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婚外恋愛  作者:
49/84

衝動的

 せいさんから夜、返事が返って来た。



「ただいま。 今日も仕事頑張ってきた。

 さえ、何かあった? どうしたの?

 俺もさえに会いたいよ。

 さえ、何か写真送ってよ。」



 写真かぁ……。

 何送ろうかなぁ。


 そうだ。

 今日食べたナポリタンの写真、送ろうかな。


 私はナポリタンの写真を送った。



 せいさんから返事が返ってくる。



「おいしそうだねーー!

 これ、今日食べたの?」



「今日、ランチで食べたよ。

 友達に教えてもらって行ってきたよ。」



「写真、さえでよかったんだよーー。

 さえが見たいよ。」



「恥ずかしいからやだ……。」


「けどね、せいさんに会いたくて、

 どうしようもなくなる瞬間がある。 

 電池切れるよ……。」



 私は会いたい気持ちを伝えた。



「さえ、また会おうね。 

 今度はGW過ぎかな。 

 GW避けて帰るつもりだよ。

 俺もさえの事しか頭にない。 

 好き過ぎるね……。」



「言葉だけじゃ無理……。」



 私はせいさんにはこんな大胆な事も言えた。



「無理でも我慢するの。

 かわいいな、さえは……。

 こんなかわいい事言う人いるんだって思うよ。

 さえは俺をその気にさせるのが上手いね。」



 好き過ぎる気持ちを伝えても全て受け入れてくれる。


 ほんとにせいさんじゃなきゃダメになってしまったんだ……。



 私は待つしかない。

 会えないあの人からの連絡を待つしかない。

 それを覚悟した恋愛。

 してはいけない恋愛。

 本人たち以外、誰も望まない恋愛。



 どうしても会いたくなった私は、せいさんが住むところ近くへ向かうバスの時刻表を見ていた。

 会えなくても近くに行きたい。

 

 私に許された時間は8時間くらい。

 そのうち4時間は移動時間。

 4時間くらいは自由にできるかな。

 今すぐは無理だけど、一度行ってみたい。

 会えなくてもいい。

 せいさんが暮らす場所の景色を見たい。

 それで満足する……。



 私のそれを行動に移す日はそう遠くなかった。


 ある日の夜、明日の子供たちの行事予定や持って行く物、帰宅時間を貰ったプリントを見ながらチェックしていて気が付いた。


 上の子の帰宅時間がいつもより1時間くらい遅くなっていた。


「何で1時間遅いの?」


「何か明日、教育委員会の人が授業見にくるんだって」


 確かにプリントにも書いてある……。


 明日私はバイトもお休み。

 これは行けって事だ……、と思った。

 私の頭の中で一日の予定表が作成されていく……。


 せいさんには向こうについてからDM送ってみよう。

 事前に連絡する事は簡単だけど、仕事の邪魔もしたくないし……お休みで予定があってもいけないし……。



 頭の中で持ち物や何を着て行くかはある程度考えておいて、明日朝、大急ぎで準備する。


 その日の夜は早めに寝た。



 翌日。


 子供たちと夫を送り出し、私は幼稚園に1時間延長保育の依頼の連絡を入れた。


 これで準備OK!

 私はバスターミナルへ向かう。


 うちからバスターミナルはラッキーな事に凄く近いところにある。

 乗車券を買い、せいさんがいる場所へ向かうバスに乗る。

 片道2時間のバスの旅。

 会えるはずはないけれど、何もしないよりせいさんを感じれるかなと思った。

 会えないと思いながら一日を過ごすより、会えなくてもその人の事を何の障害もなく想っていられる空間にいれる方が楽だった。


 実家から帰る時、こんな景色を見てるんだ。

 どんな気持ちで帰るのかな……。


 そんな2時間のバスの旅は早く、もう目的地に着いてしまった。

 ターミナルを降りると、私の住む街とは違って大都会。

 ビルも建物も人も車もいっぱい。

 あまり土地勘もないから近くを散策する事にした。

 それでも充分楽しめる。


 歩いていると、見晴らしのいい場所に着いた。

 目の前に大きな変わった形の建物があったので写真に撮った。


 これを見るとどこにいるのかわかるのかな……?


 そう思って、せいさんに送ってみた。

 度々DMをチェックするけれど、せいさんからの返事はない。


 時間が許す限り、いろんなお店を見てまわり、せいさんから来るかも知れない連絡を待ってみた。


 ……が、来なかった。


 もう帰る時間。

 バスに乗り込み一息つく。


 やっぱり会えなかった。

 わかっていた事だけど、でも何だか満足している自分。

 これで少しは帰っても頑張れそうかな……。


 バスは出発した。


 しばらくしてDMが来ている事に気付いた。



「さえ、もしかしてこっちいる?」



 今から30分くらい前に返信くれてたみたい。

 ちょうどバスが出発したくらいかな……。



「いたよ。 

 今バスに乗って帰ってる。

 今日、仕事だった?」



「今、休憩中。

 写真見たら、あれ?って思って。

 もう帰ってるの?

 来るなら言ってくれたらよかったのに。

 どうしたの?」



「会いたくてきたの。

 会えないつもりで来た。

 だからいいんだよ。

 少し充電できた。」



「俺だって会いたかったのに。

 こっちで何してたの?」



「一人でプラプラしてたよ。

 土地勘ないからターミナルの近くを歩いてた。

 お天気でよかったよ。」



「一緒にいてあげたかったな。

 さえーー、そんな事聞いたら俺が頑張れない。

 すぐそばにさえがいたんでしょ?

 あーー、会いたかったよーー。」



「また帰ってきて。

 早く会いたい。

 仕事頑張れーー!」



「気を付けてね。

 帰ったらまたDM送って。」



 帰って私は大急ぎで夜ごはんの準備をする。

 途中、下の子をバス停まで迎えに行き、上の子も同じタイミングで帰ってくる。


 全てがギリギリだったけど、私は達成感でいっぱいだった。

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