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婚外恋愛  作者:
75/84

所長との最後の時間

 パーティーは始まり、いろんな人が所長の周りに集まっていた。

 しばらくは話せそうもないので、様子を見て話に行こうと思った。

 長谷川さんが言っていた、旧営業所メンバー。

 ほぼ全員集まっていた。

 私以外はみんな営業さん。

 今は、全国に散らばってしまったみたい。

 だからこうして集まれるのも最後かも知れない。


「こむちゃん、来るって噂、流れてたんだよ! 部長が呼んでって?」



「先輩から所長がそう言ってるからって連絡もらいました……」



「部長もやるよねーー! こむちゃんにもなかなか会えないからさーー、来てくれてよかったよーー」



 いろんな人といろんな話をしていた。


 何となく気にしていた宮坂さんと話せたのはそれからしばらくしてからだった。

 トイレから戻って会場に入ろうと出入り口付近に来た時、通路のソファに宮坂さんが座っていた。


「こむちゃん!」



「あ! 久しぶりだね。 宮坂さんも来てたんだねーー! 気付いてびっくりしたよーー!」



「それを言うなら、俺の方もびっくりしたよーー。 こむちゃん、来てると思ってなかったから……」



「呼んでくれたんだよーー。 ありがたいーー。 今日は泊まり?」



「いや、パーティー終わったらすぐ社長と帰るよ。 こむちゃんは?」



「私はみんなと話したいから泊まりにしたの。 明日帰るよ」



「そっかーー。 こむちゃん、何年ぶり? あの日以来だよね?」



「そうだよねーー。 お昼行って以来だよね。 元気にしてたの?」



「まぁね……。 こむちゃんに振られちゃったから大人しくしてたよ……。 こむちゃんに連絡するのはよくなよなって思ってさ……連絡しなかった。 なかなか割り切れないんだよ」


 そう言って笑って話した。


「時間かかるけどさ、吹っ切れたら連絡するから待っててよ。 こむちゃんも俺を友達でもいいから思ってて欲しい……」



「宮坂さんは大切な友達で、それはこれからも変わらないよ。 そんなにもさ、思ってもらってありがとうね。 ほんとごめん……」



「いや、俺んとこ来てくれるのが一番なんだよーー。 って、そう言って困らせるつもりはないんだけどね……。 そういう訳にもいかないのもわかってるから。 自分の中の問題だね……。 ……何が違うのかな……」



「え?」



「いや、何でもないよ。 今日はパーティー終わってもみんなと過ごすんでしょ? 楽しそうだね」



「何か、みんな気持ちが若いから……。 私、ついていけないかもね……。 一人でホテル帰って寝てるかも知れないよーー」


「宮坂さんも今日、気を付けて帰らないとね!」



「ほんとだねーー」



「でも、取引先の人もパーティーに来てたんだねーー」



「何社か来てるよーー」



「私、どの人が身内なのかわからないから……」



「あははーー! そっかーー!」



 和やかに二人で会場へ入った。



 所長とも無事、話す事ができた。


 懐かしさもあり、感謝もあり、これで会えるのも最後かも知れない……と、いろんな感情が入り混じり涙が溢れた……。


 右も左もわからない社会人1年生の私を優しく見守ってくれた事、当時の私も気付いていた。


 ミスは誰にでもある、ミスをして覚える事だってある、とにかくやってみろ、楽しんでやってみろ、そんな事を教えてもらった。

 私は仕事の楽しさを知り、大阪へ転勤もした。

 大阪でもたくさんの大切な人と出会い、内容の濃い2年間を過ごさせてもらった。

 それは山城所長のおかげ。



「私を社会人として育ててくれてありがとうございました」



「こむちゃんが頑張っただけ! 俺は何もしてないよ。 こむちゃんの朗らかさ、ほんと助かったよ。 野野ばっかりの事務所だったからさ、いつもニコニコして嫌な顔一つせず、とことん仕事と向き合ってくれたし、無理言って残業になった事もあったよね? できる事を精一杯やってくれた、ありがとうね! 今日も遠いところ来てくれてありがとう。 声かけてよかった! 会えてよかった!」


 最高の褒め言葉だった。


「今日は楽しもう! 旧営業所メンバーも集まった事だし!」



 今日、本当に来てよかった……。

 私は所長との最後の日をめいいっぱい楽しもうと思った。



 パーティーも終わり、これから場所を変えてまだ続ける人だけ残り始めた。


 最後に所長に挨拶をして帰って行く。

 その中にも旧営業所メンバーもいた。


 挨拶終わりに声をかけ、私も最後の挨拶をする。


 宮坂さんも所長と挨拶を済ませた後、声をかけ挨拶をした。



 誰かが次の場所へと誘導してくれた。

 私は先輩と一緒にその場所へと向かう。


 終始、所長が楽しそうで私は嬉しかった。

 それを見れただけでも今日来た甲斐があった。


 会の途中、長谷川さんに声をかけられた。


「こむちゃん、ちょっといい? この会、まだまだ続くんだよ。 ちょっと抜けない? また戻るんだけど、ちょっと行きたいとこがあるんだけど」



「え? 抜けるんですか!? 帰ってきます??」



「ぜーったい帰ってくる!! 歩いて10分!!」



「……わかりました……。 絶対ですよ!」



 私は長谷川さんの【歩いて10分の行きたいとこ】に同行する事にした……。

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