125.ようやくテイマーギルドです(白髭さん三度)
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第三章 世界樹の国と元勇者(アマレパークス編)
主人公が世界樹の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
仲間として戦闘狂の聖女に続いてエルフの元勇者が加わります。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第三章 世界樹の国と元勇者(125)
【アマレパークス編・首都アマレ】
125.ようやくテイマーギルドです(白髭さん三度)
「あれは、セントラルですよね?」
「そうだな。セントラルだな。」
「もぐもぐ、何の話ですか?」
僕とルルさんが「元勇者の確保依頼」を出した依頼主について推測していると、二度目の夕食をもぐもぐしながらリベルさんが呑気な台詞を口にした。
リベルさんが空腹を訴えたので、3人で近くの酒場に入って、テーブルを囲んでいる。
従魔たちは一度小屋に帰した。
「リベル、お前を捕まえようとした依頼主のことに決まってるだろう。」
「ルルには訊いてない。ウィンさん、本当にセントラルでしょうか?」
ルルさんの咎めるような言葉に反発しつつ、リベルさんは僕に確認してきた。
「まあ想像でしかありませんが、リベルさんを捕まえようとするなんて、それくらいしか思いつきません。それとも、リベルさん、他に心当たりあります?」
「特にないですね。でもセントラルがなぜ?」
う〜ん、理由はいくらでも考えられるけど、この世界のことをよく分かってない僕の意見じゃ、説得力がないだろうな。
そう思っているとルルさんがズバリといった。
「国の面子の問題だろう。いや、王族のプライドかな。勇者パーティーの勇者に逃げられるなんて、前代未聞の不祥事だからな。」
「いや、でもルルは追われてないじゃないか。」
「だから言ってるだろう。聖女と勇者じゃ立場が違う。聖女は補充すればいいが、勇者はそうはいかない。」
まあそうだろうな。
ルルさんの言い方から察するに、聖女というのはそれなりの数いるんだろう。
でも、勇者の数は少ない。
そして一度勇者パーティーを引き受けた勇者が逃げ出してしまうなんて、国や王族にしてみれば、どう考えても醜態だよな。
担当者の首とか飛んでそうだね。
まさか物理的にも・・・怖いので考えないことにしよう。
「ルルさん、セントラルは今回の失敗で、リベルさんを諦めたりしませんかね?」
「ウィン、それはない。あそこの王族は、かなりしつこいからな。」
「でもルルさんは追われてませんよね。」
「それは、中央教会がすぐに代わりの聖女を差し出したからだ。個人的には私のことをまだ恨んでいるはずだ。」
なんかこれ、逃亡犯を2人も抱えちゃってる感じ?
ちょっと行ってみようかなとか思ってたけど、これは当分セントラルには近づけないな。
まあ世界は広いだろうし、他にも面白い場所はいっぱいあるだろう。セントラルのことは、また後で考えればいいか。
「お腹もいっぱいになったし、ウィンさん、テイマーギルドに行きましょう。」
リベルさんはそう言うと、おもむろに立ち上がった。
襲撃騒動があってその元凶が自分なのに、まったく気にしてない様子。
弱気なくせにスルー力が高いというか、マイペースというか。
まあ、変に落ち込まれたり、気を遣われるよりは楽だけど。
テイマーギルドは冒険者ギルドや商人ギルドに比べると小ぢんまりとした建物だった。
入り口にはやはりギルドの旗が掲げられていた。
図柄を確認してみると、大きな木の周囲に3体の動物(魔物?)らしきものが描かれている。
「ルルさん、あの図柄は何ですか?」
「ああ、真ん中の大きな木が世界樹で、周りの魔物がイルカとウルフとモグラだな。」
「世界樹は分かりますが、なぜイルカとウルフとモグラなんですか?」
「海エルフがイルカ、森エルフがウルフ、山エルフがモグラだ。」
「?」
相変わらず、ルルさんの説明は言葉が足りない。
それぞれの動物(魔物?)が各エルフの象徴ということだろうか。
「ルル、説明下手過ぎ! ウィンさん、エルフ族はテイマーが多いんですが、対象とする魔物が偏ってるんです。海エルフはイルカ系の魔物、森エルフはウルフ系の魔物、山エルフはモグラ系の魔物を主に従魔にしてるんです。」
なるほど。
リベルさんの説明で理解できた。
さすがにエルフ族の元勇者、同族のことはよく知ってるみたいだ。
「リベル、私の説明と一緒じゃないか!」
ルルさんがリベルさんの言葉に反論する。
いや、全然違いますし。
ルルさん、省略しすぎだから。
戦闘の時以外は、もう少し詳しく喋ってくれないと想像で補いきれません。
言い合いを続けるルルさんとリベルさんを従える形で、僕はテイマーギルドの扉をくぐった。
一階のロビーはそれほど大きなものではなく、人影もまばらだった。
冒険者ギルドや商人ギルドと違って、受付カウンターが見当たらず、小さな個室のようなものがいくつか並んでいた。
「これ、どこに行けばいいんですか?」
僕はルルさんとリベルさんの2人にそう問いかけた。
「知らんな。」
「ボクも知りません。」
2人とも分からないとの返事だった。
まあ、ルルさんもリベルさんもテイマーじゃないから、テイマーギルドのことなんて知らなくて当たり前だけど。
さて、どうしたものかな。
そんなことを考えていると、聞いたことのある笑い声が後ろから聞こえてきた。
三度目の登場かな。
「フォッフォッフォッ、ウィン殿、ルル様、やはりこちらにいらっしゃいましたか。リベル殿もご壮健そうで何よりじゃのう。」
振り返ると、そこには巨漢のドワーフ、白髭のジャコモさんがにこやかに笑いながら立っていた。
リベルさんのこともよく知っているようだ。
それにしてもこの人、どこから情報を入れてるんだろう。
絶対に諜報ギルドとか使ってるよね。
それとも商人ギルドにスパイ部隊とか抱えてるんだろうか?
「ジャコモさん、どうしてここに?」
別に答えを知りたいわけじゃないけど、一応訊いてみる。
「ウィン殿が定期船でアマレパークスに向かわれたと聞きましてな。一足先にこちらに来て、お待ちしておりましたのじゃ。」
うん、誰にその情報を聞いて、どうやって一足先にここに来れたのかという大事な情報が抜けてるけど、どうせ訊いてもはぐらかされるんだろうから訊かない。
「僕に何か用ですか?」
「もちろんですじゃ。ウィン殿の『小屋』を、商人ギルドのアマレ本部に設置して頂きたいと思いましてのう。」
商人ギルド・ポルト支部の裏庭に『小屋』を設置させてもらった時に、コロン本部にも『小屋』を設置する約束はしたけど、国を越えてここアマレまで追いかけてくるとは思わなかった。
さすが『コロンの白鯨』と呼ばれる超大物商人のジャコモさん、行動力が半端ないな。
将来的に僕の『小屋』を利用できるかどうかは別として、重点攻略目標に認定されちゃった感じ?
「それよりもウィン殿、わしからのお願いの前に、まずは従魔登録ですかのう。案内はお任せくだされ。」
まあ、ジャコモさん、こちらの行動はすべて把握済みですよね。
テイマーギルドの使い勝手がよく分からなかったので、ありがたい事ではあるんだけど。
「それではウィン殿、ルル様、リベル殿、こちらへどうぞ。」
ジャコモさんはそう言いながら、複数ある個室のうちの一つの扉を開いた。
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