想い人
せいさんはほぼ毎日連絡をくれた。
仕事が忙しい日は何日も連絡が来ない事もあったが、せいさんの私への気持ちがわかっている事もあって前みたいに不安になる事はなかった。
心の余裕みたいなそんな感じなのかも知れない。
何となく今日あった事や思った事を送る、普通のやりとり。
急に寂しくなったら、寂しい、会いたい、と、自分の気持ちは正直に伝えれた。
せいさんと話している自分も、普段の生活の中で妻と母である自分も本当の自分。
どちらとも嘘偽りない私だった。
夫も子供たちも大切な人に変わりはない。
子供たちの成長は楽しみだし、二人の存在に救われる事はたくさんある。
二人なしには生きられない。
夫とも仲が悪い訳ではない。
むしろ、仲はいい方だ。
ただ、もう男性としては見ていなかった。
友達の様な、子育ての相棒、パートナーみたいな感じの方が強かった。
もちろん、手を繋ぐ事もない、当たり前の如くセックスレスだった。
私自身それを無理している訳ではなかったので、苦痛と思った事はなく、ない事の方がありがたかった。
夫から無理矢理という事ももちろんなければ、ない事をとがめられる事もなかった。
夫が本当はどう思っているのかはわからない。
けれど、たぶんお互い、父、母である時間の方が長くなってしまい、夫婦生活がないという事に特別無理をしている訳でもなく、なくても居心地のいい場所や相手になってしまったのかなと思う。
せいさんと出会って、せいさんという人に男の人を感じたり、ドキドキしたり、私の中で女であるという事を思い出す事ができた。
それより、今までの自分じゃない感覚、会いたいと言ったり、好きって言ってみたり、ギュってして欲しいと言ったり…自分の気持ちを相手にストレートに言うなんて今までなかったし、そんな言葉にしなきゃいけない程になった事がなかった。
せいさんは今までの自分じゃない自分を引き出してくれる。
私自身、今まで知り得なかった自分をもっと知ってみたいと思った。
せいさんを想うと早く甘えたいって思う。
力一杯抱きしめて欲しい……。
私の中の女の部分はまだ残っていたんだ。
それを引き出すのは夫ではなくせいさん。
私自身も女でありたいと思っていた。
せいさんの前だけで、せいさんの前でしか出せない私。
せいさんしか知らない私。
せいさんからはどう見えてるんだろう……。
あとどれくらいでせいさんに会えるのかな……。
日常で一人になる時間、考えるのはいつもせいさんの事だった……。
そんな私である事を誰も知らない……。




