止まらない想い
せいさんとの時間ももう残り少なくなってきた。
公園のベンチから車までゆっくり歩く。
「今度はいつ帰るの?」
離れたくないな……。
楽しい時間って何でこんなに早いんだろう……。
もう寂しくて繋いだ手に力が入る。
「わからないけど……年末かな……。 どうしたの?」
「もう寂しくなってきた……。」
「何それ! かわい過ぎでしょ……」
せいさんは笑っていた。
せいさんの前では素直でありたい。
思った事は隠さない。
甘えたいから。
「幸せだなぁ……。 さえにそう思ってもらえて……」
「私もう自分の気持ちに嘘はつかない。 会いたいと思ったら会いたいって言うし、話したいって思ったら話したいって言う」
「ねぇ、どれだけ私がせいさんを好きかわかる? ほんとに好きなの……。 いつもの自分じゃなくなるくらい。 気持ちを抑え切れなくなるくらい。 許される事じゃないけど、せいさんがいいの。 堪らなく好きなんだよ。 せいさんに伝わってる……?」
私はせいさんに私の思いの全てをわかって欲しかった。
溢れる気持ちを、どうしようもないくらいせいさんを想っている事を知ってて欲しかった。
私はこんなにもあなたを求めてる……。
「さえ、俺を好きになってくれてありがとう。 さえ、俺だって好きだよ。 さえが思ってるよりずっと前から……俺の片想いだったよ。 それがさ、さえは振り向いてくれたんだよ。 さえをたくさん傷付けたのにさえはそんな俺を選んでくれた……。 俺にとっては奇跡だよ。 さえの全てが好きなんだよ。 さえ、わかる?」
「さえの全部を俺のものにしたいよ、本当は。 ずっとそばに居て欲しい。 今日一緒に連れて帰りたい。 ……けど、全部無理なんだよ……、わかってる……。 さえの気持ちだけは俺だけのもの、だよね?」
「俺、さえの名前、いっぱい読んでるの、気付いてた? いっぱい名前呼んで、さえが俺の声を覚えててくれたらいいなって思って……。 さえ? もっと呼ぶ?」
気付かなかった……。 せいさん、そんな事まで考えてくれてたの……? 嬉し過ぎる……。
「じゃあ、もっと!」
私は笑って催促した。
「さえ、好きだよ……。 さえ……さえ……好きだよ……」
いっぱい好きって言ってくれる。
まっすぐ私を見つめて言ってくれる。
自分で催促したはずが、恥ずかし過ぎて目をそらした。
「さえ、目、そらさない。 俺を見て……。 さえ?」
「恥ずかしい……。 でも幸せだと感じてるよ。 いっぱい想ってくれてるんだって思うよ……」
幸せ過ぎて怖いくらい。
「俺、自分が野蛮なのわかる……。 さえにもっと触れたいって思ってる」
「じゃあ、抱きしめるくらいしてくれないの?」
私は自分にびっくりした。
そんな事自分から言った事ない……。
でも、私ももっと触れたかったんだろうな……。
自然とそんな言葉が出てしまった……。
「さえ……、そんなのしようと思ったらとっくの昔にやってるよ……。 俺、我慢してるんですけど……。 さえからのそういうの、堪らなくかわいいわ……」
せいさんは笑ってそう言った。
「今、我慢した方がもっとさえを求めるでしょ? もっと会いたくなるでしょ? 自分に負荷かけてるんだよ。 さえも一緒に我慢して。 ずっと俺の事を考えてて欲しい」
「でも、髪は触らせて」
そう言って、頭を撫でてくれた。
そういうところも好きだな……。
「手と髪だけじゃ満足しないよ」
私は無邪気にせいさんを困らせた。
もっと、もっと……って思う。
でも、今はせいさんの言う通りこのままでいい。
せいさんと私の想いは一緒なんだ。
それだけを信じて待ってよう。
「また帰ってくるから……。 さえ、またDMになるけど今度会うまで頑張れる?」
私は笑って頷いた。
「さえ、とりあえず笑って別れよう。 さえの笑った顔覚えて帰りたいから」
これ以上がまだあるのかと思う程、私はどんどんせいさんを好きになった。




