132.みんなで島に来ました(受注枠クエスト:枠追加)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(132)
【アマレパークス編・首都アマレ】
132.みんなで島に来ました(受注枠クエスト:枠追加)
ということで、やって来ました『はじまりの島』。
今まで単に『島』と呼んでたけど、他の普通の島と区別するために呼び方を決めてみた。
まだ行ったことはないけど、そのうちどこか他の島に行くこともあるだろうし。
でも何かおかしい。
アマレの街ではもう夜だったはずなのに、はじまりの島はまだ明るい。
遅めの午後って雰囲気。
時差でもあるのだろうか?
まあ深く考えるのはやめておこう。
もちろん、ルルさん、ジャコモさん、シルフィさんも同行している。
それから、まあ、リベルさんも。
小屋の扉を開けた瞬間に、まずタコさんが飛び出して行って、それを追いかけるようにリベルさんも飛び出して行った。
そのまま2人とも海にダイブしてたけど、タコさんはともかく、それでいいのか元勇者。
浜辺に来て海を見たら、我慢できずに速攻で飛び込むって。
やっぱり子供か。
海の中には割と危険な魔物もいるはずだけど、あえてリベルさんに注意しなかった。
というか教える暇もなかったけど。
まあリベルさんには身をもって『はじまりの島』を体験してもらおう。
本当に危なくなったらタコさんがなんとかしてくれるだろう。
してくれるかな?
「ウィン殿、この扉はどうなっておるんじゃろうか? わしはてっきり小屋の中に別の扉があって、それが別の場所につながっておると思っておったんじゃがのう。」
ジャコモさんが扉に触りながら不思議そうに僕に尋ねてくる。
「どうなってるんでしょうね。僕もよく分かってません。出る場所を思い浮かべながら開くと、そこに出ます。」
「転移魔法の一種かのう?」
「転移の方が便利ですね。どこにでも行けますので。小屋は、小屋のある場所限定です。」
「ウィン殿、まさか転移魔法も使われるのか?」
「ええっと、まあ、そんな感じです。」
面倒なので認めてしまった。
正確には『転移陣』だけどね。
「ウィン様、従魔のみなさんとはこの島で出会われたんですね?」
「そうですね。正確には、タコさんは浜辺で、ウサくんは草原で、スラちゃんは岩場で遭遇しました。コンちゃんとハニちゃんとラクちゃんとディーくんは森の中ですね。」
シルフィさんが尋ねて来たので、少し詳しく答えてみる。
何も分からない状態で戦いに明け暮れたあの日々が懐かしい。
なんて、感慨に耽るほど昔のことでも、長い期間でもなかったけどね。
「でも周囲に魔物の気配はありませんね。」
「森の中にはいっぱいいますよ。」
「すべて星3つの魔物でしょうか?」
「島の中では星3つ以外は見てないですね。海には星2つもいるみたいですけど。」
そんな話をしていると視界の中にメッセージが表示された。
…相変わらず挨拶もないとはな。クエストの前に礼儀を教えるべきだったな…
おお、懐かしの「中のヒト」。
お元気でしたか。
それほど時間は経ってないけど、いろいろあり過ぎてとても久しぶりな気がします。
…とりあえずクエスト達成だ…
○受注者枠クエスト
クエスト : 友人招待②〜④
報酬 : 受注者枠(1→4枠)
達成目標 : 島に友人を招く(4名)
※設定可能なクエストは受注者により変化する。
そう言えば、そんなクエストもありましたね。
表示を確認すると、受注者枠が1枠から4枠に増えていた。
今回ははじまりの島に新たに3人連れて来たので、クエストも一気に3段階進んだようだ。
でも、受注者枠が増えるってどういう意味だろう。
…説明してなかったが、受注者枠は一度設定すると人物の変更はできない。つまり、1枠目はルルで固定。今回3枠追加だからあと3人設定できるということだ…
そういうことか。
受注者を設定するの、慎重に考えないといけないな。
パーティーを組んだ仲間限定とか。
親友とか恋人とか家族とか。
そんな存在ができるのかどうか、まだ分からないけど。
とにかく「中のヒト」、説明ありがとうございます。
口調は変わらないけど、最近ちょっと優しいですよね。
…うるせぇ、そんなことより、連れて来た奴ら、ちゃんと管理しやがれ。海に行った奴、大変なことになってるぞ…
「中のヒト」の指摘を受けて、慌てて海の方を見てみると、リベルさんが必死に陸に向かって泳いでいる姿が見えた。
しかも、その姿がうっすらと光っている。
どうやら『光衣』を発動しているようだ。
さらにリベルさんの後方に視線を移すと、たくさんの水飛沫が立っているのが見えた。
これ、間違いなく海の魔物たちに追いかけられてるよね。
リベルさんの自業自得だけど、タコさん、どうしたのかな。
あっ、よく見るとタコさんが先頭でリベルさんを追いかけてる。
足を一本空中に掲げてるし、魔物たちを先導してる感じ?
もしかして、これが『統率』の効果?
しばらく様子を見てると、リベルさんはギリギリで波打ち際にたどり着いて、そのまま砂浜に倒れこんだ。
まあ、タコさんも本気で襲う気はなかったようで、途中でスピードを緩めてたけどね。
リベルさんは、倒れたままの格好でズリズリと砂浜を這いながら、こちらに近づいて来る。
「ゼェゼェゼェ・・・ウィンさん・・・海に・・・あんなに・・・魔物がいるとか・・・聞いて・・・ないん・・・ですけど。」
リベルさんが息も絶え絶えにそう訴えてきた。
そりゃそうだよね。
言ってないし。
でも初めて来た場所で、何の情報収集もせず、いきなり海に飛び込んだんだから自己責任だよね。
「ゼェゼェ・・・ウィンさん・・・お願いが・・・あります。」
リベルさんが僕の目の前でゴロンと仰向けになって、懇願の視線を向けてくる。
なんか次のセリフ、予想できてしまうんですけど。
「なんでしょう、リベルさん?」
「ゼェ・・・お腹が・・・空きました。」
やっぱりそうくるか。
さっき『光衣』発動してたしね。
本当に燃費の悪い『はらぺこエルフ』だね。
「ジャコモさん、シルフィさん、お腹空いてます?」
すぐ近くでリベルさんの醜態を眺めていた2人にとりあえず確認してみる。
「そういえば夕食はまだじゃったのう。」
「わたくしもまだ食べておりません。」
2人ともまだ食べてないのか。
僕はもうお腹いっぱいなんだけど。
ルルさんももう食べられないよね。
んっ、そういえばルルさん、どこに行ったんだろう。
そう思って浜辺をぐるりと見回すと、少し離れたところでディーくんとルルさんが戦闘訓練をしていた。
さすが戦闘狂聖女。
目を離すとすぐ訓練してる。
さて、食事はどうしようかな。
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