101.さらに武具を作ります(鑑定クエスト:武具鑑定)
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第二章 葡萄の国と聖女
主人公が戦闘狂の聖女と知り合い、葡萄の国で様々な出来事に遭遇するお話です。
週3回(月・水・金)の投稿となります。
よろしくお願いします。
第二章 葡萄の国と聖女(101)
【コロンバール編・港町ポルト】
101.さらに武具を作ります(鑑定クエスト:武具鑑定)
ミスリルのインゴットを『錬金』すると、白い短剣になった。
黒い短剣ができた時にも思ったけど、これは『錬金』というより『鍛治』なんじゃないかな。
あるいは『剣創造』とか、『武器作成』とか。
前回、「中のヒト」に聞こうとしたら冷たくあしらわれたけど。
僕の中にある『錬金』のイメージは、物質を変質させて別の物質にする、「鉛を金に変える」って感じなんだよね。
でもスキルの『錬金』はどうやら少し違うようだ。
…ウィン様、『錬金』について説明させて頂いてよろしいでしょうか?…
白い短剣を見つめながら『錬金』について考えていると「中の女性」のメッセージが流れた。
『錬金』について説明してくれるらしい。
もちろんすぐに承諾する。
…『錬金』は元となる材料を変化あるいは変質させて何かを作り上げること全てを含みます。ですので、鍛治や製作、製造、建築、精錬など物作りはすべて該当します。また材料は鉱石や金属に限定されません。そういう意味では『料理』も『錬金』のひとつですね。…
「中の女性」がかなりしっかりと説明してくれた。
対応の仕方に、真面目さと丁寧さの要素が大幅に増加してる気がする。
何かあったんだろうか。
でもこちらとしてはありがたいことなので、余計な指摘をするのはやめておこう。
それにしても『錬金』、万能すぎじゃないですかね。
今まで放置していたのが悔やまれるくらいに。
もう少し熱心に検証しておくべきだった。
あ、ちょっと待って。
『材料を変化、変質させて何かを作れる』ってことは、もしかすると葡萄を錬金するとワインができたりしませんかね?
…もちろん、できます。…
できるんだ。
『錬金』で醸造も蒸留もできるってことだよね。
よし、これで原料さえ手に入ればいろんなお酒が作れる。
調味料も出来そう。
なんか生活レベルが爆上がりしそうな予感。
ダンジョン出たら、いろいろ試してみよう。
「ウィン、物思いに耽ってるところ悪いが、説明をお願いする。」
『錬金』の可能性について、あれやこれやと思いを馳せていると、ルルさんから声がかかった。
ルルさんがいること、すっかり忘れてました。
申し訳ありません。
「ルルさん、すみません。『錬金』のことに思考が行っちゃってました。それで、何の説明でしょう?」
「もちろん、その白い短剣についてだ。」
「ええっと、ミスリルの短剣? たぶん?」
「そんなことは分かっている。なぜミスリルが燃える? なぜ燃えると短剣になる? なぜ錬金で短剣ができる?」
「ええっとですね・・・なぜでしょう?」
僕の答えを聞いてルルさんはガックリと肩を落とした。
いや答えじゃないな。
質問に対して疑問で返した感じ?
そりゃ呆れるだろうけど、理由なんて分からないんだからしょうがないよね。
「とにかくですね、『錬金』を使うといろいろな物が作れるみたいです。」
「そんなスキル、あっていいのか?」
「いいのかって言われても、あるから仕方ないです。」
「ウィン、私が言うのもなんだが、もう少し遠慮した方がいいぞ。過剰が過ぎる。」
過剰が過ぎる?
やり過ぎの2乗ってことかな。
まあ言いたいことは分かりますが、自分でできることに関しては自重しません。
楽しい生活のために頑張ります。
…ウィン様、説明、追加してもよろしいでしょうか?…
「中の女性」から再びメッセージが流れた。
とても丁寧な口調(文体?)。
(ポッ)とか(キャッ)とか(赤面)とかがない。
アップデートで不具合が修正されたとかかな?
そんなものがあるのかどうか知らないけど。
うざいのをやめて欲しいと望んだのは僕だけど、まとも過ぎると物足りなく感じるこの気持ちは何だろう?
まあ、とりあえず追加説明を確認しよう。
…短剣(黒)と短剣(白)は同調しております。従ってクエストで成長させると両方とも同期して成長します。…
黒と白は同調してると。
ということは、白い方も形状を変化できるってことだよね。
僕は白い短剣を手に取り、『剣』と念じてみた。
白い短剣は白い剣に変化した。
次に『長剣』と念じてみた。
白い剣は白い長剣に変化した。
これで手持ちの武器は2本になった。
でも黒と白で何が違うんだろう?
材質が違うだけなんだろうか?
「中の女性」、そこは説明ないの?
…武器に関する情報は『武具鑑定』の範疇となります。武具鑑定クエストを表示しますか?…
おお、『武具鑑定』来た。
商人ギルドのジャコモさんが持ってたスキルだよね。
もちろん、クエスト表示、よろしくお願いします。
○鑑定クエスト
クエスト : 武具を作れ①
報酬 : 武具鑑定(初級)
達成目標 : 武器・防具の作成(10個)
鑑定項目 : 武具ランク(C〜E)・材質・特性
カウント : 2/10
武具鑑定クエストが表示された。
武器か防具を10個作れば初級を獲得できるようだ。
カウントが2/10になっているのは、短剣(黒)と短剣(白)を作成したからだろう。
『錬金』で作成できるなら材料さえあれば10個くらいすぐ作れそうだ。
「リン(主人)!」
武具鑑定クエストのことを考えていると、いつの間にかスラちゃんが僕の足元に来ていた。
そしてスラちゃんの前にはミスリルのインゴットが2つ置かれている。
3つのドロップのうち1つは『錬金』で短剣(白)になったので、残りの2つだ。
スラちゃんが再び触手でその2つのインゴットをビシッと指し示し、その後シャドーボクシングのような動きをし始めた。
「スラちゃん、それ何? 錬金してボクシング?」
「リン(おしい)!」
「錬金してディーくん?」
「リン(違う)!」
「錬金して・・・」
「リン(ルルちゃん)! リン(ナックル)!」
ああ、ルルさん用にナックルを作れってことかな。
それなら初めからジェスチャーじゃなくてそう言えばいいのに。
それにしてもスラちゃんもルルさんのこと「ルルちゃん」呼びなんだね。
従魔たち全員、その呼び方で統一されてるのかな。
まあルルさんは、どう呼ばれても気にしてないのでいいけどね。
さて、ナックル作りに挑戦してみますか。
今までの短剣2本は何を作るか意識せずに『錬金』したので、作る物を決めて『錬金』するのは初めてになる。
だから思い通りの物を作れるかどうかは、やってみないと分からない。
でも今までのパターンから考えると、強くイメージすれば上手くいくような気はするけどね。
「錬金!」
スラちゃんが離れたのを確認して、2つのミスリルのインゴットに向かって『錬金』を発動した。
青い炎が2つ、大きく燃え上がる。
あれ、今想像したの、ナックルだっけ?
もしかすると別のものを想像したかもしれない。
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