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婚外恋愛  作者:
25/84

動揺

 ななみさんにはもう少し時間が必要なのかも知れない。

 けど、そう遠くない未来だと思った。


 私とせいさんの話を少ししたり、共感できたり、ななみさんも笑って話をして聞いてくれる様になって私は嬉しかった。


 ななみさんともう会う事はないかも知れない。


 せいさんの事を思い出すきっかけになったのはななみさんだったけど、せいさんの事を悲しまず思い出せる様になっている事も気付く事ができて、ななみさんに会えて私もよかったなと思った。


 今日だけ。

 今日だけはせいさんの事を思い出そう。

 明日からはいつもの自分に戻る。


 最後にはたくさん笑ってななみさんと別れた。


 青い青空に向かって大きく息を吸って深呼吸。


 私は、家路へと急いだ。




 季節はもう初夏になっていた。

 ジメジメした梅雨を超えて暑い夏がそこまでやってきている。

 

 ある日、大阪営業所時代にお世話になった前の会社の先輩からLINEが入った。


「こむちゃん、久しぶり! 

 元気? こむちゃんの送別会以来かな!?  

 急にごめん!

 営業の長谷川さん、覚えてる? 

 長谷川さんがこむちゃんに連絡取りたいんだって。 

 LINE教えてもいいかな?」


 長谷川さんかー。 懐かしいなぁー。

 何だろう?


 私は先輩に、教えてもらって構わない事を伝えた。

 

 先輩とのLINEのやりとりの中で、長谷川さんのLINEも教えてもらった。

 また長谷川さんからLINE来ると思うから登録してあげてー、とお願いされた。


 2、3日後、長谷川さんからLINE電話がかかってきた。


「こむちゃん、久しぶり! 急にごめんね!」


 長谷川さんさんは私と一緒に大阪へ転勤した元営業所の営業さんで、長谷川さんは大阪転勤を機にご一家で大阪へ引っ越した。

 当時は営業さんだったけど、今は営業職からは退き、製品管理の部長さんらしい。


「長谷川さん、部長さんなんですか! 凄いー! まだ大阪ですか?」


「一度、京都に行ったんだけど、3年前に大阪に戻ったんだよ」


 当時の大阪のメンバーも退職してる人もいれば、転勤した人もいて、今、在籍してる人で私が知ってる人も少なくなったみたい。


 なんだか、時間の流れを感じる。


「こむちゃん、今、何してるの? 仕事は?」


「仕事はまだしてないんですよー。 今はバイトです。 前の営業所近くにあったショッピングモール、覚えてます? あそこで週3くらい雑貨屋さんでバイトしてます。 大阪の皆さんはお元気ですか?」


 久しぶりに以前の会社の人と話してあの時の事を思い出す。

 楽しかった事しか覚えてないな。


 長谷川さんと懐かしい話をしたりびっくりする話を聞いたり楽しく電話していた。


「懐かし過ぎて本題、忘れそうだったよ。 あのさ、こむちゃんに会いたいって人がいるんだけど……」


 私に会いたい?


「え? 私にですか!? 誰ですか?」


「それがさ、それは言わないで欲しいって……。 言ったらこむちゃんが構えちゃうといけないからって……」


「もう構えてますけど……」


「なんかさ、直接謝りたいんだって」


「え? 謝りたい? 私、誰からも謝られる様な事されてませんよ。 私が謝る事はあってもそれはないですよー。 えー? 誰だろう……? 落合?」


「逆に誰それ?」


 長谷川さんは大笑いしていた。


 落合は大学時代のバイト仲間で、ちょっとした事で言い合いになった事があった。 その後も仲は良かったけれど、大学卒業と同時に落合は地元に帰ってしまったのて今は音信不通になっていた。


 あの事を今、謝る!?

 いや、謝る程の言い合いじゃない……。

 落合かな…?と思ったけどやっぱり違った……。


 それに、落合と長谷川さんとの接点もないしなぁ。


「いつかこむちゃんに会いに行くと思うから、まぁ、聞いてあげてよ。」


「え? 何、その時限爆弾的な……。 いつ来るかもわからないって事ですよね? どこに現れるかもわからないんですか? 長谷川さん、一緒じゃないんですか?」


「だって、俺、大阪だよ」


「えーー……。 まぁ…そうですよねー……。 あ、でも、その人に伝えてください。 謝る事なんてないですよ、だからもういいですよ、って」


「わかった。 こむちゃんがそう言ってたって言っておくね。」


「で、誰なんです?」


「言えない!」


 長谷川さんは笑って謝った。


「気になるー! これ、何かの罰ゲーム!?」


 お互い、笑うしかなかった。

 もし、その人が現れたら連絡してと言われた。

 その時にまた話さなきゃいけない事もあるだろうから……と。

 長谷川さんは信用できる人だったから、こんな意味のわからない話をされても何か理由があるんだろうなと思えた。

 

 でも……いくら考えても誰も思い当たらない……。


 長谷川さんからその話を聞いて1週間くらいは気にしていたのだが、そのうち私も忘れてしまい、普段の自分の生活に戻っていた。


 ある日、バイトが終わり、店舗からバックヤードに戻ろうと店内を歩いていると、後ろから呼ばれた。


「こむちゃん?」


 私は振り向いた。

 そこにはたぶん知らない人が立っていた。


 誰だろう?

 今、私の名前呼んだよね?

 え? わかんない……。 どこで会った人なんだろう?


「えっと……」


 私が戸惑っていると、その人は言った。


「こむちゃんだよね? 俺、せいだけど……覚えてるかな…」


 !!!!!!


 え!?

 せいさん!?

 何がどうしたのか、一瞬言葉が出ない……。


「え!? せいさん……って……、あの私が知ってるせいさん!?」


「そうだよ。 急にごめん。 初めまして、だよね……」


 そう言って私の目の前に現れたのはあのせいさんだった……。

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