甘い関係
「さえだけがそんな事を背負い込まなくていい。 俺も一緒だよ。 仕方ないんだよ。 好きになってしまったんだから。 でも今は考えるのはよそう。 二人の時間、大事にしたいんだ……」
「わかった……」
「さえ、笑ってよ……。 今は俺だけ見てて欲しい。 なかなかすぐに会いたくても会えないから、会った時はめいいっぱい自分の全てをさえに使いたい」
私にそんな事を言ってくれる。
「じゃあ、ギュってして……」
そう言うとせいさんは優しく抱きしめてくれた。
「これでいい?」
「せいさん、私、幸せ過ぎるよ……」
「それは俺も嬉しいなぁ……。 さえ、もう行こっか」
そう言って離れた。
「……もう一回、ギュってして……」
私はまだまだ抱きしめて欲しかった。
せいさんに抱きしめられた時の腕の力が男の人というのを感じられ、好きな人に守られてる感覚もあって嬉しさと幸せと落ち着く気持ちと……何とも言えなかった。
「さえ……そんな事言ってくれるの……? 凄いかわいい……。 俺をそんなに好きにさせてどうするの?」
そう言って笑った。
せいさんは優しく私の要求を叶えてくれた。
「やっぱりせいさんがいい……」
私はせいさんの前では普通に女でいれた。
妻という事も母という事も、人妻であるという事すら忘れていた。
私はこんなにもせいさんを求めるものなのか…私の中の無いと思っていた女である自分は私を時に大胆にさせるのか……。
今まで経験した事ない自分……。
せいさんにだけ見せる自分……。
「さえ、行こう……」
「どこ行くの?」
「言ったでしょ? 二人っきりになれる場所」
せいさんの言う意味は理解できた。
私にも何の迷いもなかった。
車を走らせて着いた場所。
「今日の俺の宿」
ホテルだった。
「え? 実家で泊まらないの?」
「今日は泊まらないよ。 今日はこっちの友達とオールで飲み会の【予定】」
そう言って笑った。
「さえ、行こう」
私の手を握って連れてった。
せいさんと二人だけの空間。
この状況に緊張しない訳がない。
たくさんのキスを。
力強く抱きしめられる。
男の人の力って凄い……。
「言っとくけど、もう、我慢できないよ。 俺、さえから離れられないよ……。 ごめん、今日は俺の好きにさせて……」
私はせいさんを受け入れた。
私も望んだ事だった。
私はせいさんに溶けていった。
せいさんは優しい。
強くたくましく男の人を感じれる人。
私は夢中になった。
もう二人の時間も終わりに近づきつつあった。
「もうそろそろ帰らなきゃ……」
「もう? 離れたくないな……」
「ほんとだねーー。 またいつもの日常に戻らなきゃ……。 あ、さっきのバックハグはズルいよーー。 ドキドキしたし幸せって思った」
「じゃあ、今、しよっか? どんなのがいい? 強引なやつ?」
「なにそれ!」
ふざけてたけどまたしてくれた。
「どう? ご希望のバックハグは?」
「もう最高です……」
「さえ、髪いい匂い。 何か付けてるの? シャンプー?」
「え? わかんない……。 シャンプーの匂いなのかなぁ?」
「ずっと匂ってたい……」
そう言って首筋にキスをした。
「ヤバい……こんなに何もかも合う人っているんだ……。 さえの全てが欲しくなる……」
それは私も同じ、そう思ってる。
また会えなくなる……。
時間が許す限り、お互いを求め合った。
優しく甘い時間だった。
せいさんに車を停めた駐車場まで送ってもらい名残惜しい気持ちでいっぱいだったがそこで別れた。
車から降りたくなかった。
仕方なく別れた。
仕方なくという言葉がしっくりくる。
またせいさんに会いたい。
だから、また自分をいつものモードに切り替えた。
妻であり、母である私に。
私は、夫と子供たちの待つ家へ帰った。




