濃密な時間
「さえだけの俺かぁ……。 さえも今は俺だけのものでしょ? 好きだよ、さえ。 やっと俺だけのものになった……。 時間限定だけど……」
そう言って抱きしめた腕に力が入った。
「さえってほんと小さいね。 さえ、痩せた? 何か前と雰囲気もちょっと違うんだけど……」
「嫌って事……?」
私は見上げてせいさんに聞いた。
「そうじゃないよ。 そうじゃなくて、髪が伸びたから? またかわいくなった……」
「痩せたよ。 3kgくらい。 ダイエットしたの。 綺麗になりたくて……。 髪は切ってないから前会った時より長くなった。 今日は毛先を巻いてきたの。 だからイメージが違うのかも知れないね」
「ダイエットしなくてもいいのに……。 抱きしめた感じが違う。 久しぶりだったからかな?と思ったけど痩せたのかーー。 もうダイエットやらなくていいよ。 髪型だけでこんなに変わる? 久々だから? めちゃくちゃかわいいんだけど……」
そう言われるのって、嬉しいけど同じくらい恥ずかしい……。
「きっとそれはせいさんに恋してるからかな……。 恋が私を綺麗にするんだよ……。 せいさんのおかげだね……」
「ねえ、お願い。 今日は甘えさせて……」
私はこのせいさんと二人だけの時間をもっと味わいたかった。
せいさんを独り占めしたかった。
「何、それ……かわいすぎ…。 いつそんなの覚えたの? さえはどんな事して欲しい? 今日は思いっきり甘えさせてあげるよ」
「今はさえは俺だけのものでしょ? 好きだよ、さえ。 さえも俺だけを見てよ」
「さえ、誰かに取られちゃいそう……。 俺、焦るよ……」
そう言ってたくさんキスをした。
「せいさん、ギュってして……」
せいさんの腕の中、こんなにも幸せでいいのかと思うくらい幸せを実感していた。
「せいさん、もっと強く……」
せいさんの厚い胸板……男の人って感じ……。
その感じがたまらなくよかった。
「それはいいけど、あんまり強くしちゃうと、さえのおっぱい潰れそう……」
そう言って笑っていた。
「せいさんにギュってされたりキスされたり、それだけでこんなに気持ちいいものなの? こんな風に思うの初めてなんだけど……」
「そんな事を口にする自分にも戸惑う。 せいさんの前だといつもの自分じゃない様な事言えたりする。 これがほんとの私なのかな……? そんな私、嫌じゃない?」
私は今思った事をせいさんに伝えた。
「それもほんとのさえなんじゃないのかな。 笑ってるさえも怒ってる……さえは……見た事ないな……、何か考え込んでるさえも眠そうにしてるさえも、かわいいさえも色っぽいさえも全部ほんとのさえでしょ?」
「いつもと違っても、俺しか知らないさえでいいよ。 俺が知ってるさえのままでいい」
「俺だって一緒だと思うよ。 さえにしか見せない顔はあるよ。 だからさえはさえが思うままで俺の前でいてくれればいいの。 気にしない」
そっか……私は私のままでいいんだ。
「せいさん……好き。 ほんとに好き……」
この甘い時間の為に私は生きている。
大好きな人からの眼差しを全て受け止めれる。
その大好きな人も私を求めてくれる。
名前を呼び、力強く優しく抱かれる事がこんなにも愛おしく温かで幸せなんだと思い知らされる。
「さえ、さえは誰のものでもないよ。 俺のもの」
せいさんの言葉は私をどんどん溶かしていく。
名前を呼ばれる度、ドキドキする。
「私はせいさんのものだよ。 心も体も。 今日だけは私もせいさんを独り占めできる日。 いっぱい甘えていい日でしょ?」
二人で深く溶けていく……。
「今は色っぽいさえだ。 そんなさえも好きだよ……」
「ちょっと……、恥ずかしいからそんな事言うのやめて……」
そんな事を言われて笑ってしまった。
セックス中に笑顔になる瞬間があるのは理想的だ。
でも、タイムリミットは刻々と迫る。
甘く優しい時間は長くは続かないのだ。




