《びっくりとはこの事》
騒がしい飲み屋街。
そこにある居酒屋に急ぐ。
今日は、その居酒屋で定期的にある高校の同級生が集まる飲み会がある。
俺は、仕事で遅れていて他のメンバーは先に始めている。
去年の秋以来かな。
地元の話で盛り上がったり懐かしさを感じる時間だ。
「お! 来た来た! 久しぶり!」
「お疲れ! やっぱり、仕事忙しそうだね」
最後に合流した俺は、空いた席に座る。
「今日も事件?」
「いや、今日はそんなのはなかったけど、残務処理に手こずってた……」
「警察の仕事も大変だよな」
地元を離れた男4人、たまたま電車で2時間圏内に住んでいて、こうしてたまに集まって楽しく飲む。
俺はここ数ヶ月仕事が忙しい上にいろいろ考える事があって今日の飲み会ではリフレッシュしようと楽しみにしていた。
明日は休みだしちょうどいい。
高校が一緒な斉藤と真吾、中高が一緒な長谷川、そして俺の4人で定期的に集まっている。
俺以外の3人はこっちでサラリーマンをしている。
俺は警察勤務。
懐かしい地元の話や、家族の話、自分の事、日頃話さない事を話す数少ない時間かも知れない。
各々の仕事の話やプライベートの事、いろんな話をして、お開き手前のゆっくりした時間。
「ハセ、地元離れてどれくらい経つの?」
「えーー? 15年目かなー、ー? たぶんそれくらい。 途中3年、京都だったから」
「この前さ、地元帰ったんだよ。 営業所あったとこ、なくなってた! あれ見ると寂しかったよ……」
ハセは地元で就職したが、就職先の営業所が閉鎖する事が決まり、同じ会社の大阪営業所へ異動になると同時に引っ越した。
「何か営業所なくなる時、大変だったなぁとか思い出した。 引っ越し作業とかも営業やりながらだったし、営業から帰ったら梱包作業とかしなきゃいけないし徹夜でやったりしたな……。 事務の女の子もいろんな手続きもあったりしてみんなバタバタしてたなぁ。 大阪行けばまたその荷物片付けないといけないし……。 何かどこに入ってるってこっちの人間しかわからないし、事務の子もいてくれてよかったよ」
と、ハセの話を聞いた斎藤が、
「珍しいね! 事務の子も大阪行ったの?」
と、聞き返した。
「そうそう。 一緒に転勤したんだよ。 2年間って決めて転勤したっぽいよ。 地元帰って再就職したのは聞いたけど……こむちゃん、懐かしいなー。 何やってるんだろう?」
俺はそう呼ばれた事務の子にひっかかった。
「ハセ、その子って歳いくつ?」
「えー? 確か5つくらい下だったと思うけど」
「ハセの会社って外資系だったよね?」
「そうそう。 それがどうしたの?」
まさかな……。
いや…まさかだよ……。
こむちゃんってあだ名で地元が一緒で5歳下……。
こむちゃん、大阪で仕事してたって言ってたよな……。
たぶん、合ってる……。
ハセ、こむちゃんと知り合いだったんだ……。
ハセに話すしかない。
俺はそう思った。
お開きをして店の前で次回を約束して解散した。
俺は解散してすぐ、ハセに声をかけた。
「ちょっと聞きたい事がある。 少しだけ時間いい?」
「あ、いいよ。 どこか入る?」
俺はハセと次の店へ歩き出した。
俺が知らないこむちゃんをハセは知っている。
勝手だけどこむちゃんを知りたかった。
知る術がこんなに近くにあるとは思わなかった。
俺はハセに何から話したらいいのかを考えていた……。




