126.初めての従魔登録(テイマーギルド長:シルフィ)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(126)
【アマレパークス編・首都アマレ】
126.初めての従魔登録(テイマーギルド長:シルフィ)
「ようこそテイマーギルド・アマレ本部へ。ご用件をお伺いします。」
個室の中に入ると、そこには受付カウンターがあり、受付嬢が立ち上がって出迎えてくれた。
コロンバールではウサ耳獣人の受付嬢率が高かったけど、目の前の受付嬢はエルフ族の女性のようだ。
カウンターの後ろには棚が並んでいて、さらに奥に続く扉がひとつあった。
カウンターの手前、僕たちがいる側には広いスペースがあり、ジャコモさんを含めて4人が入っても余裕がある。
「コロンバールの商人ギルド・副ギルド長のジャコモじゃが、ギルド長のシルフィ殿はいらっしゃるかのう?」
「ジャコモ様、ようこそいらっしゃいました。ギルド長を呼びますのでしばらくお待ちください。」
受付嬢はそう言うと、後方の扉を開いて姿を消した。
あの扉の向こうに事務所のようなものがあるのだろう。
「ジャコモさん、従魔登録するのにギルド長まで必要なんですか?」
「フォッフォッフォッ、ウィン殿、貴殿が絡んで普通で済むとは思えませんのでのう。受付嬢にはちと荷が重いと拝察した次第じゃよ。」
僕の問いかけにジャコモさんは愉快そうにそう答えた。
確かに一度に7人の従魔を登録するというのは、普通とは言えないかもしれない。
しかもそのうち6人が星3つ、1人が星4つだしね。
でもジャコモさん、従魔たちのことは知らないはずだけど・・・いや、きちんと情報は入ってるんだろうな。
「ジャコモさん、テイマーギルドの受付はどうして個室になってるんですか?」
僕はさらに疑問に思っていたことをジャコモさんに尋ねてみた。
「ウィン殿、テイマーの中には従魔の詳細を他の者に知られたくない者も多くてのう。言うて見ればテイマーの秘匿事項じゃ。その秘密を守るためにこの形をとっておるのじゃ。」
「なるほど。」
僕は個室内を見回した。
確かに魔術師だって自分の魔術の内容を全て開示したりしないだろうし、戦士だって戦闘技術の全てを他人に説明したり試合だろう。
テイマーにとっては従魔の能力がそれに当たるのかもしれない。
あれっ、そう言えば、
「ジャコモさん、海の魔物もテイムできるんですよね。」
「その通りじゃのう。」
「海の魔物はどうやって従魔登録するんですか?」
うちのタコさんは陸でも活動できるけど、そうじゃない海の魔物もたくさんいるはずだ。
このテイマーギルドまで連れて来るのは難しいんじゃないかな。
「ウィン殿、実は港にテイマーギルドの出張所がありましてのう。海系の従魔はそちらで登録しますのじゃ。」
なるほどね。
当然と言えば当然か。
召喚できれば内陸でも呼び出せるだろうけど、従魔の召喚ってレアスキルっぽかったからね。
「ジャコモ様、ご無沙汰しております。」
ジャコモさんと話をしていると、受付奥の扉から背が高く細身の女性が現れた。
真っ白なドレスが海エルフの特徴である浅黒い肌の色に映えている。
長く伸ばされた髪は、光の具合で紺にも碧にも見える不思議な色をしていた。
瞳の色は金色だ。
「シルフィ殿、突然お邪魔して申し訳ないのう。」
「いえいえ、ジャコモ様ならいつでも大歓迎ですよ。でも今日は、いつもと違って、興味深い方々とご一緒なんですね。」
シルフィさんはそう言いながら、僕たち3人に順番に視線を移す。
その表情は、冷たくもなく暖かくもなく、驚いたようでも興味を持ったようでもなく、とても感情が読みにくいものだった。
「そうなんじゃよ。今日は友人を紹介しようかと思うてのう。」
「あら、楽しみですわ。」
楽しみと言いながらも、シルフィさんの表情は相変わらず動かない。
ジャコモさんは慣れているのだろう、そのまま僕たちの紹介を続けた。
「まず聖女のルル様、次に勇者のリベル殿、最後にウィン殿じゃ。」
「ルル様とリベル様はもちろん存じ上げておりますわ。ウィン様は初めてですわね。皆さまよろしくお願いいたします。」
シルフィさんはそう言って、頭を下げた。
紺碧の長い髪がサラサラと揺れ、まるで海の水が流れているような錯覚を覚えた。
相変わらず、表情はまったく動かないけど。
「ところでジャコモ様、本日はご友人のご紹介だけでしょうか? それとも他の理由がお有りでしょうか?」
「もちろん理由はある。ウィン殿のギルド登録とウィン殿の従魔たちの登録のためじゃよ。」
あっ、そうなの?
