが話しかけてきた。
「ウィン様、わたくしまでご馳走になってもよろしいのでしょうか?」
「もちろんです。」
「でも貴重な経験をさせて頂いた上に、食事までお世話になっては厚かまし過ぎる気がするのですが・・・。」
「気にしないでください。ただ今後、従魔たちのことでいろいろ相談するかもしれません。その時はよろしくお願いします。」
「もちろん、わたくしの知識でお役に立つのであれば協力させて頂きますが、ウィン様に教えられることなどありますでしょうか?」
「シルフィさん、僕は全くの初心者なんです。テイマーのことも、従魔のことも、ほとんど何も知りません。」
「ウィン様、それはいくらなんでも・・・」
ほとんど表情を変えないシルフィさんが、ちょっと困った顔になる。
まあその気持ちは理解できる。
反対の立場だったら僕もそんな表情になると思う。
「シルフィ殿、ウィン殿の言葉は真実じゃよ。信じられんと思うが、それがウィン殿じゃ。またそこが面白い。」
「まさかそんなことが・・・」
ジャコモさんの言葉に、シルフィさんの表情が困惑から驚きに変わる。
表情の変化はごくわずかなものだったけど、ちょっと妙な達成感が湧いてきた。
シルフィさんの無表情の牙城を少し崩せた的な・・・。
あっ、ジャコモさんもニンマリして僕の方を見ている。
あの表情はあれだ。
あの有名なセリフ。
悪巧みが成功した時に使うやつ。
そうだ。
「お主も悪よのう。」って顔だ。
そんな馬鹿なことを考えてるうちに『小屋』の前に到着した。
レストランから『小屋』まではほとんど距離がないのであっという間だ。
僕が『小屋』の扉を開けると、まず従魔たちが飛び込んで行き、続いて他のメンバーが入って行った。
「なんと・・・」
「これはいったい・・・」
「ウィン・・・」
「わぁーい。」
ジャコモさん、シルフィさん、ルルさん、リベルさんの順番で声が聞こえた。
3人は立ち止まって唖然とし、1人は広くなったリビングの中を走り回っている。
先に入った従魔たちは見当たらない。
たぶん『庭』に行ったんだろう。
「ウィン・・・何をするのも個人の自由だが、一緒にいる者には事前に説明しろ。私は慣れているからいいが、白髭さんも青姫さんもビックリしてるじゃないか。」
いきなりルルさんからダメ出しをくらいました。
というか叱られました。
ちょっと反省。
「事前説明が大事」と心の中にメモしておこう。
すぐ忘れるような気がするけど。
ところでどうでもいいことだけど、ルルさん的にシルフィさんの髪の色は青なんですね。
青か緑か微妙な色だけど、そう言えばどちらも「あお」って読めるからそれでいいのか。
でも「青髪さん」じゃなくて「青姫さん」なんだ。
なぜだろう?
確かにシルフィさん、「姫」って感じではあるけど。
「ウィン殿、小屋の中がかなり広くなってるようじゃが、どうなっておるんかのう?」
また余計なことに思考が流れていると、ジャコモさんが質問してきた。
「あっ、さっき、ちょっといじってみました。」
「さっき・・・? ちょっと・・・?」
シルフィさんが少し不思議そうな顔でそう呟く。
慣れてくるとシルフィさんの微かな表情の変化を感じ取れる気がする。
これなんて言うんだっけ?
微表情?
確かそんな研究あったよね。
「ウィン、これはちょっとってレベルじゃないだろう。」
「ええっと、そうですね。大規模な改造?」
またルルさんに叱られた。
『2階』と『庭』を見せたらさらに叱られそうなので、先に説明しておこう。
「あと、2階と庭も作りました。」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
あれっ、3人とも黙っちゃった。
事前に説明しろって言うから、しただけなんだけど。
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