まさか
え?
どういう事?
私をブロックした人だよね?
全く返信してくれなかった人だよね?
私を嫌いでしょ?
何で?
「え……。 何で……。」
私は初めましての相手に初めましてと言えなかった。
そんな事初めてだ。
「長谷川から連絡きたでしょ? あれ、ごめん、俺なんだ……。」
本当に意味がわからない……。
謝りたい人ってせいさんだったの?
私に? 何を? 今頃? どうして?
私は今の状況を理解できずにいた。
「こむちゃん、今、話せる?」
もう下の子のお迎えの時間……。
「もう、お迎え行かなくちゃ……。」
「じゃあ、明日ここで待ってるから。 時間作って欲しい。」
時間を作ってって……。 何を話す事があるんだろう……。
明日はバイトも休み。
ここに来る事はない。
「明日はバイトじゃないから……。 急いでるから……ごめんね。」
そう言って私はバックヤードに逃げ込んだ。
心臓がバクバクいってる。
こんな事ある?
せいさんってあんな感じの人だったんだ……。
SNSのプロフィールに使っていた似顔絵を思い出す。
確かにあんな感じだったなぁ……。
でも何で、私がわかったんだろう……?
顔、ちゃんと知らないはずだよね?
全てがよくわからない。
せいさんと長谷川さんは知り合い?
こんな偶然ってある!?
その日、どうやって帰ったかも覚えていない。
頭の中はせいさんの事でいっぱいだった。
どうしたらいい?
話、するの?
話してどうするの?
私の心臓はバクバクいったまま。
会いたいと思っていた相手に会えたのに、複雑だった。
もうちゃんと忘れていた。
時間がそうさせてくれたのに、一気にあの時へ引き戻されるのか……。
もう随分手付かずのSNS。
せいさんからメッセージが届いてたりするのかな……。
ログインしてみようかと思ったが、少し冷静になった方がいいと思いログインしなかった。
翌日のお休み中もずっとせいさんの事を考えている自分がいた。
考えてもわからないのに考えてしまう。
考えなくていいのに考えてしまう。
今日もこっちにいるのかな……。
せいさんは今日も待ってるって言ったけど、バイトじゃないからって言ったから向こうに帰っちゃったかな……。
何度もSNSのアプリを眺めてはやめてを繰り返す。
長谷川さんに連絡しなきゃ……、いや、でもまだ心の整理ができてない。
何から話していいかもわからない。
とにかく私は目の前で起こった事を整理するのにずっと必死だった。
私は気付けば車に乗ってバイト先へ向かっていた。
いるはずないのに行かずにはいられなかった。
いない事を確かめて納得するのかな。
自分でもわからない。
店舗は2階。
私は1階から店舗前の通路が見えるところを見た。
手すりに寄りかかる男の人……。
うそ……。
せいさんだ……。
私は立ち止まりその姿を見て涙が止まらなくなった。
泣くなんて思わなかった。
今日はバイトお休みだからって言ったからいるはずなんてないと思っていた。
なのに、私は来てしまった。
私も何で来ちゃったんだろう……。
せいさんも待ってるなんてずるい……。
私の今までの時間は何だったの……。
あの時の感情が蘇る。
あんなにまで会いたかった、でも諦めたせいさんがそこにいる。
しかも私を待っている……。
私はせいさんに会わずにその場を離れた。