僕自身のギルド登録もするのか。
まあ普通はテイマーである自分のギルド登録が最初にあって、その後に従魔登録って順番だよね。
自分の登録のことは、まるで考えてなかったけど。
「従魔たち?」
ジャコモさんの言葉を受けて、シルフィさんが小さな声で呟いた。
同時に金色の瞳がキラリと光った気がした。
シルフィさん、ギルド登録とか従魔登録じゃなく、そこに引っ掛かるんですね。
「そうじゃよ。登録せんと連れて歩くのも面倒じゃからのう。」
「ジャコモ様、確認ですが、今、『従魔たち』とおっしゃいましたか?」
「その通りじゃ。」
「つまり、ウィン様は複数の従魔を従えていらっしゃると?」
「そういうことじゃな。」
ジャコモさん、やっぱり従魔たちの情報を把握してるよね。
それにしても従魔の話になると、明らかにシルフィさんの食い付きが違う気がする。
テイマーギルドのギルド長だけに、人より従魔に興味を示すタイプかな?
「では、ギルド登録用紙1枚と従魔登録用紙2枚ということでよろしいでしょうか?」
いつの間にかシルフィさんの後ろに控えていた受付嬢がそう質問してきた。
後ろの棚から登録用紙を取ろうとしてる。
その動きを右手を挙げて止めながら、ジャコモさんは僕の方を見た。
「ウィン殿、従魔は全員登録されますかのう?」
「そのつもりです。」
「では受付のお嬢さん、従魔登録用紙を・・・7枚お願いしたいのじゃが。」
「7枚!・・・ですか?」
「その通り、7枚じゃよ。フォッフォッフォッ。」
驚く受付嬢を見ながらイタズラっぽく笑うジャコモさん。
ジャコモさん、どうして僕の従魔たちの正確な数を知ってるんですかね。
やっぱりあなたは、商人ギルドじゃなくて諜報ギルドの重鎮では?
「ちょっとお待ちください。」
ジャコモさんの笑い声に、シルフィさんの声が割って入ってきた。
「ジャコモ様、7枚ということは従魔が7体いるという理解でよろしいでしょうか?」
「その理解で合っておるのう。」
「それは、聖女様や勇者様も従魔をお持ちということでしょうか?」
「違うのう。ルル様もリベル殿も従魔はお持ちではないのう。」
ジャコモさんの答えを聞いて、シルフィさんは微かに眉間に皺を寄せた。
その表情をジャコモさんが楽しそうに見つめている。
「ジャコモ様、つまり、ウィン様が従魔を7体従えていると?」
「そうじゃな。ただウィン殿は7体ではなく、7人と呼ぶことを好まれるようじゃがのう。」
そこでしばらく会話が途切れた。
シルフィさんは、表情を変えないまま何か考え込んでいる。
受付嬢さんは半信半疑の表情ながら、登録用紙を準備して後ろに控えている。
僕は、ジャコモさんが持っている僕自身に関する情報の細かさにちょっと驚いていた。
しばらくの沈黙の後、ようやくシルフィさんが口を開いた。
「ウィン様、従魔登録のためには従魔自身をここで見せて頂く必要があります。お見受けしたところ、従魔を連れておられないご様子。どちらかに待機させていらっしゃるのでしょうか?」
「ええっと、そうですね。」
みんな小屋にいるはずだから、返事として間違ってないよね。
ここに呼び出せばいいのかな?
「では、こちらに連れて来て頂けますでしょうか? 登録はそれからということで。」
「分かりました。ここに喚べばいいんですね?」
「呼ぶ?・・・とにかくこの部屋で見せて頂ければ登録は可能ですので後ほど・・・」
「従魔たち、全員来て!」
シルフィさんが何か言ってたけど、早く登録を済ませたかったので、とりあえず従魔たちを全員喚んでみた。
個室内に光の粒子が溢れ、従魔たちが横一列に並んだ状態で現れた。
いつもの妙なポーズ付きで。
そのポーズは・・・なくていいんだけどな。
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