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婚外恋愛  作者:
66/84

《軽い嫉妬》

 さえと連絡を取らなくなって1年が来ようとしていた。

 俺は相変わらず仕事、仕事の毎日だった。


 SNSにログインするが、いくら待ってもさえがログインする事はなかった。


 何度かDMを送ったが、読んでないって事だ……。


 ほんとにさえはいなくなったんだ……。

 そう思えるまでに時間はかかったが、さえと最初に決めた事であって、その時期になっただけ。

 けれど、その時期がさえと俺では違っていた。

 もう少し付き合っていたかった……。


 さえとは違う誰かに満たされる事はない。

 さえだから好きになってしまった。


 けれど、お互い既婚者。

 許される恋愛ではない。

 それはわかっていた事、お互い、変化を望まない関係であればいつかは【その日】が来る。


 俺はまだ続けたかったが、さえが離れて行ってしまった事はよかったんだと最近になってようやく思える様になった。


 甘いよなぁ……俺は……。


 これでよかったんだ。

 さえは幸せであれ…そう思った。


 俺はさらに仕事に打ち込む。

 仕事漬けの毎日だった。




 恒例の高校の同級生の飲み会。

 俺は前回、前々回と仕事で参加できず、今回久々に参加する事ができた。

 今回は真吾が欠席らしい。

 斎藤とハセと俺の三人。


 俺は、最近飲みに行く事もなく、久しぶりの飲み会を楽しみにしていた。

 しかも気心許した友達との飲み会、自然とテンションも上がる。


「ちょっと、トイレ」


 そう言って斎藤が席を離れた。


 その時にハセからこんな話を聞いた。



「この前さ、地元の取引先の営業がうちの会社に来ててさ、その夜、飲みに連れてったんだけど……」


「征一郎さ、こむちゃんと会ったよね……?」



 え?

 その営業と飲みに行った話とどう関係があるんだ!?

 それ、いつの話?



「え? いつ?」


 地元に帰った時にさえと会ってるところを誰かに見られたのかな…。

 俺は内心焦っていた。

 ハセの話の続きを聞かないと答えられない……。


「いつかは聞いてない。 その話聞いた時、征一郎かな?と思っただけだから」


 その話って、何……?

 けど、ハセは深刻そうじゃないし……。

 何? 何の話……?



「俺? 何の話?」



「なんかさ、こむちゃんに会いにバイト先行ったら、コーヒーショップで男とお茶してるのを見たんだって。 で、たまたま帰る時にその男が乗った車に遭遇したらしくて、そのナンバーが地元のじゃなかったみたいよ……。 聞いたら征一郎と一緒だったから、それって征一郎かな?と思ってさ」



 たぶん、2回目の時の話かな……。



「じゃあ、それたぶん、2回目会いに行った時かな……。 この前ハセにこむちゃんに会った事、話したでしょ? その時コーヒーショップで話したよ。 それ、見たのかな?」


 何でもない話でよかった……と安心した。

 けど、それがどうしたんだろう?


「それがどうしたの……?」



「あぁ、あの会ったって言ってた時の話かー。 その時見たのかなー? そいつがさ、そんな話しててさ……」


 で、どうしたんだろう??


「前さ、こむちゃん、鈍感だから得意先の営業から好かれてるのに気付いてなかったって話したでしょ? その営業がこっちに来てたんだけど、まだこむちゃんの事、好きみたいよ……。 結構飲んだから本音が出たんだと思うよ……。 いつもそんな飲む奴じゃないけど……その時は飲んだねー。 そいつが言うには、その会った人と何かあると思うって。 征一郎、何かあるの?」


 ハセは笑ってそう言った。

 無い事が前提で俺に聞いてきてるのはわかる。


「こむちゃんとこの前、お昼一緒に行ったんだって。 その時にさ、ストレートに言ってはないけど、好意を持ってる事を伝えたらしいけど、だめだよ、って言われたって。 まぁ、当たり前だよな……。 そいつはコーヒーショップで見た人と自分とじゃ何が違うんだろう……って思ってるみたいよ……」


「軽い嫉妬です……って、言ってたよ……。 まだ未練タラタラなんだってさ……。 征一郎かなー?とは思ったけど確信も持てなかったし言わなかったけど……。 そいつもさ、今頃こむちゃん好きな事白状してさ……、ちゃんとその時白状してたら協力してやったのにさ……。 あ、こむちゃん、バイト辞めて就職したらしいよ」



 そっか……。 さえ、バイト辞めだんだ……。



「俺は何もないよ……。 こむちゃん、バイト辞めたんだね。 けど、何でそれが俺だとして、嫉妬するんだろう……?」



「二人で話してるのを見てこむちゃんの感じがいつもと違うなって思ったんだって……。 最初、旦那さんなのかな?って思ってたけど、後で聞いたら旦那さんじゃなかったって。 おいおい……征一郎、どんな空気感だった訳?」



「普通だと思うけど……。 気になってるからそう見えたんじゃない?」



 さえをそんなに好きなやつがいるんだ……。



 実は、さえと連絡が取れなくなった後、実家に帰った時、バイト先を覗きに行った。

 会って話したくて会いに行ったが、さえには会えなかった。

 辞めてたんだ……。

 そりゃ、会わないよな……。


 俺からすれば、さえに会えたり、直接連絡できたり、そんな事できるのはいいな……、 そう思う。


 軽い嫉妬?


 それは俺の方だよ……。


 会いたくても会えない、触れられる距離でいられない、連絡もできない……。


 間接的とはいえ、その営業からさえがバイトを辞めた事を聞かされた訳で……。


 未練タラタラなのは俺もそうだよ!!


 心の中でそう思った。


 ……けれど、仕方ないんだ。


 仕方ない……。


 仕方ないという言葉しか出てこない。

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