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婚外恋愛  作者:
35/84

繋がった想い

「私はね、せいさんからひたすら無視されてブロックされたあの時に、もうせいさんの事は忘れようと思って今日まで暮らしてきたの。 思い出さない様に予定いっぱい入れてさ、忙しくして自分に負荷をかけてせいさんを思い出す時間を作らない様にしてきたの。 ななみさんと会った時に久しぶりにせいさんの事を思い出したけど、思い出す事に平気になってた自分に気付いて、やっとここまで気持ちも戻れたんだ……って思った。 やっとだよ、やっとここまで戻ったんだよ。 なのに……」


 ほんとだよ……。

 なのにさ……。


「まさか、長谷川さんから連絡もらってせいさんに会う事になるとは思わなかったし、今、こうしてせいさんから好きって言われるとは思わなかった……。 今日もせいさんに会うのは最初で最後にしようと思って来たの。 だから戸惑うよ……。 けどね、初めて会ったあの日からせいさんの事は気にしてた。 思い出さないようにしてたけど、でも全然ダメで……。 結局、私もせいさんの事は忘れられてなかったんだね……。 認めちゃいけない事だとわかってるけど、でも……」


 私はせいさんを想う二文字を伝えた。



「やっぱり好きだった……。 せいさんが好きだよ。 どうしようもなく好きだよ。 ドキドキするの、せいさんの事を考えると……。 今はね、せいさんと私がおんなじ気持ちだった事が凄く嬉しいの……」



 私はせいさんに気持ちを伝えた。

 これから考えなきゃいけない事、たくさんあるな……、私は目の前のせいさんにドキドキしながらもどこか冷静だった。



「今、視線を絡ませるだけが精一杯なのがもどかしいよ……。 隣にいても触れられない……。 こんなに好きなのにさ……。 こむちゃん、大好きだよ。 傷付けてごめん……。 これからこむちゃんとの時間、大事にする。 一緒にこれからの事考えよう……」



 私とせいさんは、これからの事を少し話した。


 お互い、無理はしない。

 家族優先。

 誰にも、友達にも長谷川さんにも2人の事は言わない。

 人前では絶対イチャイチャしない。

 連絡方法は変わらずSNSのDMのみ。

 写真は撮らない。


 これを約束事にした。


「これ以外にも出てきたらその都度追加しよう……」


 せいさんはそう言った。


 私はもう帰らないといけない時間になっていた……。 まだ一緒にいたい……。



「もう、帰らなきゃ……。 せいさん、明日帰るの?」



「明日、帰るよ。 こむちゃん明日バイトでしょ? 俺、帰る時間は決めてないから、明日も会う?」



「うん……」



「じゃあ、バイト終わってこむちゃんがいい時間まで一緒にいよう……。 俺、バイト終わる時間に地下駐で待ってるよ」



 明日も会える事が嬉しかった。

 もうドキドキが止まらない……。



 一緒に乗った地下駐へのエレベーターの中、やっと2人っきり。



「こむちゃん、さっきの約束事の約束、してないよ」


 そう言って小指を差し出した。

 私はそっと小指を絡ませた。

 優しく見つめてくれるその視線に、私は今までにない幸せを感じていた。


 小指でせいさんを感じる。

 今できる精一杯でせいさんを感じる。


 遠足を楽しみに待つ子供の様に年甲斐もなく明日が楽しみで仕方なかった。

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