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105.第二ラウンド開始です(ジャコモvsウィン)

見つけて頂いてありがとうございます。


第二章 葡萄の国と聖女


主人公が戦闘狂の聖女と知り合い、葡萄のコロンバールで様々な出来事に遭遇するお話です。


週3回(月・水・金)の投稿となります。

よろしくお願いします。


第二章 葡萄の国と聖女(105)

【コロンバール編・港町ポルト】



105.第二ラウンド開始です(ジャコモvsウィン)



「そこからは、わしが引き継ごう。」


白髭のドワーフがそう言った。

白髭で巨体のドワーフといえば・・・誰だっけ?

商人ギルドの人なのは覚えてるけど、名前を忘れた。


「白髭さん、なぜここにいる?」


ルルさんが白髭のドワーフさんにそう尋ねた。

ルルさんの呼び名の付け方って、実はとっても便利だったんですね。

名前を忘れても関係ないもんね。

あっそうだ。

人物鑑定すれば名前も出るよね。

声に出さずに鑑定しよう。


(鑑定。)



(鑑定結果)

名前 : ジャコモ(70歳) 男性

種族 : ドワーフ族

職業 : 商人ギルド職員・商人・鑑定士

スキル: 植物鑑定(上級)・鉱石鑑定(上級)・武具鑑定(上級)

     人物鑑定(中級)・算術・交渉

魔力 : 80

称号 : 『コロンの白鯨』

友好度: 75



白髭さんの人物鑑定が視界に表示された。

そうそうジャコモさんだった。

コロンの商人ギルドの副ギルド長だったよね。

前回の商人ギルドの時より僕の人物鑑定レベルが上がっているので、称号と友好度が追加表示されている。


称号が『コロンの白鯨』。

コロンの白髭を生やした超大物商人ということだろうか。

それから僕に対する友好度が75。

一回しか会ってないし、あの時はちょっと対立した感じだったと思うけど、その割には友好度が高い。

いい商材を買い取れるカモだと思われてるのかもしれないけどね。


「フォッフォッフォッ、ルル様、わしの商売の勘もまだ捨てたもんじゃないということですかのう。ここに来ればいいモノに出会えるような気がしましてのう。」


白髭のジャコモさんが独特の笑い声を上げる。

一見とても優しげなお爺さんに見える。

しかし僕は、その笑顔の中の瞳が鋭くカウンターの上に注がれていることを見逃さなかった。


「ところでコニー殿、そのカウンターの上のお宝の山はどうされたのかのう?」

「ジャコモ様、それは私からは申し上げられません。」


コニーさんはジャコモさんの問いかけにそう答えると僕の方を見た。

どう対応するかの判断は僕次第ということだろう。

僕は体の向きを変えてジャコモさんに正面から向き合い、意識して笑顔を作る。

頭の中では、第二ラウンド開始のゴングが鳴ったような気がした。


「ジャコモさん、こんにちは。冒険者ギルドにも顔を出されるんですね。」

「フォッフォッフォッ、ウィン殿、なかなかの先制パンチですのう。わしに冒険者ギルドは似合いませんかな?」

「いえいえ、深い意味はありませんよ。ただコロンの商人ギルドの副ギルド長がどうしてポルトの冒険者ギルドに来られたのか純粋に疑問に思っただけです。」

「もっともな疑問じゃのう。実は隣の白い建物がポルトの商人ギルドなんじゃが、たまたま立ち寄ったところ、何やら隣の建物からお宝の匂いがしましてのう。これでも鼻はいいんじゃよ。」


絶対嘘だろうな。

何らかの情報網で僕たちが『七色ワームの洞窟』に行ったのを知って、ここに戻って来るのを待ち構えていたんだと思う。

いやその前に、ルルさんと僕がポルトに来るのを知って追いかけてきたのか。

でも移動時間を考えると辻褄が合わないな。

もしかすると商人ギルドの中にお互いに行き来するための秘密の転移陣があるのかもしれない。


「それで、何かご用ですか?」


何の用かは簡単に推測できるけど僕はわざととぼけて見せた。


「ウィン殿もお人が悪い。そのカウンターの上に並べられたモノに用のない商人などおりませんのじゃ。特にその金剛石。見たこともない精緻なカットにはこの老いぼれも驚愕しておりますのじゃ。」


ジャコモさんはさして驚いた様子も見せずに、しれっとそう言った。

『コロンの白鯨』の称号を持つ大商人だけに、心の動きをほとんど表に出さない。


「買取の商談をしたいということですね。」

「その通りですじゃ。ただその前に、コニー殿、この買取交渉、商人ギルドが引き継いでもよろしいかのう?」


ジャコモさんがコニーさんを見て確認する。


「それは、ウィン様がお決めになることです。ただ、当ポルト支部では、その金剛石1個でも即金で買い取ることは無理だと思います。コロンの冒険者ギルドであれば可能性はありますが。」


ジャコモさんがコニーさんの言葉に深く頷き、僕の方を見る。

僕に判断を促しているのだろう。


「ではジャコモさん、商人ギルドに場所を移して買取交渉をしましょう。それからコニーさん、ネロさんと相談して買取したいものがあれば僕に伝えてください。どちらにしても、全部売るつもりはないので慌てなくても大丈夫ですよ。」


