131.内覧会です(HOME:小屋の中)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(131)
【アマレパークス編・首都アマレ】
131.内覧会です(HOME:小屋の中)
「ボク、ここに住みます。」
リベルさんが高らかに宣言した。
一瞬、反論しようかと思ったけど、相手にするのも面倒なのでスルーすることにした。
どっちみち、僕の許可がなければ出入りできないし、リベルさんがどう決意しても関係ないよね。
「ここがリビングルームになります。扉がいくつかありますが、それぞれ広い空間に繋がってます。」
僕がダイニングテーブルの上に従魔たちのご飯(おにぎり・薬草・石)を出しながらそう説明すると、ジャコモさんとシルフィさんがリビングルーム内を移動しながら、気になるものを観察し始めた。
「ウィン殿、この木製の箱は何じゃろうか?」
まずジャコモさんがオープンキッチンに置いてある冷蔵庫を見つけてそう尋ねてきた。
「それは『冷蔵庫』です。一番下の引き出しに氷を入れておけば、中のものが冷やせます。」
「おお、氷室の小型版ということじゃな。冷風の魔法陣はついておらんのか。しかし、氷はどうするんかのう?」
「ええっと、こうします。」
そう答えながら、僕はクエストで氷の塊を出して、オープンキッチンの作業台の上に置く。
「なんと、氷魔法も使えるとは。ウィン殿は底が知れんのう。」
そんなやりとりをしていると、今度はシルフィさんから質問が来た。
「ウィン様、この水槽の中の魚は何という種類でしょうか?」
「ああそれは、コーラル・ジュエルという海の魔物ですよ。」
「魔物を・・・部屋の中で飼われていると?」
「飼っているというか・・・照明の代わりです。」
「照明の代わり?」
「その魔物たち、暗くなると光るんです。それで各部屋に置いてます。」
そう答えると、シルフィさんは少し考え込む表情になった。
魔物を照明代わりに使っている意味が分からないんだろう。
確かに文明と接した今なら、照明の魔道具があることを知っている。
簡単に手に入れることもできる。
でも無人島に1人でいた時には、そんなものは無かった。
自分で工夫するしかなかったんだから仕方ないよね。
「ウィン様、この魔物を鑑定してもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ。」
別に隠すことでもないので、どうぞご自由に。
僕の従魔でもないしね。
シルフィさんは、コーラル・ジュエルの鑑定を終えると僕に向かって再度質問してきた。
「ウィン様、星2つで毒持ちの魔物をこのような簡易な水槽で室内に置いて大丈夫なんでしょうか?」
うん、もっともな質問ですね。
でもこの子たち、大人しいし、とても役に立ってくれてるんだよね。
他の人にもお勧めできるかっていうと、かなり疑問だけど。
「ええっとですね、ここだと星3つ以上の従魔たちがいますし、僕も毒無効を持ってるので、大丈夫です。」
「毒無効・・・理解致しました。」
シルフィさんは、まだ何か言いたそうだったけど、とりあえず納得したようだ。
続いて待っていたかのようにジャコモさんから声が掛かった。
「ウィン殿、この棚に並んでおるガラスの食器類はどこで手に入れられたのかのう?」
「自分で作りましたけど。」
「ご自分で作られたと!?」
「はい。」
「この透明度、この薄さ、この硬さ、どの点をとっても初めて見るレベルじゃ。いくらでお譲りいただけますかのう?」
ガラス製品、売れるのか。
砂があれば『錬金』でいくらでも作れるし、お金に困ったら売るのもありだな。
でも金剛石とかでお金に困ることも無さそうなんだよね。
ジャコモさんとの駆け引きの中で、必要があれば応じよう。
「ジャコモさん、商売の話はまた別の機会にお願いします。」
「無粋じゃったのう。これも性分でのう。後日、必ずお願いしますぞ。」
商談は後日でとジャコモさんを引かせたところで、再びシルフィさんから質問が来た。
「ウィン様、従魔の皆さんが食されているものは何でしょうか?」
シルフィさん、いつの間にか従魔たちがいるダイニングテーブルのところで、テーブルの上を覗き込んでいる。
僕もダイニングテーブルに近づき、確認してからシルフィさんに答えた。
「葉っぱは『聖薬草』です。ウサくんの好物ですね。鉱石はスラちゃんの好物。おにぎりは米という穀物でできていてタコさんの好物。おにぎりに関しては、最近みんな食べてるみたいですけど。」
「聖薬草がご飯・・・白いものはおにぎり・・・あと他にもいろいろあるようなんですが。」
聖薬草はまずかったかな。
確か稀少品だったよね。
普通の薬草にしておけば良かったかも。
おにぎりは初めて見たんだろうな。
あと、他のものは・・・
「あとのものは、全部、従魔たちが勝手に外で集めてきたものですね。昆虫とか、木の実とか、果物とか。従魔たち、基本的に食材も素材も自分たちで取りに行くので。」
「自分たちで・・・勝手に・・・」
シルフィさん、一言ずつ噛み締めるように言葉にしてるけど、それでも表情をあまり変えないのはさすがだ。
あまりの非常識さに感情が麻痺しちゃったのかもしれないけど。
そんな風にジャコモさんとシルフィさんの相手をしていると、それまで静かにしていたルルさんから指摘が入った。
「ダメ勇者、寝てるけど、いいのか?」
振り返って見てみると、リベルさんはソファの上で気持ち良さそうに寝息をたてていた。
こういう人、たまにいるよね。
他人の家に遊びに来て、そこで平気で寝ちゃうヤツ。
「ここに住みます」宣言を無視したから不貞寝したって感じじゃなく、我が家のように寛いで寝てる感じ。
まあ、ほっとくか。
「ウィン様、可能であれば従魔のみなさんと出会われた島を見てみたいのですが、無理でしょうか?」
心の中でリベルさん放置の決定を下していると、シルフィさんから新たなお願いが提示された。
シルフィさんにしてみれば、一番の興味はそこだろうしね。
でもどうしようかな。
「あるじ〜、別に構わないんじゃないかな〜。」
「ディーくん、本当にいいの?」
「どうせあるじがいないと行けないし〜、見せても減るもんじゃないし〜、それに他の人が島に行っても何にもできないよ〜。」
「そうなの?」
ディーくんが島にみんなを連れて行っても問題ないと言ってきた。
本当に問題ないんだろうか。
「あるじ〜、それじゃあみんなに聞いてみるね〜。みなさ〜ん、星3つの魔物が100体以上いる島に行ったらどうしますか〜?」
「そんな所には近寄らんのう。」(ジャコモ)
「すぐに逃げさせていただきます。」(シルフィ)
「ウィンを呼びに行く。」(ルル)
「謝ります。」(?)
あれ、返事が1人多いような。
リベルさん、いつの間にか会話に加わってるし。
さっきまでぐっすり寝てたはずなのに。
「とりあえずウィンさん、すぐにその島に行きましょう。」
リベルさん、図々しさもそこまでいくと、いっそ清々しいですね。
リベルさんだけ、島に置き去りにしようかな。
うん、我ながら名案かもしれない。
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