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婚外恋愛  作者:
32/84

最初で最後

 ある日、SNSにログインするとせいさんからDMが入っていた。



「来月、帰る予定にしてるんだ。

 会おう。

 都合、こむちゃんに合わせるよ。」


 送って2週間くらい経っていた。

 まだ待ってくれてるかな……?

 そう思いながら返信した。



「遅くなってごめん。

 わかったよ。

 私は平日の方がいいかな。

 バイト終わりにコーヒーショップで話す?」



「じゃあ、平日帰るね。

 コーヒー飲みながらゆっくり話そう。

 また日にち決まったら連絡するね。」



 私とせいさんは会う約束をした。

 せいさんは何をそんなに謝りたいのかな。

 私に謝る事なんてないのに……。

 その日話してさよならなんだなぁ。

 寂しく思うかも知れないけど、それが誰もが傷付かなくて済む。


 楽しく話して終わりにしよう。


 私はそう思っていた。


 それからせいさんからの連絡を待っていた。

 何だかすごいドキドキする……。


 約束の月に入り、せいさんから連絡がきた。


「来週の木曜日、金曜日で帰ろうと思うけど、都合大丈夫そう?」

 

 木曜日も金曜日もバイトだ。

 木曜日のバイト終わりにコーヒーショップで会う事にした。


 まだドキドキが止まらない……。

 来週、会うんだ……。

 どんな感じなんだろう?

 笑って話せるかな。

 何話そう?

 最後だから楽しくしたいかな……。



 当日。

 私は朝からいつもの目まぐるしく忙しい時間を過ごし、バイトへ向かった。


 行きの車の中、いつもならお気に入りの音楽を聴きながら行くのだが、今日は聴くのをやめた。


 音楽を聴くとその音楽の世界観に引きずり込まれそうで、せいさんに会う私はこれ以上の迷いが生まれる事が怖かったのかも知れない。


 今日はエンジンやウインカーの音の方が心地よかった。

 気持ちも落ち着けた気がした。


 バイトもいつも通り、いや、いつもより一生懸命したかも知れない。

 気持ちが先走りしてるのが自分でもわかる。

 そう言えば、いつもより早く着いてしまったし……。



 今日が最初で最後なのもわかっている。


 だから楽しもう!


 バイトも終わりコーヒーショップへと向かう。

 もう来てるのかな……。

 

 来てた……。


 せいさんと目が合う。

 ドキドキが一気に加速する。

 私はコーヒーをオーダーしてせいさんの横に座る。


「こんにちは。 待った?」


 私が初めてせいさんという人にちゃんと話しかけた言葉は緊張でそっけない気がした。


「こむちゃん、お疲れ様。 待ってないよ。 来てくれてありがとう」


「ちゃんと言ってなかったね。 初めまして、せいさん。 おかえり、だよね? 実家に一旦帰ってここ来たの?」


「帰ってないんだ。 高速降りてそのままこむちゃんに会いに来た」


 せいさんの言葉にドキドキする。


「せいさんと長谷川さんがお友達なんて……、びっくりだったよ……。 私に謝りたいって? 謝る事なんてないよ。 せいさん、何も悪くないよ」


「ハセとは中高一緒だったんだ。 俺もまさかハセの知り合いだとは思いもしなかった。 でも、こむちゃんにどうしても連絡したくてハセに無理言ってお願いしたんだ。 謝る事、いっぱいあるよ。 こむちゃん、DMくれたのに全部無視してブロックもしてさ……。 こむちゃん、傷付けた……」


「でもそれは私がたくさんDM送ったから嫌気がさしたんでしょ? あの時は私もそうする事で自分を保ってたみたいたところがあったから……。 それに私はせいさんに自分の意思を押し付けようとしてたんだよ。 それは絶対によくなかったんだよ。 後で凄い反省した……。 逆に私の方がごめんね、なんだよ」


「いや、俺、男らしくないよ。 逃げたんだ。 ごめん……」


「せいさん、それだけを伝えに? それならDMでよかったんだよ。 もうあのSNSは使ってないけど私、いつかは見たと思うよ」


「直接こむちゃんに謝りたかったのもあるけど……ずっと会いたかったんだ……」


 え? 会いたかった?

 何で……?


「あの時、仕事が急に忙しくなってこむちゃんの事を考える余裕がなくて……そのうち考える事もやめてしまった……。 ブロックしてなかった事にしたかったんだ……」



「私が追い詰めたから仕方ないよ。 私の方こそせいさんをわかってあげられなかったんだよ。 当然の結果だと思うよ。 私はせいさんの事を嫌ったり憎んだりそんな事は全くないから……。 せいさんも私が謝りたいと思ってた事を知ってくれた訳だし、だからもうこの話はお互いやめよっか……」


 せいさんも了解してくれた。


「やっぱり、こむちゃんに会いに来てよかった」


 せいさんはそう言っていた。


 私だって会えてよかったよ……。

 でも一つ、私はせいさんに言わなきゃいけない事があった。

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