《ハセへの報告》
さえの送ってきた写真に引っかかった。
ランチに食べたおいしそうなパスタ写真。
その奥にシャツとネクタイを見つけてしまった。
友達に誘われ……と書いていたけど……。
実は旦那だったりして……。
もしかしてそれとは違う別の人?
気にはなるけどいい歳した俺が根掘り葉掘り聞くのもどうかと思うし……。
気になりつつも仕事が忙しくなり気に止める時間もなくなっていた。
そんなある日、ハセから連絡が入った。
「最近も忙しい? ちょっと飲みに行かない?」
ハセが直接そう言ってきたのには訳があるのはわかっている。
さえの事だと思う。
その後どうなったか報告してなかった。
言いにくいのもあったけど、仕事がバタついてて連絡すらできなかった。
何となく会わないといけない気がした。
逆に避けるのは良くない気がしてならなかった。
次の休みの日を伝えると、速攻折り返しが返ってきてその日に会うことになった。
ハセにも言えないさえの事。
ハセから何を聞かれるんだろうと若干の不安はある。
けど、隠し通さないと……そう思った。
予定時刻より早く着いた俺は個室に通された。
ハセはまだ来ていない。
このハセのいない一人の時間に頭の中を整理しようと思った。
いろいろ考えていたところにハセがやってきた。
「お疲れ! 待たせた?」
「いや、そんな事ないよ。 お疲れ!」
「ごめん、急に連絡して。 征一郎さー、忙しいのかその後の事連絡してこないからさ」
やっぱり……。 そうだよな……。
「ごめんごめん……。 忙しくてさ……。 俺も言わなきゃって気になってたんだけど……」
「で、こむちゃんに会って話せたの?」
「あー、会えたよ。 ちゃんと話もした。 今は友達って感じかな……」
「こむちゃん、何て?」
「ありがとう……って……」
「ありがとう?」
ヤバい……ハセが疑問に思ってる……。
「あーー、何か気持ちはありがとうって。 まぁ、今は友達。 たまに連絡取るくらいかな……」
焦る……。
「征一郎がそれですっきりしたんならいいけど……。 まぁ、こむちゃんは諦めろ!」
絶対付き合ってるなんて言えない……。
ハセには気付かれない様に写真の話をした。
「この前さ、こむちゃんからランチに食べたパスタの写真が送られてきてさ、少し男が写ってたんだよ。 友達に誘われて行ったらしいんだけど、こむちゃんって男友達多いの?」
久しぶりにこむちゃんって呼んだ……。
前はそれが普通だったのに今は違和感ありありだ…。
「何? 征一郎、気になるの?」
「いや、そうじゃないけど……どうなのかな?と思っただけ」
「どうなのかなーー? 一緒に仕事してた時は男のかげはなかったと思うけど……。 あ、でもお客さん受けはよかったよ。 こむちゃん、物腰柔らかいしさ、誰に対しても一緒だから」
「ふーーん……。 そうなんだーー……」
「俺が知らないだけで男友達もいるかもね。 まぁ、いるでしょ……。 こむちゃん、オールマイティだから。 こむちゃんを妬む人、いないと思うよ。 たまにいるでしょ? 誰からも好かれる人。 こむちゃんはそんな感じ」
「それだけいい子だったら、彼氏もずっと切れずにいたんじゃないの?」
ハセとの話で聞きたい事を聞いてみた。
「こむちゃん……うといから……。 自分への気持ちにうとい……! 得意先でこむちゃんの事を気になってる奴がいてさ、こむちゃんにアプローチしてたけど、たぶんあれ、玉砕したな……。 そいつも俺にこむちゃんの事が気になってる……って、はっきりとは言わないの。 けど見てたらわかるし! たぶん彼氏はいなかったんじゃないかな……」
「ここにこむちゃん呼んで三人で飲みたいね! いろいろ聞いてみたいわ……。 今度実現させる?」
ハセはその光景を想像して笑った。
ハセにいつか白状する日が来るんだろうか……。
俺もさえも今の関係を長く続けたくても続けれない事もわかってるけど……でも今はどうする事もできない。
さえって真面目だな……。
やっぱり遊んでない……。
ハセからさえの悪い話なんて出てこない。
むしろ、いい子ちゃんな話ばっかり。
逆な悪い事した事ないのかな……?
普通、一つや二つあるでしょ……。
あの写真は気にしない方がいいかも知れないんだろうな……。
けど、やっぱりさえって誰からも好かれるんだよな……。
それってやっぱりさ……。
「ハセはどう思ってたの?」
「え? こむちゃんの事? 同僚としか思ってない。 当たり前だろ? 結婚もしてたしさ。 いい子だとは思うよ」
さえの周りにはハセみたいな奴ばっかだといいのにな……。
真実じゃないとはいえ、ハセと話せて少し楽になった。




