彼の決意
私はせいさんに話した。
「せいさん、私とやりとりをやめた後、ななみさんって人とやりとりしてたでしょ? ななみさん、私に会いに来たの。 せいさんがななみさんと私の名前を間違えた事があったんでしょ? ななみさんは私の名前を覚えてたらしくて、せいさんとのやりとりの中で私がななみさんと地元が同じだって事に気付いたみたいで、私を探してDM送ってくれたの。 もうずいぶん前の事になるけどね。 一度会って以来会ってないけど……」
そう言うと、せいさんはびっくりしていた。
「ななみさん、悲しかったって言ってたよ。 せいさんがどんな人だったのか知りたくて私を探したみたいだよ。 ななみさんにちゃんとせいさんの気持ちを伝えた? ちゃんとせいさんの本当を伝えてあげた方がいいかも知れないよ」
ななみさんが辛かったのは話を聞いてよくわかっていた。
私が会った時は前向きに考えていたから今は大丈夫かも知れないけど……せいさんの言葉で伝えてあげた方がいいのかなと思った。
せいさんは話し始めた。
「こむちゃんとやりとりをやめた後、ななみちゃんとやりとりしてた……。3ヶ月くらいかな? ななみちゃんは出会い目的だったから最初からグイグイ来られてて……。 最初はそれも嫌な気はしなかったんだけど、そのうち違うなって思い出して……。 ななみちゃんの時も俺、逃げたんだよな……。 ダメだよな……。 ななみちゃんにちゃんと謝る。 DM送ってみる。 俺、ななみちゃんとのやりとりの中でこむちゃんと比べてる自分に気付いたんだ……」
それって……。
どういう意味……?
私とななみさんを比べる?
元々出会い目的じゃない私と出会い目的だったななみさんとの違いの事かな……。
そりゃあ、違うよね……。
「ななみさんは、最初から彼を見つけたかったんでしょ? せいさんが既婚者だったのもわかってて、それを知っててもせいさんを好きになったんでしょ? ななみさんは出会いを求めてる事を隠してなかったでしょ? 真剣だったんだよ、きっと……。 せいさんもななみさんの事を好きだったんじゃないの?」
私にはわかる、ななみさんの気持ち。
既婚者とわかりながらもせいさんに惹かれたのは私も同じ……。
「恋愛に発展する程、気持ちが高まってた訳じゃないんだ……。 俺の中ではそんな感じだった。 けど、ななみちゃんは本気度が日に日に高まってる事に気付いた。 俺とは気持ちが違い過ぎると思い出して……、連絡を取るのをやめて、ブロックしてしまったんだ。 ちゃんと話すべきだったよね……」
せいさんはいろいろ思い出して考え込んでいる。
「せいさんはもう逃げたりしないの……?」
私が言う事ではないけれど、せいさんに聞いてみた。
せいさんはまっすぐ私を見てこう言った。
「逃げたりしないしもう嘘はつかない」
「え? せいさん、嘘ついてた事あるの!? 何嘘ついてたの? 私にも!? 警察官じゃないとか?」
私は自分が知っているせいさんは嘘偽りで作られたせいさんなのかな……と一気に不安になった。
「警察官は本当だよ。 嘘っていうのは、気持ちの事かな。 こむちゃんにもななみちゃんにもそうだったけど、自分の気持ちを的確には示してなかったんだよ。 こむちゃん、わかるでしょ? それも俺の逃げの一つだと思うけど、そんな自分の気持ちも相手に伝えなきゃなって思ったんだ」
それってどういう意味?って思ってた事を正したいって事なのかな。
「曖昧な表現をやめるって事? せいさんが言ってるのってどういう意味だろう?って思った事はあるよ。 DMだけで、顔も声も知らないし……、戸惑った事はあったかも知れないねーー」
「俺に会ってどう思ったの?」
「想像とはそんなに変わらないよ。 だってほら、プロフィール画像が似顔絵だったから。 声は全然想像できなかったから新鮮な感じかな……」
「そうなんだ。 俺はこの前、こむちゃんに声かけた時、かわいい子だなって思った。 こむちゃんがこの子でよかったって思った」
ドキンとした……。




