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婚外恋愛  作者:
42/84

秘密

 人生とはそううまくいかないものだ。

 だからおもしろいという人もいる。


 今の私はそうは思えなかった。



「ごめん、さえ、年末帰れなくなった……」



 せいさんからそんな連絡が入った。

 大きな仕事があって年末に帰るのは無理になってしまったらしい。


 仕事だから仕方ない。


 もうすぐ会えるとその気持ちだけで毎日を過ごしていた私は、急に目標が目の前からなくなりどうしたらいいかわからなくなっていた。



「そっか……。 仕事だし仕方ないよね。 会いたかったな……」



「さえ、ちょっと会うのがズレただけだよ。 そう考えよう。 俺だって残念に思ってるよ。 さえに会いたいに決まってるんだよ。 また休み調整するから待ってて。 そんなに遅らせないから」



 私の落胆であってせいさんの落胆でもある。

 そうだよね、少し先になっただけだよね……。

 連絡、待ってよう……。



「うん」


 せいさんを待つ時間を楽しもう。

 そう気持ちを切り替えた。



 切り替えたと言いつつも、気持ちが上の空な時もある。

 それくらい落胆が激しかった。


 せいさんから連絡は来ない。

 待ち遠しいけど我慢……。

 そんなある日、スイミングで宮坂さんに久しぶりにあった。


「こむちゃん、久しぶりだねーー。 元気だった? 俺、大阪出張してたんだ。 こむちゃんの会社にも行ったよーー」


「そうだったんだねーー。 もう私がわかる人も少なくなったかなぁ……?」


「長谷川さんとは話したよ。 あと、西村さんも。 会えたのはそれくらいかなぁ……」



 長谷川さん……そっか……、宮坂さん、長谷川さんを知ってるよね……。


 長谷川さん……ごめん……。

 本当の事言えない。

 今、長谷川さんに会う事かあったらどんな顔して会えばいいかわからない……。


「こむちゃん……? どうしたの……?」


 私の一瞬を見抜いた宮坂さん……凄い……。

 やっぱり、付き合ってたからなのかな……。

 凄過ぎて一瞬申し訳ない気持ちがよぎった私をいつもの私に戻してくれた感じ。 ぷぷっと笑ってしまった。


「いや、何でもないよ」


「だったらいいけど……。 今日は髪、編んでるんだね。 こむちゃんが髪編んでるのって、あんまり見た事なかった。 いいね、似合うよ」



 そうか……あんまり結んだりしてなかったかもなぁ……。



「ありがとう」


 宮坂さんに救われたな、そう思った。


 今日で今年のスイミングは終わり。

 次は来年。

 しばらくお休み。



「今日でスイミングも終わりだねーー。 まさかここで宮坂さんと会うとは……今年はびっくりな年だったよ……! また来年だねーー」



 またね、を言って帰ってきた。



 子供たちの冬休みが始まり、クリスマス、そして年末……。


 賑やかな忙しい年末。

 そんな年末が好き。

 そして年始に入ると一気に寂しくなる。

 年が始まったばかりなのに……。



 リビングでは年末の番組を子供たちと夫が楽しそうに観ている。

 私はキッチンで明日のおせちやお雑煮の準備をしていた。

 何かを作っている方が気が紛れる。


 私のスマホが鳴った。

 LINEだ。

 誰だろう……と思ったら宮坂さんだった。


 よいお年を……のLINE。

 私も返信した。

 SNSにログインしてみたが、まだせいさんからはない。

 今日も忙しいんだなぁ……。

 頑張れーー。


 と、思っていたら、宮坂さんからまたLINEが入った。



「こむちゃん、今度さ、ランチに付き合ってくれない?」



「ランチ? どこの? 何? 一人じゃ行きにくいとこ? いいよーー」



 ランチかぁ……。

 せいさんとランチとか行けたりするのかな……。

 せいさんとの事を想像する事で寂しさを紛らわせていた。


 もうすぐ年が明ける。

 来年はたくさんせいさんに会えるといいな……。

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