伝えたい事
病院のベッドの上。
点滴を打たれていた。
最近、しんどかったんだよね……。
私、倒れたんだね。
1人で寝ていたら病室に夫が入ってきた。
「どう? 気分は? しんどくない?」
「よくもなく悪くもなく? ごめん、私、倒れたんだね」
「疲れが溜まってたかな……。 今はゆっくり寝ときなよ」
夫の感じと自分の体の重さ、私はあまり良くないのかな、と思った。
しばらくしてもあまり変わらなかった。
私は命の期限を悟った。
私は退院して家に戻った。
期限があるのなら、住み慣れた家がいい。
その方が毎日楽しく過ごせる。
1日1日を大事に過ごした。
少し気分の良い日、私は菜砂に外へ連れ出してもらった。
そこは小高いところにある公園奥にある見晴らしのいい場所。
「こんなとこ、知ってたの?」
「ここね、お母さんが大好きな場所なんだよ。 何か悩んだり、モヤモヤしたりするとここに来て何もせずぼーーっと過ごすの。 何時間もいた時もあるよ。 それくらい大好きな場所。 やっぱりここは気持ちいいな!」
「あの橋のね、ずっと先、ずーっと先にね、ピカピカ光るものがある感じ? そんな感じがしてね、ここに来てそのピカピカ光るものを感じて元気になって帰ってた。 お母さんの感覚だから菜砂にうまく説明できないけど……」
「ねぇ、最近、廉くんと会ってないんじゃないの?」
「会ってないけど……」
「ねぇ、連れてきてよ。 お母さん、会いたいな」
そう言って菜砂にお願いした。
週末、廉くんが久しぶりにやって来た。
「調子、どうですか?」
「あ、廉くん、久しぶりだね。 今日はいい方かな? 廉くんのご家族のみなさんはお元気?」
「元気ですよ!」
「そう、それはよかった! 廉くんの話が聞きたくてさ、菜砂にお願いしたの。 ごめんねー!」
私は時間の許す限り廉くんと話をした。
「ねぇ、廉くん、ご両親に直接お礼が言えなくてごめんね。 菜砂によくしてもらって本当に感謝してます! もし、菜砂との未来があるなら、その時に廉くんのお父さんに伝えて欲しい事がある。 『警察のお仕事の話、聞きたかったです』って。 昔、警察のお仕事の事を興味はあったんだけど話せない事も多いだろうし……って思って、あえて聞かなかった事があるのよ。 廉くんのお父さんになら聞けたかも知れないね!」
「じゃあ、今から電話します? 暇してると思いますよ!」
「いやいや、そこまでしたらご迷惑だからかまわないよ。 お気持ちだけで充分……ありがとう」
私が蓮くんと話した最後の言葉。
せいさん、2人に同じ未来はある?
見守ってあげてね。
お願いね。




