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婚外恋愛  作者:
43/84

本当の私

 しばらくして、せいさんから連絡がきた。



「遅くなってごめん。 来週帰れそう。 金曜日に帰るけど会えそう?」



 会うよ。 会うに決まってる。

 私は妻でもなく母でもなかった。

 一人の女としてこの連絡を待っていた。



「うん。 でも夜なら大丈夫なんだけど……かまわない?」



「いいよ。 じゃあまたいろいろ決めよっか。 やっとさえに会えるんだ……。 待ち遠しいね」



 せいさんが帰ってくる。

 私の気持ちは全力で来週金曜日へ向かっていた。



 何着ようかなぁ……。

 ワンピースにしようかなぁ……。

 ピアス、大きめのやつにしようかな……。



 せいさんと過ごす時間の事を考えるのは楽しかった。

 少しでもせいさんにかわいいと綺麗だと思われたい。

 会えるだけで満足なはずなのに、欲張りになってる……。


 今私は母を主として生きている。

 女としての自分に帰る時間なんてなかった。

 忘れていたと言ってもおかしくない。

 おしゃれをしなくても、髪がボサボサでも、メイクをしていなくても、母としていれば【正解】だった。


 誰かに異性として見られたり、必要とされる事でこんなにも人は変わるんだ……。

 恋の威力は凄い。


 せいさんとの恋は今までの自分とは全く違う。

 いつも受け身の恋愛しかしてこなかった。

 しかも、数もそれ程ない恋愛偏差値の低い私。



 せいさんに会いたいと思うし、甘えたいって強く思う。


 甘えたいなんて……今まで思った事がなかった。

 年上だからなのかな……。

 会えない時間が長いからかな……。



 せいさんになら恥ずかしくて言えない事も言える。

 ストレートにまっすぐ。

 せいさんは私でも知らなかった本当の私を引き出した人なのかも知れない。


 せいさんはいろんな意味で特別なのかも知れない……。



 せいさんと会える日までは早かった。

 私の気持ちに比例する様に凄いスピードで当日を迎えた様な感じだった。


 昨日、せいさんから待ち合わせ場所と時間の連絡があった。



「20時に24時間営業のスーパーの駐車場で。 行く場所は俺に任せて」



 やっと会えるんだ……。

 もうドキドキする……。

 やっとせいさんと同じ場所で過ごせるんだ……。

 高鳴る気持ちを押さえられなかった。


 私は予定より言えを早く出た。

 もう、母でも妻でもないモードになっていた。


 元会社の同僚たちとの飲み会へ行ってくる。

 私が初めてついた嘘だった。

 もちろん、罪悪感はある。

 けれど、それ以上にせいさんと一緒に居たかった。



 私は20時の待ち合わせの時間より早めに着いて、スマホで音楽を聴きながら気持ちを押さえていた。


 車から降り、人気の少ない場所でせいさんが来るのを待つ。

 DMで待ってる場所を念の為送っておく。


 自分の鼓動が感じられる程、せいさんに会う前からドキドキしていた。

 せいさんに会ったらどうなるんだろう……。


 目の前に車が停まった。



「さえ」



 私が会いたかったせいさんだ。

 名前を呼んでくれて嬉しかった。

 この瞬間を待ってたんだ……。

 私は一気に笑顔になった。



 私はせいさんの車に乗った。

 せいさんは一旦車を停めた。



「さえ、久しぶり。 元気だった?」



 そう言って優しく頭を撫でてくれた。



「うん。 せいさんは? 仕事で大変だったんでしょ? 落ち着いたの?」



「落ち着いたかなーー。 今のところはね。 さえ、やっと会えたね。 じゃあ、発進するよ」



「手、繋ぎたい」



 私は自然とそんな事を言っていた。

 そんな事を言うなんてあり得ないな……。



「手、繋ぐの? 運転中は危ないからダメ!」



 そう言って繋いでくれなかった。



 そうだよね、危ないもんね……。

 助手席でせいさんを眺めていた。


 せいさんが私を見て手を出した。



「信号待ちの時だけね」


 

 そんなドキッとする事をさらっとするのが好き。

 繋いだ手から好きがいっぱい伝わる……。


「どこ行くの?」



「二人っきりになれる場所」



 せいさんと一緒ならどこでもいい。

 せいさんは車を発進させた。

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