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婚外恋愛  作者:
64/84

最後のランチ

 宮坂さんのLINEには、明日ランチに付き合って欲しいとだけ記されていた。


「どこだろう?

 お昼休み、1時間で帰れるとこじゃないとダメだけど……」


 私はそう返信した。


「あ、そっか! 聞いてなかった! こむちゃん、仕事、どこ?」



「市役所の近く」



「じゃあ、12時に市役所前集合でいい?」



「わかった」



 約束はしたものの、頻繁には会うのはよそう、そう思った。

 スイミングで会って話すのとは訳が違う……。

 わざわざ約束するのはよくない。

 元カレではあるけど、友達だと思っている。

 友達だしランチくらい……ではあるけれど……、回数を増やすのは何もないとはいえしない方がいいのかな、私はそう思っていた。



 ……と、自分でストップできるならせいさんもストップしておけれなかったか……。

 そんな自問自答しながらも、

 明日でちょっとやめにしておいた方がいい。

 そう思った。


 次の日のお昼休み、市役所前に行くと宮坂さんは着いていた。


「早いね。 こっちの方に営業だったの?」



「何軒かはあるけど今日は違うよ。遠方の客先に行った帰り」



「そうなんだ。 で、どこ行くの?」



「裏の定食屋さん」



「あ、いいよ。 歩いて行けるね」



 私たちは歩き出した。

 12時過ぎは外には人がいっぱい。

 みんなランチを求めて外に出るのだ。

 ランチ難民にならない様にみんな必死。

 1時間という短い時間で、どれだけお腹と心を満たすかが勝負。


 定食屋さんに着いた頃にはもういっぱい。

 運良くカウンターが空いていたのでそこに座らせてもらう。

 日替わりを注文して待つ。



「仕事、大変?」



「まぁ、こんなもんなんじゃない? 最近、出張が増えたかな」



「出張を任せられる歳になったんだよー。 任せられないより任せてもらえる方がいいんじゃない?」



「そうなのかなー? 面倒な事やらされてる気もするけど……」



 変わらず前向きに仕事してるんだろうな……。

 そういうところ、評価されるんだよ。

 宮坂さんはそういう事に欲のない人だ。

 さらっとスマートに仕事をやってのける人。

 偉そうにしないし、だから人受けもいい。



 日替わりが運ばれてきた。

 時間を気にしながら食べる。

 早く食べなきゃいけないのが苦手……。

 男の人相手だと尚更早く食べなきゃいけない……。

 必死とはこの事だ……。

「ゆっくり食べていいよ」

 そう言うが、そういう訳にもいかない……。


 何とか食べ終わりお店を出た。

 市役所前まで歩く。


「車、どこ停めたの? もうこのまま車の所まで行けばいいよ」



「いや、こむちゃん送るよ」



「いや、いいよー。 子供じゃないんだし。 早く行きなよー」



「俺がまだこむちゃんと居たいんだ」


「俺、もう独身だから言えるよ」



「いや……、私、結婚してるよ。 わかってるでしょ?」



「わかってるよ。 俺が想ってるのは勝手でしょ?」



「だめだめ……。 それにね、宮坂さんの私のイメージ、思ってるのとは違うよ……。 私はいい人じゃないんだよ……」


「思ってたんだ……。 ランチでも二人で会うのはよそう……」


 私はそう切り出した。

 そう言われるとは思ってなかったらしくびっくりした顔をしていた。


「こむちゃんは友達としてでいい」



「そういう訳にもいかないよ……」



 歩きながらそんな話をしていて結局、市役所前まで戻ってきてしまった。


「じゃあ、戻るね。 気を付けて帰ってね!」



「こむちゃん、また連絡するから!」



 私たちはそこで各々行くべき場所へ向かった。


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