追及
「私に聞きたい事? 何だろう??」
「ひっかかっててさ…。 またバイト先行った時でも聞いてみようかな…って思ってたんだけど、なかなか行けなくてねー。 聞くタイミングも逃してたってのもあってさ…」
ひっかかる?
何にだろう??
「あ、私、バイト辞めたんだよ。 今、働いてるんだよ」
「え! そうだったの!? いつから?」
「4ヶ月くらい前に辞めたかな。 仕事初めて3ヶ月くらいかな…。 仕事初めてから宮坂さんと会ってなかったのかな?」
「そうかも知れないねー。 知らなかったよ。 大変?」
「少しずつ慣れてきたかな…。 何とかやってるって感じかな…。 あ、ごめん、話、それちゃったね…」
「いや、いいよ。 前さ、別居してる事を話した時に、俺に【奥さんと出会って結婚して子供に会えた訳だから奥さんとの出会いにも意味があるんだよ。 それは私も一緒。】 ってこむちゃん言ったんだよね」
何か、そんな事言った気がする…。
「何かそんな話したね…」
それがどうしたんだろう?
「俺、【それは私も一緒】ってのに引っかかったんだよ。 こむちゃんも自分もそう思おうとしてるところなのかな…って思った。 こむちゃん、何かあるのかな…?って思った…。 違う?」
でちゃったのかな…。
いや、でも言葉の取り方だよね…。
「いや、考えすぎだよ…。 そんな深い意味はないよ…」
「あのコーヒーショップの人と何かあるのかな、と思った。 同僚って言ってたけど、仲がいい同僚って感じがなくて深刻そうな感じに見えたから」
宮坂さんは勘がいいんだ…。
私は何とか冷静でいようと頑張った。
けれど、宮坂さんの話はまだ続いた…。
「あのコーヒーショップの人、こっちの人じゃないんじゃない…? 俺、あの後、買い物して帰ったんだけど、地下駐降りてすぐ目の前を通った車がさっきの人だって気付いたんだけど、車のナンバーがこっちのじゃなかったから…」
「その時は旦那さんなのかな…って思ったからそこまで気にしてなかったけど、後で聞いたら同僚だって言ってたから…。 わざわざ来たのかな….と思ってさ…」
「何もないよ。 あの人は今はこっちにはいないんだよ。 こっちに実家があってね、帰ったついでに時間があったからお茶しただけだよ…。 …そんなに深刻そうに見えたのかな…。 そんな事なかったんだけど…」
心臓がバクバクいってる…。
今は宮坂さんが勘違いだと思ってくれる事を願った。
「そうなんだ…。 じゃあそういう事にしとく。 スイミング最後の日にこむちゃんに会えてよかったよ。 またランチ、付き合ってよ!」
「わかった、ランチね。 また誘ってよ。 少しさっきよりは元気出たみたいだね。 また何かあったらいつでも聞くよ」
「こむちゃん、やっぱさ……、まぁいいや。 あ、もうすぐ終わるよ。 観覧席、行っとく?」
私は何とか勘違いだと思ってくれた事に胸を撫で下ろした。
もうせいさんと会う事はないから目撃される事もないだろうな…。
それにしてもほんとにびっくりでしかなかった。
宮坂さん、タイミング良すぎ…。
何か言おうとしたのをやめたけど、何が言いたかったんだろう…。
けど、また言いたくなったら言ってくれるかなと思ってあまり気にしてなかった。




