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婚外恋愛  作者:
7/84

気持ちの変化

 大阪。


 まさか、大学まで地元で通った私が仕事で大阪で暮らす事になるなんて……。

 よく大阪には遊びに来ていたけれど……まさか住むとは思っていなかった。


 大阪の営業所の人はみんな優しく私を受け入れてくれて、人見知りな私も初日から楽しく仕事できた。

 大阪にまだまだ慣れない私を気遣ってくれてありがたかった。

 会社帰りに知らない人に声をかけられ、今から遊びに行かない?と言われて何とか断った話をしたら、あの時間、あの道はあんまり通らない方がいいよ!と、迂回ルートを教えてくれたり、しばらく誰かしらが帰り一緒に帰ってくれたり申し訳ないくらい優しくしてもらった。

 お休みの日は大阪の街を案内してくれて一緒にいてくれたり、私が退屈しないかな?ってお休みなのにいろいろ考えてくれたり。

 いつも誰かが気にかけてくれていた。

 元気いっぱいの営業所で自分の営業所がなくなって寂しく悲しかった気持ちを忘れそうになる程、いつもみんな明るかった。

 遊びに来て好きな所だったけど、住んでもっと好きになった。

 

 仕事はというと、人や環境に慣れるのが早かった事もあって案外早めに元の業務に戻れた。

 相変わらず忙しい事に変わりはなく、その忙しさを楽しんでいる自分がいた。

 小さい営業所と違って、私と同じ事務の先輩もたくさんいてわからない事もすぐに聞けて、フォローまでしてもらえる環境にありがたく、スキルアップできる喜びもあり毎日が仕事だけだったけど充実していた。

 先輩も、営業さんも、みんないい人。

 工場の人たちも私が大阪で業務をやっていく事を応援してくれたり、人との繋がりに感謝した。


 大阪での暮らしも2ヶ月くらい経った頃、宮坂さんが大阪へやって来た。

 2ヶ月ぶりに会う事になる。

 金曜日、仕事を終えた宮坂さんはそのまま車で大阪まで来てくれた。

 私が住んでいるアパートにも初めて入る。

 一人暮らし、日頃はサッとしか掃除してなかったので昨日必死で掃除した……事を白状した。


「こむちゃん、痩せた? 何かちっちゃくなった気がする」


「ちゃんと食べてる?」


「もっと顔よく見せて」


「ずっと会いたかったよ」


 いつもより力を強く感じたその腕に、私への変わらない愛を感じつつ、心で鳴った「チクっ」という音を私は聞き逃さなかった。


 その日の夜は、いつもより強く、いつもよりたくさん好きと言われた気がする。

 握られた手が痛い程、力が込められていた。

 会えなかった時間を埋める様にいつも以上に優しく、でも強く愛してくれた。

 溶けてしまいそうな程こんなに想ってもらって幸せな時間を過ごしていいのかな。

 幸せ……だよね。

 私はさっきの「チクっ」が気になっていた。


 宮坂さんが大阪にいる間はいろんなところへ行ってみた。

 一人じゃ勇気がなくていけない場所も一緒に行ってもらったり。

 久しぶりにたくさん笑ったし楽しかった。

 でも何だろう……?

 楽しいのに何かしっくりこない……。

 せっかく二人でいるのに私は心の中で違う事を考えていたりしていた。

 

 宮坂さんが帰る日はどこへも行かず部屋でゆっくりしていた。

 出発まではあと3時間くらい。

 これからまた車で帰る。


「運転、大丈夫? しんどくない?」


「大丈夫。 こむちゃん、こっち来て」


 私をソファーに呼び寄せた。

 残り少ない時間、側にいて欲しい。

 手を繋ぎ、見つめられる。


「こむちゃんとの時間、あっという間だったよ。 俺、もう帰らなきゃ。 離れるの嫌だな……」


 そう言ってくれる事は嬉しかった。

 けど、明日からまた宮坂さんのいないいつもに戻る事に寂しさを感じていない自分もいた。


 宮坂さんからの真っ直ぐな気持ちは時に眩しすぎる。

 抱きしめられる事もキスも愛される事も全て私への愛でいっぱいなのは感じ取れる。

 私もそれを嬉しく感じているのに。

 なのに私は、『けど』という言葉が頭から離れない。

 

 ひっかかったものがわからないまま、宮坂さんからの愛をたくさん受けていいのかな。

 私の心も身体も愛おしいと思ってくれる宮坂さんと、私との違い。

 

 私には考える時間が必要だった。

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