目撃
「あの時、もし別れず付き合っていたら違う未来があったと思ったら今ある現実を受け入れられなくなって投げやりになっていた部分はあると思う……。 妻はこむちゃんの存在を知らない。 けど、理由はわからないけど、自分が俺にしっくりきてないって思ったんだと思う……」
私は自分の今の気持ちを話す事にした。
「確かにあの時、私は仕事を優先した。 仕事が大好きで楽しくて、辞めるなら、今、目の前にある仕事をやり切ってから辞めたかったし、悔いを残したくなかった。 私を大切に思ってくれている事は凄いわかったんだよ、だから2番は失礼だと思った。 だから別れようと思ったんだよね。 元の仕事上の知り合い同士に戻ろうって言ったんだよね。 私のわがままだと思うよ……」
「嫌いで別れた訳じゃないから、だから今もこんな風に話できたりする。 あのまま付き合っていたらきっと結婚しただろうなって思うよ。 けど、タイミングが合わなかったんだよ、きっと……」
宮坂さんともし結婚していたら、私はせいさんとも出会ってないのかも知れない……。
不倫なんてする事なかったかも知れない……。
「でもね、奥さんと出会って結婚したから、子供に会えた訳でしょ? 奥さんと出会う意味はあったんだと思うよー。 私もそれは同じ」
「ここでこむちゃんに会えたのは凄いって思った。 もう会えないと思ってたから……。 携帯番号も変わってたしさ……。 今でも変わらないこむちゃんに会ってドキっとしたよ。 あの時を思い出した……」
「変わらない訳はないでしょ……」
「いや、変わんないよ。 あの時のままだよ。 旦那さんが羨ましいな……」
「そんな事ないって……。 私はそんなにいい人でもないんだよ。 どこを見てそう思うのかわからないけど……いい人じゃないよ……」
いい人が不倫なんてしない……。
「奥さんともう一度話してみたら……? 奥さん、宮坂さんを待ってるのかも知れないよ……。 宮坂さん、いい旦那さんだし、いいお父さんだと思うから……」
「どうなのかなぁ……。 俺、どうしたいんだろう……」
「そういやさ、前、バイト先行ったんだよ。 そっちの方のお客さんがあってその帰りに寄ったんだ。 こむちゃんに声かけようかと思ったんだけど、先約があったみたいだったから……」
ん? 先約?
「私、誰かといたの? 声かけてくれていいのに」
「声かけようと思ったんだけど、コーヒーショップ入って行ってて……。 男の人が待ってたっぽかったから……。 あれ、もしかして旦那さん?」
せいさんだ……。 あの時、近くに宮坂さんいたんだ……。
「……あぁーー、たぶん前の会社の同僚だねーー……。 コーヒーショップでお茶した事あるから。 その時を見たのかな……。 旦那さんじゃないよ。 旦那さんは来ない来ない」
私は笑ったけど、どうしようもなく焦っていた……。
「旦那さんじゃなかったんだーー。 もしかしてそうなのかな……って思ってた」
心臓がバクバクいってるのがわかる……。
あの時、どうだったっけ……?
必死で思い出そうとしてるけど……もう覚えてない……。
冷静なふりして焦っている……。
「ちょっと考えちゃったんだよな。 あーー、あそこに俺、居れたはずなのかなーーって。 旦那さんでバイド終わりに迎えに来たついでにお茶して帰るのかなぁ……って……。 俺も絶対それやるなーー。 子供ができても夫婦の時間は作りたいよ。 それをできる旦那さんだと思ったあの人にちょっと嫉妬したよ。 どうにもならないけど……やっぱりね……」
今も大事に思ってくれてるって事なのかな……。
でも、私はいい人なんかじゃない。
宮坂さんが見たあの人は既婚者。
不倫なんだよ……。
夫と子供たちとの時間を潰してまであの人に会いに行ったりしてる最低な人間。
宮坂さんが思ってる程、私はいい人間じゃないんだよ……。
「今度そんな事があったら気にせず声かけてね」
私は話を切り替える様にそう言った。