僕はとりあえず商人ギルドでジャコモさんと交渉することにして、同時に冒険者ギルドにも筋を通しておく。

ついでに、ジャコモさんに全部は売らないよと、牽制球を投げておいた。


「フォッフォッフォッ、その決断の速さ、全体を見るバランス感覚、そしてきっちりわしに釘も刺す周到さ。ウィン殿、冒険者などやめて商人にならんかのう。うちの商会の後継者にピッタリじゃと思うがのう。」


ジャコモさん、本気か冗談か分からない勧誘で、僕の牽制球を打ち返してきた。

もちろん、そんな言葉に乗る気は一切ないけどね。


「ジャコモさん、ありがたいお言葉ですが、丁重にお断りさせて頂きます。」

「白髭さん、ウィンはあげないぞ。」


ジャコモさんの勧誘を丁寧に断ると、それまで黙っていたルルさんがいきなり会話に横入りしてきた。

ルルさん、元々僕はあなたのモノではないので、あげるとかあげないとかは適当な言葉じゃないですよ。


「フォッフォッフォッ、若いものはいいのう。でもウィン殿、気が変わったらいつでもお声がけくだされ。今の後継者など、すぐに挿げ替えますので。では商人ギルドへ行きますかのう。」


ジャコモさんの言葉を受けて、冒険者ギルドから商人ギルドへ場所を移すことになった。

僕はカウンターの上に並べたインゴットと金剛石をマジックバッグの中に戻し、コニーさんに挨拶をして出口へと向かった。

ジャコモさんが先を歩き、ルルさんが僕の後ろを歩いている。



商人ギルド・ポルト支部はジャコモさんが言った通り、冒険者ギルドの隣にあった。

首都コロンにある本部と同じように白い建物で、商人ギルドの旗(金貨・銀貨・銅貨の下に葡萄の房)が掲げられている。

最初に冒険者ギルドに来た時には気づかなかったけど、どうやらこの一角にはギルド関係など公共施設的な建物が集まっているようだ。


「ようこそ、商人ギルド・ポルト支部へ。どんな御用・・・。失礼しました、ジャコモ副ギルド長。どうぞ中へ。」


建物の中に入るとコロン本部同様に執事服を着たドアマン兼案内係が出迎えてくれたが、途中でジャコモさんに気付きすぐに中へ通してくれた。


ジャコモさんが1階のフロアを横切るように歩いていくと、そこにいた商人風の人たちやギルド職員たちがみんな軽く頭を下げて挨拶していた。

ジャコモさんは彼らに笑顔で応じながら、一番奥にある応接室のような部屋に僕たちを案内した。


「ここは商談室ですじゃ。大抵の買取交渉はカウンターで対応するんじゃが、あまりに高額の品の場合、人目につく所で行う訳にも行きませんのでのう。」


ジャコモさんがこの部屋の使用目的を説明してくれた。

室内を見回すと、確かに高級そうな調度品が揃えられていて重厚感がある。

でもけして華美ではなく、落ち着いて交渉ができそうな雰囲気だ。


「さて、ウィン殿。買取交渉に入りましょうかのう。」


ルルさんと僕がソファ席に座り、テーブルを挟んで反対側にジャコモさんが座り、ギルド職員の女性が紅茶のような飲み物をテーブルに並べて退出すると、ジャコモさんが交渉の口火を切った。

しかし僕はその前に、ひとつ試したいことを思いついていた。

ある意味、ジャコモさんに対するちょっとした悪戯でもあり、実益も兼ねている。

上手くいけばジャコモさんのポーカーフェイスを崩せるかもしれない。


「ジャコモさん、買取交渉の前にひとつお願いしたいことがあるんですが。」

「ほう、どんなことかのう?」

「ジャコモさん、武具鑑定、できますよね?」

「もちろんじゃ。ウィン殿が人物鑑定で見た通り、上級の武具鑑定持ちじゃよ。」


ジャコモさんは笑いながらそう答えた。

やっぱり、ジャコモさんに人物鑑定かけたのバレちゃってたか。

まあ予想はしてたけど。


「鑑定してもらいたい武器があるんですけどいいですか?」

「構わんが、それも買取対象かのう?」

「いいえ、その武器は売りません。ただ、僕ではまだ鑑定できないので。」

「ほほう、ウィン殿も武具鑑定持ちなんじゃな。わしに頼んでくるということはウィン殿は初級か中級かのう。本来なら武具鑑定にも料金が発生するんじゃが、大きな取引も控えておるし、今回は無料で見させてもらおうかのう。」


僕の言葉遣いのせいで、僕自身も武具鑑定持ちであることがあっさり見抜かれてしまった。

隠すつもりはないので問題はないけどね。

それでは早速、ジャコモさんに武具鑑定してもらおう。


「これですが、鑑定お願いします。」


僕はそう言いながら短剣(黒)をマジックバッグから取り出して、ジャコモさんに渡した。

ジャコモさんはしばらく短剣(黒)を見つめていたが、すぐにその目を大きく見開いた。


「こ、これは・・・」


僕はジャコモさんが驚く様子を見て思わず微笑んだ。

悪戯成功。

やっとジャコモさんの表情を崩すことができた。

この世界の僕って、やっぱり性格が悪いのかもしれない。

いや元々性格が悪い可能性も・・・

でも楽しいからいいか。

読んで頂いてありがとうございます。

徐々に読んで頂ける方が増え、励みになります。


誤字・脱字のご指摘、ありがとうございます。

ご感想を頂いた皆様、感謝いたします。

ブックマーク・評価を頂いた皆様、とても励みになります。

ありがとうございます。


次回投稿は3月15日(水)です。

よろしくお願いします。

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