13.
笹島は最近ずっと考えていた。
死ぬべきか、生きるべきか。
死ぬなら篠塚に殺されたいが当の本人はそんな気もなく、また笹島は自分から死ねないでいたから生きていくしかなかった。
別に死ぬことも生きることも嫌ではない。
中途半端な自分に自己嫌悪することもある。
死ねない死にたがりが行き着く先はどこだろうかと考えるには若すぎると篠塚にも間宮にも言われたが、言った当人達は仕事として人を殺している。
まるで説得力がないな、とは思ってもそもそもの感覚が違うのだろう。
笹島は痛いのも苦しいのも辛いのも嫌いだし嫌だ。
だからこそ自分で死のうとする時は楽で苦しまないような方法を探すのだが、死ぬことはなかなか楽ではなかった。
「人生ってままならねーな」
「何を急に達観したじじぃみたいなこと言い出してんだよ」
死にたいと言い出したらまた目の前の男は否定すると笹島は知っている。
人を殺すことをしておいて人を殺したがらないのだ。
「矛盾だらけの人生だな」
「なんだ、お前のことか。死ねない死にたがり」
いつもの薄い笑みでからかうように言われるが、笹島は納得した。
笹島も篠塚も矛盾を抱えている。
その矛盾のどちらが幸せなのか。
「お前のこと、やっぱよくわかんねーや」
「奇遇だな。俺もお前のことは分からん」
軽口を言っていても言葉は重い。
なんで幼稚園から高校までずっと一緒にいて篠塚の怪しげなバイトに気付かなかったのか、最近になってこんなに親しくなってきたのか、それでも未だにお互いのことすら分からない。
だからこそ、この関係が心地良いのかもしれない。




